第2話 ハンデ
「お、おおおおお、お前!」
顔を真っ赤にする森山に俺も言葉を返す。
「どうしたんだ?そんなに動揺して」
俺がそう言うと周りがざわつき出した。
「おいおいエクストラが1組に喧嘩売ってるぞ」
「やばすぎだろあのエクストラ。エクストラは卒業まで大人しく過ごせってのが暗黙の了解なのにな」
「そうだな。そんなエクストラが1組にタメ口だと?有り得ないだろ。常識知らず過ぎるだろ」
そんな声が聞こえてきた。
なるほど。周りの視線が集まったのは俺が常識知らずだったかららしい。
事態を把握して俺は森山に目を向けると奴は口を開いた。
「許さんぞお前。エクストラの分際で。お前僕と決闘しろよ」
「決闘?」
意味が分からず首を傾げた。
なぜ決闘?
「力の差を見せ付けてやるよ。泣いて許しを乞えよ。僕に取った態度を後悔させてやる」
そう言いズカズカ歩いていく森山。
そんな森山に聞く。
「いつ、どこで、それを教えずどうするつもりなんだ?」
キッと目を鋭くして俺に向き直る森山。
「今からだ。場所はついて来れば分かる。一々シャクに障る奴だな」
そう言われたし断ったらまた面倒な事になりそうなので俺は同行することにした。
森山がどこに向かうのかは分からないが歩き始めると
「お兄様申し訳ありません。私のせいで」
「気にする事はないよ。お前のせいじゃない」
そう言い頭を撫でてやると
「お兄様♡」
陽菜の顔に笑顔が戻るのを見て
「くそ」
森山はそう呟いていた。
そうこうしていると俺達はとある一室に辿り着いていた。
「くくく、今日はとある催しがあってな。僕の強さを生徒会に見せつけるというイベントだ」
そう言いながら森山は扉を開け中に入っていった。
俺もそれに続くと、中には真っ白な空間が広がっていた。
中にはなにも置かれておらず自由に動けるようだった。
「おや?森山君?後ろの人達は?」
女の人の声が聞こえた。
「ギャラリーと僕の準備体操相手ですよ」
答える森山。
「君だけでいいと言っておいたはずだが、まぁいいか。しかし、霧島さんでいいのか?準備体操の相手が」
女の人は陽菜を見たが。
「いえ、違いますよ、白金さん。相手はこっちの男」
森山の言葉に白金と呼ばれた女の人は驚きの声を上げる。
この女の人は入学案内で紹介されていたな。
3年の白金、生徒会の副会長。
「え?!そっちの子?!」
「僕のことを楽しませてくれるらしいので。ねぇ?エクストラ?」
俺の方を向いてニヤニヤしている。
はぁ、早く終わらないだろうか。
そう思いながら俺は白金に目を向けた。
「俺にはよく分からないけどなんだかそういうことになっているみたいだ。まったく面倒だよ」
「その口の利き方直ぐに直してやるよ」
俺を睨みつけてくる森山だったが直ぐに別の話題に入った。
それは決闘のルール。
「これだけは聞いといてやる。勝負方法はなにがいい?1番お前が自慢できる分野に合わせてやる」
おそらく剣術中心か魔法中心か、といったところだろうが。
「特にないな。お前に合わせるよ。ハンデさ」
そう言った瞬間だった。
「お前!エクストラの分際でいい加減にしろよ?!僕に合わせる?!はっ!偉そうにペラペラと!後悔するんだな!」
怒鳴ってきた森山。
「そこまで言うなら僕の得意分野で徹底的にねじ伏せてやるよ!徹底的にだ!」
そう言うと森山はこの部屋にあった試験用の剣を手に取った。
「言わなくても分かるな?冒険者の基本だ。剣の勝負、だが軽くなら魔法はありだ」
「分かったよ」
俺は答えて同じように剣を取ると森山に向けた。
それを見た白金は顔をしかめつつも審判を行ってくれるようだった。
「準備体操と言っていたな?何があったのかは分からんが森山、後遺症が残るような魔法等は絶対に慎めよ?」
「分かっていますよ白金先輩」
「そうか」
白金はそう答えて俺たちを見比べてから
「始め!」
合図を出す。
「おらっ!」
先ず森山が動いた。
剣を振りかぶって振り下ろすだけの単純な動き。
しかし俺の目から見ても洗練されていた。
無駄がない。そんな動きだった。
「これが森山流の剣術だ!はっ!お前如きでは受けきれまい!」
キン!
俺はその剣を受け流す。
「それで?これで終わりか?」
俺は受け流されて体制を崩しそうになっている森山にそう言った。
確かに筋は悪くないがまだまだ甘い。
「なっ!森山の剣を受け流しただと?!」
白金の声が聞こえてきた。
しかし
「ふ、ふざけるなよお前!!!!!」
顔を真っ赤にする森山。
その声が1番大きく響く。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!!ぶっ殺す!!!殺してやる!!!!その余裕そうな顔を崩してやる!俺は森山だぞ?!」
俺との距離を一旦取る森山。
完全に頭に血が登っているようだ。
「俺のような選ばれた人間が貴様のようなゴミに負けるわけがない!!!火魔法レベル5 【メガファイア】!!!!」
その瞬間森山は魔法を使った。
そして別の場所では別の声が。
「も、森山?!何をしている?!そのレベルの魔法はこの子では防ぎきれないだろう?!間違いなく重症だ!」
「ははははは!!!!殺す殺す殺す殺す!!!くそ生意気なゴミを排除してやる!!!」
白金の声も届かないほど怒っている森山。
そして奴の唱えたファイアは俺の下に迫っていた。
どうしようかと逡巡した俺は
「防御魔法レベル5【マジックシールド】」
ため息交じりに小さく呟いた。
俺も魔法を使うことにした。
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