第8話:ふいうち
オーストラリア大陸東部...。
キャンベラ対創造主軍基地
「隊長! 久々っすよほんと!」
「あんたも隊長なくせに〜...あ、そうだ、みんなこの人が...」
「オーストラリア方面軍PD隊の隊長務めてるる、No,5っす! 5で! よろしく!」
ぱちぱちぱち...
「まぁ、ようこそってことで! 軽く案内するっすよ」
マイクロバスを借りて基地を周る。
高いが横にも広く、相対的に低く見える
建物達の間の大通りを通っていく。
「この辺りが住宅コロニーっす」
一層高い建物へと移り変わっていく。
「ユーラシアの方がでかいんすけどね」
「でも...空が」とデルタ
「青いですね...。」そしてアルパ。
ユーラシアは大気汚染の影響が
大きく出てしまい、高層の方はかなり酷い。
黄砂も一年中絶え間なく、
空のおかしくなった偏西風に乗り、
永遠に空を舞い続ける。
アフリカ戦では、境無き曇天だったが為に、
どうなっているかは分からなかったが...。
透き通った青を見て驚きを感じたのだった。
「これが本来の色なのよ...私も知らない、遠い昔はね...」2は呟く。
ぐるるるるるるるるる......とバスが行く。
「ここが兵器系の整備ドッグとか、格納庫っすね! ここに君たちのPDは運び込まれている筈っす...まぁ先に寮に行きますケド」
基地全体をゆっくり周りきり、寮に到着。
それぞれ荷物を運んで、部屋に入る。
荷物と言っても着替えぐらいだが...。
「ふあぁ...眠いよ」
「ここから直ぐに整備行くんだからまだ眠れないぞアルパ」
「ですよねー」
「ねぇ...ラムダ〜」
「どうしましたか? ガンマ先輩っ」
「なんか必殺技作ろうよ〜」
「いいですね! 必殺技!」
「実戦で使うの? 二人とも」
「多分!」」
自由だな...と笑うイプシルであった。
そうして30分程で寮の外へ、
朝のバスにもう一度乗り込んで整備ドッグへ。
整備ドッグを進んで行くと...。
「お、居た居た...」
ユーラシア隊のアストリーチを見つける。
それぞれ整備を始める。
「てきぱきっすねぇー」
「あんたとは違うわよ〜」
「な! 隊長! そりゃないっすよ! ホントの事言っちゃダメっす」
「メンゴメンゴ〜」
その様子を見てデルタが、
「5さんと隊長は仲がいいね」
「戦友だからですかね〜」とイプシル。
「羨ましいな〜」
「アルパ...何が羨ましいんだ?」
「そりゃ...、なんだろ...。」
があああああああんッ!!!
「なんだ?」
「みんな無事ですか!」
「まだこっちは何もなってないわよ!」
「な、なんでしょう......」
「先輩方っ! か、かかか!」
「落ち着きなさいよ!」
「....怪獣ですっ.....基地内に!」
「はぁ!?」」」」
ギュアアアアアアアアッ!!
咆哮を上げるのは50mサイズの
二足歩行型魔怪獣!
「みんなっ! 乗り込んで! 迎撃するわ!」
No,2は指示を出すが、
「もうやってます!」
優秀な隊員達は、
即座に乗り込み起動させていた。
「爆発物は住宅街に被害が出る可能性があるわ? 極力控えてできる?」
「分かりました! じゃあ郊外まで誘導してみます」
アルパの提案を聞き、
「了解...アルパ! 僕が誰もいない遠くからレールガンで狙撃するよ、それで誘導する!」
「分かった! ...良いですよね? 隊長! 」
「大丈夫よ! 頑張って頂戴!」
「こっちの隊にも伝えておくっす!」
「ありがと5!」
聳える大型怪獣は口を開けると...
「サーモの熱感知が...! なにか来ます!」
イプシルが知らせた刹那に、
きぃぃ......。
ひゅぐっ!!
真っ直ぐに紫の光線がその口から放たれる。
頭を動かすと...。
やすやすと鉄塔を切り裂いた!
きゅくううう......。
収まると、移動を開始した。
「避難指示は?」
「もうできてるっす!」
「手早い!」
がしゅん! がしゅん! がしゅん!
一番近くで、一番早くに
出撃したユーラシア隊のアストリーチが、
アスファルトを凹ませる程に全力疾走。
『地面べっこべこだよ...』
路面清掃員が頭を抱える。
そんな彼の事は露知らず...!
がしゅうん! がしゅうん!
「できるだけ大人しくしててよねッ!」
ガンマ機がジャンプ、
それは30m程までに到達する大ジャンプで、
怪獣の腿の付け根に取り付くと...
「パイルバンカァーッ!」
落ちないようにその杭で脚を固定する。
ガンマはそうして目標の腹を登って行く。
この程度じゃ怯みもしない。
「私もっ!」
ラムダもジャンプをし、同じように取り付く。
「先輩っ!」
「おうよ!」
先行して上の方に居るガンマは単砲の
反対に取り付けさせた、ワイヤーを射出し
ラムダの目の前に垂らす。
「行きますっ!」
それを左脚で掴んで、右脚の固定を外し...。
ぎゅいいいいいいいいっ!!!
ガンマ機が巻き取りを始める。
プラズマスピアの装備のせいで
重量のあるラムダ機を、
そのワイヤーは力強く引っ張り上げ、
「合流ですっ」
「登るぞ!」
「ハイっ!」
「こちらデルタ、持ち場に着いたよ」
「了解! ぶち込みなさいよ!」
ぎゅひぃいん!
頭の側面を抉り飛ばす。
怪獣はそのレールガンの脅威を排除すべく、
デルタの待つ郊外へと歩みを進める。
「よっしゃ! 当たった!」
他のPD兵器達は
怪獣の前を攻撃しながら進む。
ハエの様なそのアストリーチ達を見て、
何か腹が立ったのか...。
ギュエアアアアアア!!!
再びの咆哮。
そして、
「再びビーム来ますよ!」
「させねぇっての!」
どがっ!! ぐぉん!
弾ける甲殻。そして肉。
「行きますっ!!
展開したプラズマスピアは瞬時に白熱し、
薄くなった体表に深々と突き刺す。
ギュエアアアアアアッ!!
首に大穴が空き、怪獣は吼える。
光線は防いだものの、体を大きく揺らされ、
「降りるよ!」「はいっ!」
留まれないと判断し、飛び降りる。
「また来ます!」
「早い!」
「僕がっ!」
チュリィインンッ!!
レールガンが頭部を再び焼く。
そうして戦場は郊外へと移行した。
爆発物の解禁ッ!
「喰らいなさいよ! これでもッ!」
ず、がががががががががん!
2機の砲門が開いたと思えば即座に、
ばひゅばひゅばひゅばひばひばばばばばば!
煙幕の軌跡を引きながら
無数のミサイルが目標に向かう。
着弾するとあまりの物量に、怪獣も怯む。
No,5率いるオーストラリア隊も
持てる火力を持って迎撃を行う。
「うちの隊にもレールガン欲しいっすねぇ」
呟きは爆音にかき消されつ、
AMSDPCが突き刺さっては爆発。
ミサイルがぶつかっては爆発。
ほぼ永続的に爆炎が怪獣の巨体を覆い尽くす。
「熱反応....! 第三射の可能性!」
「チャージは出来てる! 阻止します!」
ギュシュリイイイン!!
加速された鉄塊が残った頭部を喰い千切る。
50mから48.2mになった巨体は、
ゆっくりとした周期でふらつき始める。
その時だった。
藤色の閃光が、半径1.3kmを包み込んだのは。
はっとして2は目を覚ます。
モニターは砂嵐の様に
ジラジラとして何も見えない。
ジーンと痛む頭を抑えながら
コマンドを入れハッチを開く。
「............ッ!」
手が物理的に焼ける!
目の前の只の暑いだけだった荒野は、
燃える様な熱波の地獄に変わっていた。
自身の機体のボディは真っ黒だ。
どうやら、熱を帯びた装甲に触ってしまい、
火傷してしまったようだ。
非常時用の飲料水のボトルと、
ガーゼを椅子の下から引っ張り出し、
それを濡らすと焼けた左手に巻いた。
「つ〜......」
ハッチを解放したまま歩けるように、
セーフティを解除して進めるか試す。
がしゅうぅぅぅ...。
ゆっくり立ち上がると、
眼前の地獄は本性を現す。
悲鳴や、焦げた人型の物が、乱雑に広がり、
ポツンぽつんと他の真っ黒なPD達が目に入る。
炎を上げる大地をゆっくりと進んでいった。
サンダーバード上空
創造主軍弩級飛空船{バハムート}
〈ポルタフォルトゥーナはどうだ〉〈絶大な戦果を、これからも我が軍にもたらせることができるでありましょう。〉〈そうか、〉〈バニップで、
どれみふぁそらしど...。
音階を奏でながらその船はゆっくり降下した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます