第21話
「悪いが俺たちは帰らせてもらう。これから学園に行かなくてはならないのでな」
東條の言葉を遮って俺は会長を連れて強引にセーブポイントへ向かうが。
その間も突き刺すような視線をずっと飛ばしていた。
ロシア人だったのならこの視線も納得できる。
今のロシア人には日本人にいい感情を抱いていない者はかなり多いだろう。
そのことを会長に注意してから俺は街に帰還した。
◇
学園の授業はタイムリーというか、なんというか歴史の授業が始まっていた。
「数年前に起きたロシアの日本侵攻事件の概要だが、病み上がりの霧島、お前が説明してみろ」
俺はそう言われて概要について軽く説明してみる。
当時ロシアはいいダンジョンが出現しなかった。
そして当然ダンジョンから入手できるもののレアリティなども低く世界の技術が進んでいく中取り残されていた。
そしてそのなかで日本には大迷宮と呼ばれているものがあった。
そこでロシアは日本への侵攻を決定した、のだがその結果ロシアは返り討ちにあい、オホーツク海が血に染った。
「そうだな。ここまでが公式に分かっていること、だな」
俺にもういいと説明をやめさせる教師。
俺の説明になぜか拍手が上がるが、ここまでは常識だろう。
「公式ではなぜロシア軍が壊滅したのかは分かっていないが、黒の殲滅者と呼ばれる存在がロシア軍を殲滅した、と言われている」
そう言って教師は一枚の写真を見せてきた。
そこに映るのは黒い姿をした男と大量のロシアの戦艦。
「これが最後に撮られた写真だ。この黒い人物が4000万人で構築されたロシア軍を殲滅した、というのが非公式の話だ」
こんな謎の男がロシア軍を滅ぼしたのが、まずかったらしく公式では認められていなかったが、みんな知っている話だった。
そして最後に教師が締めくくる。
「この後生き残った兵士がこう言ったそうだ。『破壊神が舞い降りた』」
これが俺がデストロイヤーと呼ばれるようになった理由だった。
俺の介入でロシアの日本侵攻は未成功に終わったどころかロシアはこの侵攻に全てをかけていたため、もてる戦力を全て失い事実上ロシアという国は壊滅した。
そして残されたロシア人は世界各国に移民した、のだが実情はただの奴隷状態だった。
日本への侵攻を開始した。それが大義名分となり現状の奴隷状態を許している。
授業も終わり昼食の時間になったので立ち上がろうとしたらサーヤが近寄ってきていた。
「ぜ、全部話してもらいますからね」
「俺のなにが聞きたいわけ?」
そう答え食堂の方に向かうために教室を出たら
「待ってたから」
そう声をかけられ、声の聞こえた方を見ると会長が立っていた。
「お昼に行くのよね?」
「そうですが?」
もうついてこないでくれと言いたいけど、会長まで加わってしまう。
ため息を吐きながら食堂の席に座った。
この学園の食堂の席の数はかなり多い。
だから3人で座ることができたが。
「お兄様?」
食事をしていたら陽菜まで近くによってきていた。
特に連絡も約束もしていないのになんで俺の居場所が分かるんだろうか。
「お席が、空いてませんね?」
俺達の正面の席は空いている。
そのことを指摘するサーヤだが、俺の隣が空いていない、ということを言いたかったのだと思うが、そう言ってしまえば暗に退け、と言ってしまうようなものだ。
そこまで考えたのだろう。
「いえ、空いていますね」
そう言いながら陽菜は俺の対面に座った。
三人からのマシンガントークが始まった。
聖徳太子は数人の言葉を正確に聞き分けて数人と会話した、という逸話があるらしいが。
俺は三人のマシンガントークすら厳しいようだった。
◇
放課後。
今度は真白と大迷宮へとやってきた。
以前のセーブポイントから攻略を続行する。
ボス部屋の前に向かおうとすると、ボス部屋の中から声が聞こえてきた。
「退くな!ここを乗り越えられなければこの先に進めないんだぞ?!」
東條の仲間を奮い立たせる声と、その仲間がひたすらに逃げ惑うような声が中から聞こえてくる。
「どうするの?」
「俺が待つと思う?」
そう言いながら俺は扉を押し開けた。
他のパーティが攻略中ならあまり褒められた行為ではないが俺側に東條が攻略を終えるのを待つ必要性もない。
扉を開ける。
初めてここのボスを見たが。
ハチのような見た目をしておりその体長は5メートルほどなようだ。
「ステータスオープン」
─────────────────────
名前:ベルゼブブ
レベル:86
─────────────────────
なるほど。
超難関の名にふさわしいレベル、ということか。
【ベルゼブブが召喚を使いました】
ログが出た瞬間なにもない空間から1メートルくらいのハチが出現した。
視界を覆うほどの数、100は超えているだろう。
その全てが冒険者たちに向かっていく。
攻撃されて冒険者たちは猛毒状態になっていく。
「す、すみません。東條さん」
東條に謝りながらパーティメンバーたちがバタバタと倒れていく。
「くそ、数が多すぎる」
そう言いながら東條が魔法を使ったりしてみているが。
前のスケルトンと同じように呼び出す速度に殲滅速度が追いついていない。
更に一匹のハチが東條に向かっていく。
「こ、こんなところで終われないのに」
そう言っている東條の前に障壁を作り出した。
【ファランクス】
ハチが障壁に攻撃した瞬間そのハチは木っ端微塵に弾け飛んだ。
防御魔法であり、カウンター魔法でもある。
俺の魔法を見て振り返ってくる東條。
その顔には複雑な表情が浮かんでいた。
「霧島……」
「俺がやるよ」
そう言って適当な範囲魔法を使う。
現実のハチは冷凍などが効果あるようだが、ここではどうなんだろうな?
【ダイヤモンドダスト】
急激にフロア内の温度が下がっていく。
さて、どうなるか。
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