第2話 【新人視点】すごい

side メイル


「ひぃぃぃぃぃ!!!!寒いですぅぅぅぅ!!!!」


私は1人雪山を歩いていた。

理由は簡単だ。


これからホッケ村という村に行くためだ。


「ギルドになんて就職するんじゃなかったです!なんで1人でこんな寒い雪山の中を!しかも新米に一人で行けってブラック過ぎませんか?!」


愚痴愚痴言いながら進み続ける。


「マップ、マップ」


私はここがどこだか分からなくなってマップを取り出そうとしたけど


「あっ!」


ピューっと吹雪に飛ばされて飛んでいくマップ。


「戻ってきてくださーい!!」


呼んでも戻ってこない。


「そ、そんなぁ……く、くしゅん!」


寒い寒い寒い。


「寒すぎますよ。ブルブル」


寒さを凌ぐために貰った装備だが意味がない気がしてならない。


「どこ?ここ?」


それにマップがないし初めてくる雪山で私は何処にいるか分からなくなっていた。


マップにはここが何処なのかと言うのが番号が書かれていて分かりやすくなっているのだが。


そのマップも吹雪に飛ばされてしまった。


「ひぃぃ!!!!寒すぎますぅぅぅ!!!」


とりあえず余りの寒さにエリアを移動した。


「何か無いかな?」


ギルドに支給されたアイテムポーチを漁ってみる。


「何で最低限のものしかないんですかぁ?!」


アイテムポーチに入っているのは


​───────

非常食×2

ポーション×2

​───────


「こんなんで何をどうしろと言うんでしょうか?!まったく!」


愚痴を吐きながら仕方ないので歩くことにする。


「寒い……寒い……後半日くらいで付かないといけないのに……」


間に合う気がしない。

いつもギルドはめちゃくちゃな命令を出して冒険者を困らせる。


「えーっと、この辺は5番、でしたっけ?」


横穴を抜けて今歩くのは通路になっている場所。

前を見ると小型モンスターのホワイトウルフが威嚇していた。


「私は美味しくないですよ?」


そう言いながらホワイトウルフを威嚇して壁際を通って歩く。


そうして雪山の頂上に繋がるエリアに出た。


ここはかなり開けた場所で視界もいい。

のだけど


(ひ、ひぃぃぃぃぃ!!!!なんか大型モンスターがいるんですけどぉぉぉぉぉ?!!!)


視界の先にはマップの端っこの方で何かを食べている大型のトカゲ型のモンスターの姿があった。

視界がいいせいでこんな嫌な物も見てしまった。


「み、見つかりませんように……」


ソロソロと歩いていく。


「も、もう少しです。エリアさえ移動してしまえば……」


エリアを移動する際は道が細くなるためモンスターが入ってこないことが多い。

その時


「く、クシュン!」


寒すぎてくしゃみをしてしまった。

その音を聞いた大型モンスターがこちらを振り向いた。


そして両前足を開いて


「グァァァアァァァァアア!!!!!!」


咆哮して、ドタバタと走ってきた。


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


死ぬ!死ぬぅぅぅぅぅぅ!!!!!


死んじゃうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!


雪山の中雪に足を取られがら必死に走るが


トカゲの足が早すぎて直ぐに追いつかれてしまう。

突進に当たると痛そう!!!


そうだ、こんな時はギルドに教えてもらった


「緊急回避!」


バッと、足で地面を蹴って回避する。


これでとりあえずやり過ごせた!と思ったのに


「グァァァアァァァァアア!!!!!!!」


「ひぃぃぃぃ!!!聞いてないんですけどぉぉぉ?!!!!」


トカゲは180度向きを変えてまた突進してきた。


「ひぃぃぃぃ!!!」


貧弱な片手で持てる剣を抜いて適当に振り回す。

武器の扱い方なんて教えてもらってない。現地で聞いて学べと言われたから。


その時


「よく頑張ったね」


どこから現れたのか分からないけど、男の人が目の前にいた。


「え?」


「いちおう迎えに来たよ。君だろ?新人の冒険者って」


そう言いながら男の人は、持っていた弓で矢を放つ。

すると


「グギャァァァァァァァ!!!!」


私を捕食しようと追っていたモンスターを


「い、一撃……?」


一撃で倒してしまっていた。


あんなに強そうだったのに。

一撃で。


「さ、行こっか。ホッケ村に」


差し出された手を掴む。


「は、はい!」

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