第4話 裏の顔で活動する

陽菜と別れた後俺は家に戻っていた。


ちなみに家は寮で陽菜とはもちろん部屋は別だ。


タブレットで見ていたネット配信がまた今朝と同じような言葉を垂れ流す。


「新しく確認された悠木ダンジョンですが。なんとSランクパーティの二階堂さん達のパーティが挑むことに決まったようです。さっそくお話を伺ってみましょう!」


そんな言葉を垂れ流し始めて画面には二階堂と呼ばれた冒険者が出てくる


「我々は今夜さっそくあのダンジョンを攻略をするつもりだ」


そう言って二階堂はそれとなくカメラに向けて人差し指を一本立てていた。


今夜12時、か。


俺へのサインだった。


数年間ソロ活動をしていたが最近いろいろと問題が出てきて、たまにこうやって他のパーティに同行することがある。


今回だけは例外で普段はやはりソロだが。


「さてと」


動画の視聴をやめた俺は自分の机の引き出しを開けた。


そこには黒い仮面とマントが1つずつ。

手に取ると両方を身につけて


「行きますか」


俺は寮の外に出て加速魔法レベル1の【アクセル】を使い目的の場所へと目指す事にした。


俺がそこについた時既に先客がいた。


黒い髪に顔には特徴的な傷の男、Sランク冒険者の二階堂。


「待ってたよ。六冬むとうくん。それとも【黒の殲滅者ブラックデストロイヤー】の方がいいかな?」


二階堂は俺に気付き、俺の偽名を呼んで近付いてきた。


六冬。


俺が正体不明の推定SSSランク冒険者として活動する時の偽名。


他には【黒の殲滅者】とも呼ばれているが俺の呼び方などなんでもいい。


「二階堂、待たせたか?」

「いや、待ってないよ。俺は、ね」


そう言いながら二階堂は自分の後ろを指さす。

その時


「どいてー!」

「おっと」


女性の声とその声に反応してどく二階堂。


「むー」


ドンと俺に抱きついてくる女性は二階堂 真白ましろ


雪のように白い肌と髪が特徴的なSランクの女冒険者。


そして二階堂の妹だ。


具体的な年齢は知らないが俺よりも年齢は上のはず。


「離れてくれないか真白」


離れようとしない真白に無駄と思いながらも頼んでみるけど


「いやー。もう離れないもん」


なんて事を言っている。


「相変わらずだな真白は」


それを見て笑う二階堂。


「うん。六冬のことすきすきー♡」


俺の腕に頬をすりすりさせている真白。


ある1件からこうやって懐かれている。

俺と会う度に毎度これだ。

そして大体俺が毎度話を進めることになる。


「それより二階堂。このダンジョンを攻略するんだろ?」

「ん、あぁ」

「悪いのだが俺も暇な身ではない」

「あぁ、分かった。行こうか」


そう口にした二階堂の後ろを俺はついて行くことにした。


「六冬君を呼んだということがどういうことか分かっていると思うけどボス戦対策で困ってたんだ」


進みながらそう言葉にした二階堂。


「そうそう。六冬がいないとやっぱりキツイんだよねボス戦」


真白が俺の腕に抱きつきながらそう同意する。


「このパーティに足りないのは支援職だものな」


二階堂はテンプレのような剣士で真白は典型的なヒーラー。


後何人かメンバーがいるが全員何かに特化しているが、支援職に特化したメンバーはいない。

だからそこで支援ができる俺だ。


まぁ、もっとも俺はアタッカーもこなせるんだが……。

それは秘密だ。


「期待してるよ」

「されても困るがね」


軽口を叩きながら進んでいると


「これだよ」


二階堂が口を開いた。

目の前には大きな扉が存在していた。


「この先にこのダンジョンのボスがいる」


二階堂はパーティメンバーを見回す。


「準備はいいか?この先戻って来れない」


全員頷いた。

この確認に念のため以上の意味はない。全員準備はできている。


勿論俺も頷いていた。


「よし、じゃあ行くぞ」


二階堂が扉を開く。

そこには広大なエリアが広がっていた。


ギィィイ。

バタン。

最後の人が入り終えたようで入口の扉は閉まった。

その時


「ブモォォォォォォォォ!!!!!!!!」


鳴き声が響いた。

その声は目の前のモンスターから発されていた。


「ミノタウロスだな」


手に持つのは巨大なハルバード。


体長は俺の5倍ってところか。

かなり大きめだ。


このダンジョン最後のボスを務めるのに申し分ない。


「いつも通りの陣形でいく」


手短めな二階堂の指示に俺達は陣形を組んでいく。


「支援魔法。アタック、デイフェンス」


俺はパーティメンバー全員の攻撃力と防御力を底上げする。

その効果量は2倍。


「相変わらず凄いな。この魔法を無詠唱だなんて」

「口を動かすより手を動かして欲しいところだ」


二階堂の声に答えながら俺は動くがそれよりも前に他のパーティメンバー達が動いていた。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「食らえぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


2人がミノタウロスへ向かっていく。

そして


ブン!

剣を振りかざすがミノタウロスに避けられる。


そこまで予想していた俺はすぐに毒矢を装備してスキルを発動。


この毒矢は俺のユニークスキルにより超強化されている。



​───────​───────​───────

アイテム名:毒矢

攻撃力 :1

毒ダメージ:9,999(+9,998)

​───────​───────​───────



毒矢ポイズンアロー


ギリギリと限界まで引き絞った弓矢を放つ。

ビュン!


「ブモォォォォォォォォ!!!!!!!!」


避けられないタイミングだ。

なんせミノタウロスは先に戦っていたメンバーの攻撃を避けた直後だからだ。


飛び下がったミノタウロスは着地した時の硬直で動けない。


俺の弓矢は狙い通りの場所に刺さった。

それは目玉。


「ブモォォォォォォォォ!!!!!!!!」


痛みからか暴れ出すミノタウロスだったが数秒でそれは止まりパタリと倒れた。


ほんとうはサポート程度のつもりだったが、毒ダメージが強すぎてしまったようだ。


そんな今のバトルを見たパーティメンバーの1人が俺に声をかけてきた。


見覚えのない男。

新しくこのパーティに加わった仲間なのだろう。


「あ、あんな矢1本で倒すなんて。これが、【黒の殲滅者】六冬さんなのか……。レベルが違いすぎる……」




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