第9話:インファイト

 五大陸全てに方面軍は居た。

だが、北アメリカは壊滅。

南アメリカも撤退を開始。

オーストラリア軍も創造主側による

不意打ちによる大被害を受け、

撤退を余儀なくされる。

生き延びた者達は日本に帰ろうとするが、

相変わらずの小さな国土に大人数は戻れない。

代わりにユーラシアに送り付けられた。


 No,2率いるユーラシア方面軍所属PD隊、

その内のガンマ機が行方知らずとなった...。


 ユーラシアの未だ変わらない戦況に、

No,2達は帰ってきた。

だが、待っているのは戦闘である...

「みんな配置いいわね?」

「アルパ了解...」

「ラムダ...いけます」

「イプシル大丈夫です」

「デルタ...持ち場に着きましたよ」

「いくわよ!」

もうヒトの居ない筈の高層ビル群...。

それを守る様に、

広範囲に渡って10m級の怪獣が現れている

今まででかなり多い数の投入が確認され、

イプシル少し身震いする。

「飛行型も多数! 注意してください!」

「ラムダは飛んでる奴、いいわね? 私達は対地に集中!」

がしゅうん! がしゅうん! がしゅうん!

走り出して止まる気のない二脚の鋼の竜が、

前線きぼうを上げるために進む。

「にしても、良く耐えてるっすね、ユーラシアは...」

No,5の元オーストラリア軍も後から続く...。

「まぁ僕は悔しいんでここで果たすっすよ...!」

「飛行型の内部熱量増加!」

「1回なら...!」

しゅういいいん!!

イナズマを纏った鋼が頭を消し飛ばす。

貫通して勢いそのままにもう一体も落ちる。

小型故に一撃で止められたが...。

「数が多いよ!」

 デルタは叫ぶ

「全員退避!」

落とせなかった残りから光線が迸る。

機動力が足りない陸戦艇や、

無限軌道を使った重戦車は悉く焼きちぎれる。

が、そんなもの気にせず進み続ける。

「右36つ! 箒兵来ます!」

「ロックできてる!」

ばひゅばひゅるるるるばばば!!

過電流筋裂弾...センスの欠けらも無い名前の

人工筋肉を遂に弾頭にまで流用した兵器。

過電流状態になって縮み切った

粉々の筋繊維を詰め込み、 

通電していない筋繊維が元の大きさに

戻ろうとするのを弾頭の殻で抑え込み、

解放した瞬間に射程内のものに、

針のような人工筋肉達が襲いかかるという物。

文字通りに鋼の雨...いや嵐が

箒兵達の身体を即座に蝕んで行く。

見るも無惨な姿に変貌する頃には、

別の爆弾によって焼き飛んで消えた。

「残存は?」

「今の所0ですが視界には入れておきます」

「ありがとう...二足型多めよ! 皆も相手のオーバーロードには注意して! 後期Ⅱ型はセンサー面も強化されているわ! 相手の熱情報を頭の片隅においておきなさい!」

「はいっ!」「了解です! 」

「光線の予備熱確認....右から二つにレールガンおねがいします!」

「了解!」

しゅいいいいっ!!

ばすすん!!

設置式のレールガンとリンクさせて発射。

一射毎にリンクを戻さないといけないのは

磁場による被害らしい...。

何故、給電ケーブルと合わせて

有線式にしなかったのか....。

...放たれた二つの弾は見事二体を襲い、撃破。

その間に更に近づいた前線チームが、

PENDLo.としての仕事を開始する。

「てぇ──────ッ!!」

2の弾幕に合わせて5の隊や、

アルパ、ラムダ、イプシルが前に出る。

「距離30!」

「構わなくても! 」

アルパが飛んだ。

「点火! 」

後期Ⅱ型に付けられたブースターの炎が、

翼の様に広がったかと思えば、

キィッと集束し......。

土埃を撥ね上げて宙を加速する。

「ぐぅっ!!」

急発生した後ろ向きのGに耐えながら...

がぃん!

怪獣の一体を蹴り飛ばす。

それをブレーキにしミサイルと単砲を発射!

体液が飛び散るが気にせず...

「みんなっ! 」

「威勢いいわよっ!」

急に宙を飛び出した鋼の竜の

生物足らしめない動きに困惑している隙に...

他の部隊もどさくさに紛れて怪獣を平らげながら

都市部に突入する。


「ここからは勝手が違うわよ!」

「デルタ到着しました!」

「よく一人で来れましたね...」

「スナイパー舐めるなよ〜アルパ...。てかあんたも無茶したんじゃないか?」

「へへへ...」

「敵来ます! 箒兵と断定! 数20!」

「分が悪いっすね...、戦車隊とかが来るまでの辛抱っす....」

「そうね....! やってやりましょうよ!」

「接敵まで4,3,1!」

ばしゅるううううう!

ミサイルランチャー持ちが揃いも揃って発射。

ビルはできるだけ攻撃するなとは言われたが

お構い無しに爆炎で叩き潰して行く。

「ここで解散しますけど...できるだけ固まって動きなさい! それと立ち止まるのも最低限に抑えるのよ!」

「了解です! 」

「了解ですっ!」

アルパがデルタ、ラムダがイプシルの僚機、

重量のある武器や機材を背負った2人を

近距離装備の2人がそれぞれ護る形だ。

「GO!」「はい!」」」」

掛け声と共に散開する。


 出会い頭で現れた怪獣を問答無用で蹴り、

流れるように射撃して倒す。

「レールガンパージする...?」

「いや、まだ使えるかもしれない...もう少し邪魔になったら捨てるよ」

「はーい......っと」

また角を曲がった先には...。

行き止まり...しかし

足元には......。

「こいつら...創造主の奴らか?」

「それっぽそうだけど...」

服装を見るに箒兵や、

その他の兵では無さそうだ。

「どうする?」

「自分達は鬼じゃ無い...、見逃しても良いんだが...」

「だが...?」

「ほら見てみな...」

モニターを拡大して見ると...

彼らは木の棒みたいな物を持っている。

「あれがマジカルステッキってとこか、ファンタジーな本通りなのだな...」

「......。」

がごぉお!!

「怪獣がッ!」

飛び掛ってきた怪獣を蹴り飛ばす。

「これって避けたらこの人達死んじゃうよね...。」

「...護る理由ないけどな!」

この距離でレールガンを使うのは、

少しリスクがある。

先ずチャージは間に合わないだろう....。

そしてただ住んでいるだけだった、

この侵略者共を殺す事になるだろう。

アルパの武器も爆破系のが多い...。

「ならばッ!」

デルタ機が怪獣の突進を

フロントハイキックの様に受け、

そのまま頭部を掴みあげる。

「出力ッ!」

レールガン用の発電機を駆動系に回して...。

ぐぱぁんっ!!

そのまま強化された握力で握り潰した。

赤いドロドロした体液が滝のように落ちる。

「過電流がキツいか...?」

「大丈夫...? それと随分積極的になったね」

「まだ動けるさ...」

と、

ばじゅうう!

紫色の光線!

流線型の装甲が何とか防いでくれたが...。

「撃ってきた...。」

「......」

思えばかつてベータを殺したのは歩兵だった。

 .........。

「行くよ! 」

アルパ機が脚でグイッと引っ張り、

デルタ機も追従する。

戦場で情けをかけるのは、

それ相応のリスクが伴う。

それでも、何か信じたい物があった。


「ラムダ、プラズマスピアを展開しておいて! 敵、その角に居ますよ」

「了解ですっ...!」

「3,2,1,今!」

「はいっ!」

予告通り飛び出して来た怪獣に向かって、

一突き....。

その怪獣の首よりスピアの方が幅があり、

断ち切る形となって頭を跳ね飛ばした。

少し転がって止まると、身体も倒れ始め、

ヒョイ、と避けて触れないようにする。

「あとどのくらいでしょうかぁ....」

「えーと、後30分...、いや50分くらい...かな」

「長いですね...」

「でも待つことしか出来ないから...来るまで数を減らし続けましょう」

「了解ですっ」

びぃいいーっ!

「箒兵! 数20! こっちに来ます!」

「爆破武器ないよ!?」

「スピアで何とかしてっ...、私はこの護身用の機銃で...」

「はいっ!」

ビルの横道から多数の箒兵が現れる。

ぱたたたたたたたた!

機銃が火を噴くが、中々当たらない...。

すばしっこい箒兵を捉えるのはかなり難しい。

「ちょこまかと! 堕ちるですっ!」

プラズマスピアを振り回し、

何人かその光の中に消える。

避けた何人かに狙いを定めて機銃を照射。

「落ちてる奴がいますっ」

「ごめんなさい!」

イプシル機が足を上げると、

目一杯振り下ろして潰す。

また抜けた別の箒兵が...

「取りつかれましたっ! この....」

ハッチの辺りにくっ付いた箒兵ごと、

近くの壁に頭を突き刺してそれを取り除く。

「怪獣も....2!」

「えぇっ!?」

「待って!? この熱量は....! 伏せてッ!」

がひゅうっ!

姿勢を一気に落とすと同時に、

その眼前を蒼い光が通り過ぎる。

「なにこれっ?」

「魔法じゃ無さそう...?」

ビルが幾つか、バランスを崩して潰れる。

「一旦退避! えーと...ブースター点火して空に逃げよう!」

「わかった!」

きぃいいッ! ばひゅいう!!

イプシル、ラムダ機が宙へ浮かぶと同時に

再び蒼い光が通り過ぎる。

「もう...、何なのかしら...」

イプシルが独りごちる。

そこに....

ぴぴぴいっ!

通信が届く。

「えっと...補給、増援隊到着。PD隊はポイントBに集結...!」

「来ましたっ!」

「こっちです!」

ばひゅ! ばひゅ!

二機のアストリーチがブースターを吹かし、

目標地点へと飛び立った。


 がっしりとした腕で大地を抑え込み、

下半身の固定部は

蛇のようにだらんと地に吸い付く。

顎のようなパーツをゆっくりと閉じ、

目のような部位が紅く煌めく。

「一体くらいは当たったかな...、」

港の近く...。

ビル群がゴマ粒になるほどの距離から、

そのガタいの良い、機体のパイロットは呟く。

[[機体動作問題ないか?]]

ひんやりとしているが、

生きている事だけは分かるアナウンスが、

そのコクピットに響く。

「問題無い...と思う、」

[[了解...。No,7、私達も行きましょう。]]


ユーラシア内陸部、

創造主軍本部"レヴィアサン"


{バハムート}が本部へと帰ってきた。

〈久々じゃないか?〉〈話したのはついさっきでございますよ?〉〈ふん...、で何かあったか?〉〈どうやら奴ら、ユーラシアにほとんどの勢力を継ぎ入れたようだ...〉〈そうか、〉〈相手にも光線を使う奴が出てきた様だが...〉〈我らの真似事で使い魔の召喚にでも成功したか?〉〈もしそうなら、思っている以上に有能な生物なのかも知れんな......〉〈あの原住民ゴブリン共も、使いようかもしれんぞ?〉〈構わん、そもそも先に我らを奴隷の様に扱おうとしたの紛れもなく原住民共だ....生かす理由も活かす価値も無い、〉〈あぁ、そういえば...〉〈どうした?〉〈面白いモノを見つけてしまった...〉〈勿体ぶるな、〉〈では、これを...〉〈写影石か...〉ぴーん...。〈これは...!〉〈面白い、〉

〈その生かす気も活かす要素も無い、醜い醜い原住民の...、奴らの巣窟を.....〉



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メカ紹介はこちら

[Ost-Rich]後期Ⅱ型(プラズマスピア装備、レールガン装備)

https://kakuyomu.jp/users/notunayo-exe/news/16817330652167801836

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