第11話 暴徒を鎮圧する

壇上に上がった俺たちを厳しい視線が待っていた。


「どういうことだよ?!5組?!しかも一年?!」

「俺たち4組の方がマシだよ!」


怒声が飛び交う。

多くはなぜ俺たち5組が選ばれて自分たちが選ばれないのかというものだ。


「大変だね君たち」


真白が苦笑いしながら俺に声をかけてきた。


「こうなるのもなんとなく分かってたから嫌だったんだよ」

「その言い方、やっぱりわざと負けたのね前のは」


口が滑っていた。

暗に俺がわざと負けたことの裏打ちになってしまったな。


「聞かなかったことにしてくれ」

「そういう約束だからいいよ。ここまで来て今更感もあるけどさ」

「それもそうだ」


2人で言葉を交わす。

そんな中校長は続ける。


「えー、とにかく今紹介した生徒たちは当学園の生徒として節度ある行動をして冒険者の方々にご迷惑をかけず、学べるものを学んできてください」


そんな事を口にする校長。

その後も話は続いた。


「えー。それではこれにて開会式は終了します」


そんな事を話して校長は逃げるように舞台裏へ消えていった。

だが生徒たちの興奮は覚めなかった。


「有り得ねぇだろうがよぉ?!1年のエクストラが代表?!真白さんに選ばれるだァ?」

「おいお前ら俺たちの実力見せてやろうぜ?!あのエクストラ共によ!」


その興奮は信じられない方向へと傾いていく。

やがて1部の生徒達が舞台へジリジリとにじり寄ってきていた。


まずいな。

横の真白を見た。


ニヤニヤしている、この状況を楽しんでいるようだった。


「さて君はどうやって切り抜けるつもり?」

「あんたなぁ……」

「ここいらで力見せて納得させてもいいんじゃない?」


そんなことを言っている真白。


だがこのまま騒動に発展すれば陽菜が危険に晒される。


「はぁ……」


ため息ひとつ。

他の代表にも協力を願えないだろう。

あいつらもしょせんは他人事だ。

俺が自分でやるしかないか。


「ひ、ひいぃぃぃぃぃ!!!!どどど、どうするんですかぁぁ?!!これ!!!」


怖気付くサーヤ。

その時


「痛い目見ろやァァァァァ!!!!」

「遠征に行くのは俺だァァァァァ!!!!」


この結果に納得できなかった1部生徒による私刑が始まる。

武器を持って俺たちに向かってきた。


「防御魔法レベル5」


俺は1歩前に出て会場に向かって手をかざす。

陽菜に危険が及ぶのは絶対に避けなければならない。


拒絶の壁リジェクトウォール


舞台と暴徒達の間に防御魔法を貼った。


「あぁぁぁあぁぁ!!!!!!」

「おらぁぁあぁあぁあ!!!!!」


武器で殴りかかってくる暴徒達。

しかし、カーン!!!!!


俺の防御魔法によって弾かれる。


「なっ!防御魔法?!」

「気にするな!エクストラの魔法だ!叩けば壊れる!その場しのぎでしかない!」

「うぉぉぉぉぉ!!!!」


その間も殴り続ける暴徒達だが俺の防御魔法はビクともしない。

それを見て森山が舌打ちしているのが視界の端で見えた。


「な、なぜだ」

「割れねぇぞ?!この防御魔法」

「気にするな!押せぇぇぇぇ!!!!俺たちがエクストラ如きに負けるわけがない!!!!!」


叩けば割れる、か。

舐められたものだな。


その時


「うぉぉぉぉぉ!!!!」


背後で声。

振り返るとどうやら代表者が俺に向かってきていた。


「ガラ空きだぞ!気に食わねぇよエクストラ。ここでぶっつ……」


ゴッ!

俺は防御魔法を維持しつつ背後から迫ってきていた男の側頭部に後ろ回し蹴りを叩き込む。


「ぶっ……かはっ!」


声を上げながら吹き飛ぶ男。

男は壁にぶち当たってズルズルとその場に落ちる。


それを見て


「や、やべぇ、なんだこのエクストラ……強すぎだろ」

「お、おい……なんでこんな奴がエクストラにいるんだよ……」


暴徒達が沈静化していく。

自分たちの仲間がやられるのを見て興奮が醒めたらしい。

念の為そのまま防御魔法を維持しつつ俺は告げる。


「これ以上手間をかけさせないでくれ。最後の警告だ。まだ何かするつもりなら……叩き潰す」

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!!!」

「ゆ、許してくれぇぇぇぇぇ!!!!」


暴徒達は我先にと体育館を出ようとしていた。

それを見て魔法を解除。


真白に目をやった。

満足そうな顔だ。


「さ、これで決まったわけ、だけど」


真白はそう言って舞台裏へと去っていく。

俺もそれに続いた。



その日の放課後俺は真白に呼び出された。


「私は君のこと正式にパーティメンバーに迎え入れたい、ってそう思ってるよ」


俺の顔を見てそう言ってくる。


「冒険者登録、まだしてないなら今度一緒にしにいこうね。私からもギルドに口添えするから高ランクのカードくれると思う」


そう言って手を振りながら学園を去っていく真白。


「正式に、か」


そのとき、社長から着信。


「今夜、本社にこい。話がある」


あっちから呼び出しなんて珍しいな。


やっかいなことにならないといいが。


既に不穏なものを感じる俺だった。



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