第12話:PENDLo.

 がしゅううん、がしゅううん...

〈来るなァ...!〉

 がしゅううん、がしゅううん...

『こいつ...どこの所属だ!?』

 がしゅううん、がしゅううん...

『うわぁああっ!!?』

 がしゅううん、がしゅううん...

〈くそっ...くそっ! 〉

 がしゅううん、がしゅううん...

〈あぁあああぁ...腕g...〉

 がしゅいううん............。


 依然侵攻中。


 ざばぁあああ!!


 茨城、笠間に最初の一個体が上陸。

日本が喰われるのも、最早時間の問題だった。

がしん! がしん! ...と

生体情報をレーダーから知ったその個体は、

一目散に駆けていく。

村があった。

彼...若しくは彼女にはやる事はひとつだった

喰い尽くすこと、そして生きる事...それだけ。

『か、怪獣だ!』

『よく見なさい、PDじゃないの』

『あぁ...PDかいやぁ、おつかれ様だな...にしても、やけに海藻がこびり付いているな』

『どういうことでしょ...』


 ふしゅううう...

空間認識をリチャージ、

スキャン終了、数22。

バランサー状態確認、

バランサー状態良好。

残存武装0。

自身の状態を追認、

自身の状態を確認。

証明

排除します。


ガバァっ!


『頭が開いたぞ...って、誰も乗ってない!?』

『う、噂の奴だ! 逃げろ! 子供と年寄りを村の外へ!』

『来るぞ! うわぁああ』


 がしゅん! がしゅん! 

ぐあああああああああ!!

がきぃぃぃん....!!

どうううん...


『た、倒れた! ...いや、倒したのか!?』


 村人達の視線の先にいたのは...。

一体...似ているが、また別のPD兵器...。

「5日も経ってない...燃費悪いね!!」

骨の様な色合いの装甲と頭。

装備はからっぽのミサイルポッドだけ...。

「正直...ここでゆっくりできるとは、全く思って無かったけど...」

鋼の竜が土煙から姿を現す...。

「僕は、もっと、」

アルパはモニター越しに

起き上がったPDモドキを睨む。

がっしゅうううん!!


 ぎぁああああ!!

そのPDモドキ...アリゲートは、

金属を軋ませて咆哮する。

威嚇用にわざと付けられた機能だ...。

この冷酷、そして敵無しの怪物に、

威嚇させる理由なんて無いのだが......。


 がしゅううんっ!!

一気に飛び上がり、

アリゲートは距離を詰める。

アルパとしてはここで引くと村は滅茶苦茶だ。

「負ける訳には行かないんだ...!!  ここでくたばったら...居なくなった仲間にツラが無い!!」

奥から何も考えず叫び、

呼応したように機体は進みだす。

飛びかかってきたアリゲートを

下からフロントキックで弾き飛ばす、

高度なバランスシステムによって、

ブースターすら吹かさずにアリゲートは着地。目の無い頭で2機は睨み合う...。

先に動くのはやはりアリゲート、

がしゅん! がしゅん!

大きな顎で噛み砕かんと掛かる。

アルパ機は目一杯身体を低くし、

左脚の膝を軸、爪先を原動力に、

回し蹴りを繰り出す!

バランスを崩すのを見るや、

アリゲートの足を掴み上げ遠くにぶん投げる!!

ばしいうん!

ぎぃああああ!!

アリゲートは痛みに耐えかね悲鳴を上げる...

(獰猛なこのマシンに痛みは無いが)

双方ぴょうっ...と跳ね上がって体勢を整える。

「君だって僕と同じなんだ...」

操縦桿を握る手は、手汗で滑る。

より強く握り直す。


「自分勝手だよ...、君は...僕もそうかもしれないけど....」

最近載せ替えた、新型リアクターから

無尽蔵に溢れ出るエネルギーが、

自身にも伝わって来るようだ...。

長い睨み合いを抉るようにアルパ機が走る。

がしゅん! がががっ!

横から思いっ切り蹴るが、

アリゲートは踏ん張りを効かせ、

大地を削りながら横滑りするだけ...

自分の番と言わんばかりに

アリゲートも蹴り返す。

こちらもこちらで踏ん張って耐え凌ぐ。

不毛な戦いだ...

だが気づいたところで...。

切れかけの推進剤だけが頼りか...

決めるなら1度きり...それまで隙を待つ。


 ポツン、ポツン...、ぱぱぱ...、ざぁぁぁぁぁ

そこには雨が降り始めた...。

スコールが大地を緩くする。

アリゲートにへばっていた海藻は

その雨でぐっちょりと剥がれる。

アストリーチのコクピットを

強い雨がカンカン叩く。

接地調整をタイプ2に切り替え、

「.........」

走り出す。

ぐしゅうん! ぐしゅうん!

がっ!

そこら辺の木を一息に引き抜き、

顎を下方から上に向かって殴りつける。

対するアリゲートはバランスを崩さずに

首を逸らして避ける。

それどころか大木を顎で挟み食いちぎる。

どうだ! と言わんばかりだ。

「凄いです...ねっ!」

ガンッ!

頭に踵落としを入れる。

少し頭が陥没した。

直ぐに回避に移り、距離を取る。

それと同じスピードでアリゲートは接近...

離そうとした距離は一気に縮む。

「ぐっ!!」

止まらず激突。

アルパ機は派手に倒れる。

くい込んだ装甲は見ていて痛々しい...が

見ている人なんていない。

迫るアリゲートを見て

ここでブースター点火!

高速で起き上がったかと思えば、

タックル返しで今度はアリゲートが倒れる。

すかさず、頭を足で押さえつける。

....が、相手はアルパがやって見せたように

回し蹴りを繰り出しての足払い。

「うぐ...」

隙のないアリゲートの踏みつけを、

横にぐるんとロールして避ける。

ずがががが...だっ!

飛び跳ねて身体を回転、

そのまま脚部アーマーをパージ...

遠心力に任せて鋭利な装甲が射出。

アリゲートの腿の付け根に突き刺さる!

ずざぁぁぁ...がっっしゅううん!

すぐさま距離を詰め、

頭をぐちゃぐちゃな地面に叩きつける。

アルパはコマンドを入力。

「パイルドライバーァァァァァッ!!!!!!」

ごぉぉぉおん...

叫びと共に重質量の杭が貫く。

鈍い音が一帯に響いたかと思えば

再び雨が音を独占する。

だがアリゲートの執念という物は...

がぴー!

ひゅおうおういうおう....

電子音を発したかと思えば

再起動、再び牙を剥く。


 ぎぃああああ!!

起き上がったかと思えば迷いの無いタックル。

ヒトにはおよそ追いつきようがない速さ...。

目覚めたのだ......

一度完成した人造人間を、

機械でバラバラにし...この、

[Ost-Alligator]の脳として生まれ変わらせ、

ヒトの醜い対抗心と競争力と進化速度が...

ただただ滅茶苦茶に増幅され、

本能を最上位として地球ほしを喰らう怪物モンスター

その真髄が敗北を知って目覚めた。

ヒトがそうするように、

アリゲートもやはり......。

ぐいんっ、

アリゲートの首が一回転...

パイルバンカーごと投げ出されそうな、

そのパワーに急いで爆砕パージ。

「くう...なぁ!?」

急に浮遊感...

「足を払われた...、ものにしてる...! だからって」

ブースターの点火...

全て使い切って無理やり姿勢を制御する。

そして頭を上げると...

アリゲートは足を振り回す。

爆発が起きたかと思えば...

「まずいッ!」

急いで頭をずらす。

しかし、一部が吹っ飛び、

コクピットから外が見えてしまう。

モニターは使い物にならない...

「もう邪魔だ!!」

びびーっ

ぼしゅうぅつ!

「うぐ...」

爆砕ボルトの熱を浴びながら...前を向く...。

ハッチを失い、身体をさらけ出す形になり、

冷たい雨、風が体温を奪う。

電子機器は非常時用に防水されている為、

戦う事に支障はない...。

装甲、損傷具合、全てにおいてほぼ同じ状態。

性能が、無人機が...言い訳なんて出来ない。

...いや、言い訳をする必要は無いようにする...

今できる事はそれだけ!!!

「わああああああああ──────ッ!!!!」

ぎぃああああああぁ──────ッ!!

がしゅうん! がしゅうん!

二機同士がとんでも無い速度で近づく...。

そして弾かれ、宙を舞ったのは...。

ぎぁあああっ!?

アリゲートだった。

今度はリアクターを狙って...

もうひとつの足に残った、

もうひとつのパイルバンカーを...。

「でぇああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!」

ずごぉおおおん....。

アリゲートの人工筋肉は即座に崩壊を始めた。

「やった...」

リピ──────ッ!

「な....」

きぃっ......。


 白い炎が迸った。

村人の1人が...

その様を二個越えた山の上から見た。


 歴戦の戦士は

たった一機の自立型に負けた。

いや、勝ったのかもしれない。

少し日が経ち、

続々とアリゲート達が日本に上陸した。

その悪魔を止める事は叶わなかった。

一部の人間は軌道を外れた月へと逃げた。

食糧を失ったアリゲートは全て息絶え、

孤独となった地球はからっぽになった。

しかし地球は蒼く輝いていた。


EXT



------------------------------------------------------------------------------------------------あとがきへ

https://kakuyomu.jp/users/notunayo-exe/news/16817330652999578243

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

PENDLo. のつなよ.exe @notunayo-exe

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ