第10話:オーバードライブ
ユーラシア隊は都市の制圧を完遂...。
双方に多数の死者を出したが...
それ相応の価値の奪還となったかは、
考えたくも無かった。
創造主側から捕虜を得た...とは言え、
その殆どが民間人で、
有力な情報も塵として手に入らず、
ますます有益だったかに拍車をかけている。
創造主軍弩級飛空船{バハムート}
〈本部を潰しに来たのか?〉〈まだ分からん...が、こちらも裏は取れている〉〈どっちが先に倒せるかの競争だな〉〈バハムートで叩くか...〉〈敵の本部、呼び名は...どうする?〉〈あの辺りはユグドラシュルフィールドではなんて呼んだか...〉〈たしか...〉〈あぁ思い出した。言わせてくれ...、ヤタガラスだ...。これより
バハムートのブリッジが、
ゆっくりと格納され、
見た目とは裏腹な加速で戦地へと...。
ユーラシア方面軍PD隊前線基地に、
一機の超大型トラックが現れる。
元は採掘用のダンプを改造した物で、
横に2台並べ、トレーラーの様に
荷物を引っ張って運ぶ。
載っているのは...
「新型のPD兵器...!?」
アルパが叫ぶ
それは高さ10m、奥行はそれ以上...。
取り敢えずでかい...。
他にも5台程、同じ物の一台バージョンが、
基地の中に入ってくる。
ビルの傍を派手にぶっ飛ばして整地した...
その基地には余裕で入る。
一台型には4本足の...亀? の様な見た目の
PD兵器らしき物が運び込まれる。
「何です?これ...」
「さっきの飛び切りでかい奴のお付きメカよ...。名前は[Ratt-A]...だったかしら」
「護衛...ですか?」
「いや、護衛じゃないわ...アレはタダの発電機よ。攻撃用の武器なんて持たせられないわ」
「何故です?」
「無人機だからよ、あの4mのカメさんがもし、勝手に動いて暴れたらとんでも無いでしょ? せめてアストリーチには余裕で停められるぐらいにしないと行けないわね」
「へぇ...あ!」
首の裏の付け根がslowlyに開くと、
1人の人影が現れる。
「久しぶり!」
「久しぶりです...隊長、」
その正体、このPD兵器の専属パイロット...
第二世代人造人間最高の
No,7...。
よく当たるから7......なのかは定かでは無い。
そしてもう一人...。
トラックの運転席から降りてくるのは、
「皆さん初めまして。」
カラである。
「じゃあみんな! 紹介するわ! こちらのイケメン君がNo,7!」
「よろしく、」
「んでこっちの寒そうなのがカラよ!」
「寒そう...。」
「じゃあ今回の任務説明...しましょうか」
「では私から....。」
「あ、じゃあよろしくね〜」
イプシルには何か別の表情を、
カラに感じとったが...
何かは分からなかった。
「はい、では作戦説明に入るのだが、先に何故なのかを伝えておく。つい5分前、相手側の前哨基地から大型の飛行体を確認した...。数は1。上空での滞空後に光学レーダーから喪失した。だが熱を多少検知は出来ている...。その飛行体...これをマゴニアと呼称した。マゴニアの熱情報はゆっくりと東へ向かっている。このマゴニアはこのまま移動を続けた場合、その同緯度、日本に到達する事が分かった。よって今回の作戦内容は、マゴニアの迎撃、及び撃破。しかし、あなた達ユーラシア方面軍は足止めをする事が目的だ。撃墜任務はNo,7及び、この新型[Och-sen]が担う、あなた達だけで落とせるならそれは別ですが...内容は以上。細かい行動は2に任せる。」
「了解! あとは任せて頂戴」
2222年2月22日...。
ばたたたたたたたたた...
蒼空を無数の輸送ヘリコプターが舞う。
その中に紛れる飛空挺4つの中の2つ...。
「目標、恐らくマゴニアの熱情報を感知しました」
「知らんぷりして近づくわ...輸送ヘリ団にもモニター情報を共有してくれる?」
「了解です」
イプシルだけ、
飛空挺の上にしがみついていて、
索敵を責任もって行う...。
動作にロックをかけている為、
レバーを離しても足を滑らせるなんてのは
先ずないが、それでもちょっぴり怖い...。
紛らわしも含めて叫ぶ。
「マゴニア、絶対距離残り300m! 前方! 来ます!」
「まだよ...、まだ...」
「100m、50m......0!」
「退避!」
見えないはずのマゴニアを、
ぶわッと避け始めた航空機を見たからか、
マゴニアは透明化を解除した。
しかし先手を獲ったのは我らが空挺部隊。
輸送ヘリに積まれた爆薬が、
次々とマゴニアに投下される。
少し遅れて点々と生えている球体から
迎撃の蒼い光線が放たれ、
ヘリは落ちていくが...
遅かった様だ。
置き土産の爆薬が着弾、
マゴニアの上部に炎が巻き上がる。
『やったか...!?』
「やってない! ヘリ部隊帰還せよ! 以降はマゴニアを怪獣と(無理矢理)判断して処理します! よってPD隊に権限を移行! いいわね?」
『了解...健闘を祈る』
ばらららららら...。
そうして飛空挺だけになった部隊から...
「エントリー!」
アストリーチ達が揃って降下を始める、
アルパ、イプシル、ラムダ、そして2...。
ユーラシア方面軍のメンツは以上だ...
デルタは別行動を取っている。
「取り付きました!」
「私もですっ!」
「こちらイプシル...降下成功!」
「みんな大丈夫そうね?じゃあビーコン...埋めに行くわよ!」
「はい!」
埋設式ビーコン...。
アルパ機が普段付けている
単砲と代わりに装備してきたユニット...。
設置後に目標に埋まり、そこから電波を発信。
500km離れた山に待機する、
この作戦の
切札...[Och-Sen]の目となる...。
ここで埋めても良いのだが...
皮を引っ剥がして終わりになってしまう...。
できるだけダメージを与えられる様に
内部に埋め込まねば意味が無い...。
ここからは実質的な白兵戦だ...。
PD兵器でこの巨大な船を探索し、
ビーコンを設置...そして離脱。
だがPD兵器は魔法歩兵等の、
歩兵ながら高火力な魔法が使える者が、
相手となるとかなり厄介だ。
装甲の形状を丸くするぐらいしか、
魔法というのは対処法が無いのだ...。
やられる前にやる、それだけだ...!
「アルパ機を徹底的に護るのよ...! 彼が死んだら元も子も無いわ!」
「了解ですっ! では突入しますっ!」
ラムダがプラズマスピアを展開...!
突入方法は単純...。
「でぇぇぇぇいっ!!」
甲板を焼き切る!
PDが入れるくらいの隙間を作り出すと、
モグラの様に掘り進んでいく。
煤でラムダ機が黒く変色して行くが、
何ら問題無い...。
一気に開けたかと思うと、
「到着ですっ...」
「って! 人も居るし...ここ住宅地!?」
「民間人も住んでるのね、でも...やる事はやるわよ。みんな?」
「...了解」ですっ」」
がしゅうん! がしゅん! がしゅうん!
こんなデカブツが走る事を想定していない、
その道をベコベコにひしゃげさせながら...。
2、アルパ、イプシル、ラムダが走る...
突如現れた鋼の怪物を見て、人々が逃げ惑う。
「高速で移動する熱源! 数20! 箒兵です!」
「分かったわ! 焼き払う!」
ミサイルポッドから放たれた過電流筋裂弾が
それらに襲いかかる。
すぐ側にある家等も巻き込んで吹っ飛ばした。
その家の中は見ないで置いた。
状況はどうせ予想通りの惨状なんだろう...。
箒兵を始末し、止まること無く進んで行く。
「丁度中心部です...それとマゴニアが後10分で海へ出ます!」
「速いな意外と...設置するよ!?」
「やっちゃって! 次来るわ!」
うぃ...がりがりがりがり...
その造られた大地にゆっくりと沈んで行く。
「3,2,1,埋設出来ました!」
「離脱するわ! って...」
「こいつら...」
なんと船の中にもかかわらずに
怪獣が湧いてでた。
2足歩行型の7m級...。
ラムダがプラズマスピアを構える...が、
「ラムダは真下に掘ってちょうだい! 脱出用の穴を作るのよ! こいつは私が何とかしておきます...」
「了解ですっ!」
「さて...、こいつ.........。まさかとは思うけど...」
がひゅうううっ!
怪獣は咆哮した!
「来るわね?」
脱出穴からはできるだけ遠ざかる様に
誘導するために移動した...が
怪獣は無視して妨害しようとラムダに向かう。
「やっぱり!」
怪獣の頭に何か埋まっている...。
その中には...
「隊長! 頭に人が乗り込んでますよ!」
「分かってるわよ!」
ミサイルランチャーを発射。
気づいた怪獣は巨大な腕を翳して防ぐ。
「効かないかぁ...」
「単砲にしておけば良かった...! ごめんなさい隊長!」
「気にしないで! ある物でやるわ......よッ!」
No,2機が怪獣に向かって蹴りを繰り出す。
が、タイミング良く受け止められる。
「このッ」
アルパも参戦し、
ミサイルランチャーを発射....
だが、
「なっ...ダメだ!!」
誘導ミサイルを地面にぶつける。
爆煙の向こうではなんと...
2の足を掴みあげた怪獣が、
そのまま彼女を盾にして来たのだ。
危うく同士討ちをしてしまうところだった。
「くそぅ...ならば!」
アルパはブースターを点火させて加速、
低い天井を這うように上から攻める。
背後を取って蹴りをぶつける。
No,2機は放り出される。
怪獣はバランスを崩して倒れるが、
ぐあッと唸った後に再び立ち上がる。
ダメージを受けている様子は無い。
しかも、アルパは返しに
その尾で足を払われてしまう。
ばばばばばばっ!
ブースターを吹かして衝撃をできる限り緩和。
それでも派手にぶっ倒れた。
「アルパッ!」
「大丈夫、です...たぶん!」
怪獣がゆっくり近づいて来る...
しかしどうやら倒れ方が不味かったらしく、
システムが一瞬落ちてしまったようだ、
その一瞬で怪獣は腕を大きく振り上げ....。
ずばぁああんっ!
アルパ機の脚部に振り下ろす...。
だが人工筋肉は理想以上の強度を発揮し、
折られる事は無かったが。
装甲が大きく陥没してしまい、
筋肉にくい込んでしまっている...。
もう一度怪獣は腕を振り上げる...!
「このッ!!!」
きぃいいんっ!
怪獣とアルパの間に閃光が広がる!
アルパ機のモニターは、遮光がかかり、保護。
しかし透明な何かに護られているだけの、
怪獣の頭部に乗ったその人間が...
全く予想していなかった閃光に
目を庇っている間にブースターを点火...。
推進剤残量低下のブザーを
ビービー鳴らしながら宙に舞い逃げる。
そして...
「えりゃあ!!」
2が側頭部にハイキックをぶつけ、
ずがぁああん...と派手に倒れ込んだ。
「このやろ!!」
そのまま頭部を踏む...
力をかけるが、砕けそうにない...。
「あぁもう!」
気を取り戻した怪獣に、
再び脚を掴まれる。
ぐぐぐぐぐぐぐ....
機械に負けない程の握力で、
握り折ろうとかかり始めた。
鈍い金属音の悲鳴を上げ始め、折れ...
「る訳無いでしょッ!! リミッター解除!! 増して潰すわよッ!!!」
ふしゅううう...
装甲が爆砕ボルトによって全自動でパージ...
中から大きなヒレが広がる。
おぞましい程の熱量を発し、
怪獣の掌から煙が上がる!!
そして、、、
ばキッ! ギイききききっ!!
怪獣の頭部から酷い音が流れ始めた。
「でえああああああああぁぁぁ!!」
ぐ...パァアんッ!!
踏み潰した。
だが、頭を踏み潰したその脚は融解を始め、
みるみるうちに原形が無くなっていく。
行く所まで行き、遂に耐えられなかったのだ。
「隊長!」
イプシル機が駆け寄る...
まだコクピットに溶けている様子は無い...。
コクピットの付け根...首とでも言おうか、
首を全力で引きちぎって避難させる。
火傷しないよう、冷却材を撒いてから
ハッチを開けるが....。
「隊長の肌がもう
「持ってきた!」
「包帯の量足りるかしら...それでも....! あ、アルパは見ないで!」
「あ、はい! えと、ラムダを連れてきます!」
「有難う」
服を脱がせて、包帯を巻く...やはり足りない。
ラムダ機が到着、ラムダが包帯を追加し、
何とか全身巻切る事ができた。
「イプシル連れて行ける?」
「何とかしてみる...」
「ラムダ!」
「穴空いたですっ!」
「出るよ!」
「はいですっ」
「速度的に既に海に突入してるかもしれない...」
だが迷わず、いや、迷っている暇も無く、
その出口へと飛び入った。
そしてビーコンが起動する...
「ビーコンからの通信来ます、高度1万7000...座標割り出し、モニターに共有します」
「有難うデルタ、後は任せて...、」
前回は一機だった[Ratt-A]が今回は5機。
ケーブルによる送電を始める...。
「最大射程は1000kmくらい...でもレールガンと違って本当に届くよ、僕と、アクセンなら...、射撃、」
カチンッ!
きぃいいぃぃぃいいききききっ!!
カァアアンッ!!!
一条の光が、500km分の大気中分子を、
全て残らずプラズマに挿げ替え......。
0.05秒後に着弾。
余りにも馬鹿げた火力で、
マゴニアのボディを易々と切り裂いていく。
ビーム自体は繋がり、
万物を切り裂く光のワイヤーとなる。
アクセンの首をゆっくり左にずらしていき...
マゴニア後ろ3分の2は引き裂かれた。
8つの音階の様な断末魔を上げて、
マゴニアは落ちた。
海へと沈んで...その任を終えた。
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メカ紹介はこちら
[Och-Sen]&[Ratt-A]
https://kakuyomu.jp/users/notunayo-exe/news/16817330652528468805
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