第6話 俺だけのユニークスキル
コンコンコン。
まだ太陽も見えない早朝の時間。
俺の部屋をノックする音が聞こえた。
「お兄様?起きてらっしゃいますか?」
広瀬社長が帰ったあとの午前4時。
俺の部屋を陽菜が訪れてきたようだ。
「毎朝早いな」
「むぅ、今日ばかりはお兄様より早く起床できた、と自負していましたのに」
陽菜は軽くスネるような顔をしていた。
「悪いね。今日は寝ていないんだ」
冒険者は朝も夜も関係なく過ごすことが多い職業だ。
そのため冒険者道具に眠気覚ましと疲労回復を同時に行うという道具がある。
「不眠は体に悪い、ですよ?」
「ははは。そりゃそうだね。ところで、こんな朝早くになんの用かな?」
「はい。学園側から入学試験についての結果が届いておりましたので」
陽菜宛の封筒に同封されて届いていたらしい。
「お兄様はどうして本科に選ばれなかったのでしょうか?私などよりお兄様の方が何万倍も優秀だと言うのに」
そう聞いてくる陽菜に答える。
「俺はイレギュラーだからさ。普通の冒険者がレベルアップしたりしてどんどん強くなっていく中」
俺は陽菜の前で先程の試験の結果というものを引っ張り出した。
「俺だけはスキル一本で食ってるからね」
そう言ってから自分の試験結果、というものに目をやった。
見なくてもわかるが一応だ。
俺の強さは装備品の強さからくるものだが。
帝光学園の入学試験は装備なしで行われるため、装備を失った俺の結果など言うまでもない。
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名前:霧島 瀬奈
レベル:1
攻撃力:1
防御力:1
魔力 :1
体力 :1
【装備品】
なし。
ユニークスキル:装備性能値+1
(素のステータスを1固定にするデメリットあり)
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◇
「さてと」
陽菜との会話を終えて俺は最近やっていなかった作業を行うことにした。
ここはスライムが湧き上がるダンジョン。
このダンジョンは1フロアのみで形成されており難易度が低く周回が簡単だ。
しかしスライムがいるだけでなにも旨みはない。
難易度が低いだけで経験値などもほとんどもらえず初心者冒険者も寄り付かず、他に人はいない。
そのため俺だけの楽園だった。
「ステータスオープン」
─────────────────────
名前:霧島瀬名
ユニークスキル:装備性能値+1
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ユニークスキルと言えば普通は強い。
でも俺のユニークスキルは強くなかった。
だからバカにされた。
孤児院でも他の孤児に俺はバカにされ続けた。
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武器:木の剣
攻撃力:1
防御力:0
─────────────────────
俺のユニークスキルはこの攻撃力1に+1するしか使い道のないもの。
─────────────────────
武器:木の剣
攻撃力:2(+1)
防御力:0
─────────────────────
俺のユニークスキルはこうなるだけだった。
弱かった。
どうしようもなく弱かった。
低レベルの内はどうにかなってもレベルが上がると他のスキルの方が明らかに強くなる。
そんな外れスキル
だと思っていた。
でも違うんだ。
俺のこのスキルはかなり強いと思う。
もしかしたら俺の使い方はゲームで言うバグ技に近いのかもしれない。
「よっと」
装備していた剣をダンジョンにあった宝箱に入れる。
ちなみにこの宝箱は俺が持ち込んだものだった。
「さて、ダンジョンクリアしますか」
俺はダンジョンをクリアして転移結晶で入口まで戻りそしてまた同じダンジョンに入った。
歩いているスライムをすべて無視して先程剣を入れた宝箱の前まで来て宝箱を開ける。
剣を回収して装備する。
「ステータスオープン」
─────────────────────
武器:木の剣
攻撃力:3(+2)
防御力:0
─────────────────────
「ふっ」
笑ってしまう。
俺はただ宝箱を開けて剣を入れて回収しただけ。
それで勝手に攻撃力が上がっているのだから。
こうやって宝箱にいれていると、なぜか俺のスキルで上昇したステータスはリセットされずに次回収したときにまたスキルが発動してステータスが上昇する。
これは回数を繰り返せば当然攻撃力が4、5、6と上がっていく。
武器毎によって上限値はあるみたいだがある程度強化してしまえばそれでかなり強くなる。
「ほんとに笑えるほど楽だ」
スライムなんてモンスター動きはトロい。倒す必要なんてないし歩いて避けられる攻撃ばかり。
ここでは俺だけ敵を倒さず高速周回して高速で装備の強化が行える。
この使い方を発見してから、このスキルはかなり強いと思い始めた。
装備強化は装備職人に素材とお金を渡して初めてできるもの。
手間も時間もお金もかかる。
でも俺だけは違う。
最低難易度のダンジョンを敵をスルーして強化できてしまうのだから。
「何本か矢使ったし。こっちもやっとこうか」
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アイテム名:毒矢×100
攻撃力 :1
毒ダメージ:6
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これを宝箱に入れて俺はできる限りダンジョンを周回することにした。
ちなみに毒ダメージは300とかで十分だったりする。
それくらいあれば大体のモンスターは倒せる。
毒矢のストックを作ってから自分のステータスを見た。
装備ありのステータス。
─────────────────────
名前:霧島 瀬奈
レベル:1
攻撃力:4,563
防御力:3,695
魔力 :7,562
体力 :8,963
【装備アクセサリー】
ホウオウの首飾り
ランク:Sランク
防御力:3,694(+3,600)
竜王の爪
ランク:Sランク
攻撃力:4,562(+4,500)
賢者の石
ランク:Sランク
魔力 :7,561(+7,500)
生命樹の心臓
ランク:Sランク
体力 :8,962(+8,900)
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このチートみたいなステータスこそが俺が実戦で負けないと言われる理由。
普通のSランク冒険者のステータスで俺の数字の1/10程度。
そのとき携帯端末が音を鳴らした。
「えー。速報が入りました。最近新たにできた悠木市のSランクダンジョン悠木塔ですが、これより複数のSランクパーティが手を組み踏破を目指すとの宣言がありました。更には二階堂さんのパーティも別ルートで攻略を目指すようです」
社長に聞いていた通りの展開がやってきたようだ。
リポーターが二階堂に質問していた。
「二階堂さん。今回も黒の殲滅者は現れるでしょうか?」
「挑むのは最近できたばかりのSランクダンジョン。間違いなく現れるでしょう。そして我々にとって大きな壁となる」
そこで続きを聞くのをやめた。
やることは簡単だ。
俺が全員抜いて頂上まで駆け上がる。
それだけだ。
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