第25話

 広い広い荒野に、一人の少女と巨大な骸骨が対峙していた。

 骸骨の体はすでにボロボロと崩れ始めていた。


「さあ、これで終わりよ!!」


 そう言って少女が剣の切っ先を骸骨に向けた瞬間、骸骨に向けて空から光の洪水が降り注いだ。

 骸骨は断末魔の叫びを上げながら、光に溶けてきえていく。

 光の洪水は少女が仕向けたものではなかった。

 少女も何が起こっているのか理解できず混乱している。


 骸骨の姿が完全に消えてなくなると光の洪水はやんだ。

 そして、今度は空全体が金色に光り始めた。


「いったい、何が起こってるの……」


 少女が天を仰いでていると、光のなかから複数の人影がおりてきた。

 人影の数は23個だった。

 そのうちの一つが少女の近くまで降りてくる。

 それは白いローブを纏っていた。

 フードを目深にかぶり、顔が見えず年齢も性別もわからない。


『残念だが、時間切れだ……』


 男とも女ともつかない声が少女の頭に直接響いてきた。


「時間切れ? 何のこと?」


『この世界のだよ……』


「この世界が時間切れ……まさか、世界終わるって言うの!?」


『ああ、むしろ予定より1年近く遅かったくらいだ……』


「1年近く遅かった? いったいどういうこと!? だいたいあなたたちは何なの!? 神様だとでも言うつもり!?」


『そうだとも言えるし、そうでないとも言える。一番正しい言い方をすれば、神になれない語り部たち……といったところか。数も予定していたより二人足りない。おかげで私がこの終局を担当することになった』


「何を言っているのかわからない……この世界が終わったら、私はどうなるの!?」


『安心しろ。君はきっとどこか別の世界へ転生するよ。さて、エピローグはこんなもんでいいだろう。さあ、“終わり”を“始め”よう……』


“語り部”はそう言って両手を広げた。

 そして、視界に見える全てが光の粒子になって崩壊していく。

 天も……

 地も……

 少女も……










 ふっ、と彼の意識は目覚めた。

 彼はどこかの狭い部屋のベッドの上に居た。

 記憶が混乱している。


 ここはどこだ……

 自分は誰だ……


 周囲を見回して、一番最初に目に飛び込んできたのはゲーミングパソコンだった。

 モニターには『You Died』と表示されている。

 その文字を見て彼の頭の中にすべての記憶が蘇ってくる。


 ああ……

 どうやら、寝ぼけていたらしい……


 たくさんの思い出したくないことが頭の中に溢れかえり、ベッドの上で悶える。


 そして、彼は呟いた。


「あーあ、何でこんなことになったんだろうな……」




 完

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ニラカナのリレー小説企画 21話,25話 阿々 亜 @self-actualization

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