第20話 【閉幕】
ヴァーマリン小王国を滅亡に追い込んだスカルロート王国の噂は、すぐに各国へ広がっていった。
小王国の成り立ちのこともあり、兄弟喧嘩に決着がついた、という程度に見られていたが、それで終わらなかった。
勢いをつけたスカルロート15世は、その後、王国騎士団に莫大な金を投資して、周辺諸国を次々に支配下へとおいていった。
王国騎士団の地位も更に上がり、騎士長のセシルは、やがて王に次ぐ権力者となる。海外との貿易、支配下にある国の整備等の指揮を、前線に立って推し進めていた。
やがて、スカルロート王国は、各国から「赤い魔物の大国」として恐れられるようになった。
しかし、その栄光も長くは続かなかった。
権力にものを言わせ、逆らう者は即粛清の、傲慢な絶対王政に、やがて国民の間で不満が募っていった。植民地となった国の市民は暴動をおこし、その鎮静化に追われることになった。
投与された資金で肥大化した王国騎士団は、国民の怒りを鎮めることに人員を割かれ、やがて国の防衛任務が手薄になった。
そこを、他国に襲撃され、敗北した。
賠償金のために、国民からは多額の税金を搾り取り、更に国民の間で怒りが蓄積された。国は貧しくなり、日に日に食物が消えていく。
それでも対策しようとしない王政に一矢報いようと、1人の女性が立ち上がった。
彼女は国民を奮起させ、彼女に勇気づけられた国民たちは武器を手に取り、王家に攻め込んだ。
その結果、スカルロート王国は滅亡した。
権力にものを言わせ、血統を尊いものとし、己の傲慢を知ろうとしなかった暴君と共に。
かつて、首をはねられた弟君の遺した言葉の通りに。
国民たちとの激しい戦闘を経て、王国騎士団は壊滅した。
王国の剣であり盾であると謳われ、その圧倒的なまでの強さを誇った騎士団が、国民たちの団結した力を前に倒れたのだ。
革命後に作成された戦死者名簿には、革命を主導した女性の意向もあり、国民だけでなく、王国騎士団員たちの名前も載せられた。
戦死した国民と騎士の名前が同列に並ぶ中には、かつて天才と言われ、〈リコリス〉と恐れられた女性の名前も刻まれていた。
これは、スカルロート王国の数年間の繁栄、そして、滅びへと至る物語である。
滅亡へと誘う砂時計は、まだ、倒れたばかり――
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