第18話 歓迎されたりされなかったり

ギルドに入ると早速ギルドマスターが出迎えてくれた。


「ようこそ、ギルドへ。歓迎するよ霧島くん」


そう言いながら俺と真白を案内してくれるギルドマスター、その道中名乗ってきた。


「私はここのギルドマスターの三矢という者だ」


俺も改めて名乗っておく。


「霧島 瀬奈。よろしく」

「早速だけど適性検査に入ろうと思う」


案内されたのはギルドの地下室、そこは小さな闘技場のようになっていて。


そして三矢が俺の対面に立った。


「私との模擬戦でどの程度ついてこられるかで戦闘能力を測りそれを基に冒険者ランクをつける事にするよ。さぁ、全力で来ていい」


そう言われたので早速始めることにした。


「状態異常魔法レベル7」


【スリープ】


魔法は簡単に弾かれた。


ダンジョンから出てきた鉱石には魔力を吸収したり弾いたりする効果があり、それを使った装備の場合同じような効果を発することがある。


おそらくその類だろう。


「学生、と聞いていたが既にレベル7まで使えるなんてね。恐ろしい子だ」


そう言いながら剣を握ってジリジリと近寄ってくる三矢に続ける。


「時魔法レベル8」


【ストップ】


「……!!!!」


三矢の体の動きが止まった。


顔だけは動かせるようにしてあるから喋れたりはするけど。


「か、体が動かない……?!」


そんな三矢に近付いて聞く。


「その鎧は見る感じ時魔法までは弾けないよね」


三矢の肩に触れて装備の質感からなんの装備からできているかを当てる。


「ミスリルが混ざってるか。状態異常魔法には強いが時魔法には弱いんだったな」

「な、なぜ、そ、そんなことを」

「さぁ?なんでだろうね」


そう呟いて聞く。


「勝敗条件聞いてなかったけど、まだ続ける?」

「わ、私は……こんなに簡単に負けては……いけないんだ」


時魔法で固められた中動こうとしているようだが動けるわけもない。


そして数分


「ま、まいりました……」


その言葉を聞いて俺は時魔法を解除した。


「な、なんていう屈辱だ……」


そう言いながら立ち上がってきた三矢に聞く。


「Sランクのカード出してもらえる?」

「これだけの実力があるなら当然出すさ。黒の殲滅者」


ん?


なんでバレてる?

魔法に関しては極力注意して学生でも使える程度の魔法にしたはずなんだが。


俺が何も答えないでいると三矢が右手を差し出してきた。


「歓迎するよ霧島くん。殲滅者がやっと冒険者登録してくれるようで嬉しいよ」


そう言って三矢は先に地下室の階段を上がって行こうとしたので一応否定しておく。


「別人だよ?俺はただの霧島。殲滅者でもなんでもないんだが」

「もしかして今ので隠してるつもりだったの?」


キョトンとした顔で振り返ってそう聞いてくる。


「隠してるもなにも俺は別人なんだが」


そう言うと三矢はスキルを俺に見せてきて更に話す。


【魔法耐性レベル10】


「私のこの魔法耐性を無視して魔法を当てられる冒険者なんて殲滅者くらいだよ。バレバレだから。それにあれだけの魔法を使って隠し通せると思ってた方が不思議だよ」


と言ってくる三矢。


はぁ……。

最後の最後に詰めの甘さ、というかなんというか。


魔法耐性持ちだということを可能性として考えておくべきだったな。


そう思いながらギルドのロビーに戻ると俺にギルドカードを渡してきた三矢。


「とにかく、歓迎するよ霧島くん」


そう言う三矢に一応聞いておく。


「誰かに言うつもりはあるのか?」

「ないに決まってる。そこまで薄情ではないつもりだぞ?それに証拠がないんだ。私1人騒いだところでどうにもならない」


どうやら隠してくれるらしい。


その事に感謝しておく。


「気にしないでよ。じゃあなにかあったら呼んでくたらいいから」


そう言って三矢はギルドの奥に消えていった。

そこで俺に聞いてくる真白。


「パーティとかはどうするの?大迷宮に挑むつもりなら。パーティを組むことは必須って言われてるけど」

「パーティか」


ほとんどソロで動いてきた俺には馴染みのないものだが。


「大迷宮の難易度は高いんだ。流石にダンジョン食いほどではないけど」

「それならいけそうだな」


ダンジョン食いを駆け抜けた俺ならば問題ないだろう。

そう思いとりあえず大迷宮についての話を聞くことにしたのだが


「じゃあとりあえず入口行ってみよっか」


そう言われ俺は真白と共に大迷宮の入口に向かうことになった。


辿り着いた入口は厳重に管理された場所にあった。


俺が強引に突破することすら躊躇するような監視体制。


何重にもSランク冒険者であることの確認を取られた。


「ここが大迷宮への入口」


そう言って教えてくれる真白。


目の前にはとても重そうな扉があった。


「これが……そうなのか」


そう呟くと


「見ない顔だね」


そうして声をかけられた。

振り返るとそこに立っていたのは金色の髪の毛を肩で切り揃えた男っぽいやつ。


それに碧眼。

純粋な日本人ではなさそうだな。


「白い髪の方は知ってるけどね。二階堂 真白か」


真白を見る謎の人物。


「私はSランク冒険者の東條」


そう言って手を差し出してくる。


「霧島だ」


その手を握ると、ギリギリと力を込められていたが。


とても友好的な関係を結びたいようには思えない反応だな。


「もちろん。よろしく、なんて言うつもりないからね。これからはこのダンジョンを巡って競い合う仲になるんだからさ」


分かりきっていたことだな。

所属パーティが違うならばもう仲間ではなく敵同士になる。


だからこれだけギスギスするのは普通のこと。


「ところで、どいてくれないかな?」


東條は鼻で笑いながら俺にそう言ってきた。


「なんの話?」

「こちらはそろそろこのダンジョンの攻略を始めるから、さ」


そう言って瞳を閉じると次の瞬間冷たい目を向けてきた。


「雑魚に用はないんだよね。新人。大迷宮の最前線を走っているのは我々だからさ」


横を通ればいいだけなのに、そう言ってわざわざ俺を突き飛ばすようにして進んでくる東條。


「まさかSランクになれたから喜んで来たの?同じSランクにも格があるんだよ。分かったなら誰がここで1番偉いのか、エースなのか。ちゃんと理解しておくことだね」


そう言って東條はそれ以上何も言うことなくダンジョンの中へと入っていった。


「ムカつくよねあれ」


黙っていた真白が口を開いた。


「そうだな。ダンジョン内ならも起こせるけどな」


「それ絶対事故じゃないやつだね」

「事故だよ」


そんな軽口を叩きながらダンジョンの入口も確認した俺は今日は帰ることにした。


その後に少し調べてみたが、ギルドには貢献度によって決まる冒険者ランキングというものがあるらしく、あの東條というやつは一位らしい。


だからあれだけ傲慢な態度なのだそうだ。


そんな調べ物をしていると家の扉をノックされた。


返事をして扉を開けるとそこに立っていたのは


「やっ。霧島くん。話がある」


二階堂が立っていた。


珍しく真面目な顔をしていた。


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