第5話 : スパーク

 2222年1月21日

インド洋遠征により

少し限りの希望を見出すことが出来た。

奇跡にも見えた。

PENDLo.隊の面々はそれぞれ

別の隊の隊長として

それぞれひとつの大陸を任された。


 ユーラシア大陸にて

「え〜どうも...ユーラシア方面隊隊長のNo,2です。五大陸それぞれの拠点奪取作戦にて行動指揮を取りました!これからよろしくお願いするわ...!」

ぱちぱちぱちぱち...。


 ちなみに全ての部隊(歩兵戦、戦艦等、ペンドゥロ含む)隊員は

人造人間達が主体となっている。

そうじゃない人間は基本的に、

狭い日本で働いている。

いや、ぬくぬくしているの方があっているか?

未だに日本を創造主から隠し通している。

それはこの世界において唯一の安全地帯。

つまるところ炬燵こたつなのだ。


 ユーラシア方面隊への隊長着任から、

それは丁度五日程が経った。


「今回の戦闘訓練は砂漠戦から市街戦をイメージしたモノとなるの...! 足場が悪い砂漠はかなり厄介になるわ。市街戦は特に出会い頭での怪獣との遭遇でどれだけ対処できるかが大切よ? あ、そうそう大まかな内容は怪獣の形をした風船にペイント弾を当てるだけ。いいわね? ではそれぞれ自身のPDに乗って待機!」

沈黙、そして

「スタートっ!」

がっしゅうん!


 訓練が終わり、No,2は隊長室にて

ふぅ...とため息をつく。

実戦がいつ来るのか分からないが、

緊張感は収まらない。

隊長職についてから長くはなるのだが...

責任感も減りさえしない。

こんこん...。

ドアを叩く音

「どうぞ!」

「あ...アルパであります。今回のレポートをお願いし...ます。」

「はいはい、ご苦労さん...」

ぺら......と6人分のレポートを

1枚1枚見ていく。

「特に問題なし...っと、はい返していいよ!」

「ありがとうございま...した!」

受け取るってアルパは

そそくさと部屋から出て行った。

彼、アルパのような、

セカンドロット人造人間からすれば、

ファーストロットであるNo,2は

10歳上のお姉さんって感じだ。

初な姿には少し微笑ましく思う。

しかし、適正が強いとは言え、

彼らの様な身も心も若い人々を

戦場に出して引いては失ってしまうのは...

いつまで経っても辛いものであると感じる。


ユーラシア方面ペンドゥロ隊のメンバーは

隊長にNo,2、

そして先程のアルパ、無口少年のベータ、

八重歯が特徴的な少女ガンマ、

自信が少ない少年デルタ、

お淑やかな少女イプシル。


 主力量産機であるアストリーチは

それぞれの隊の隊員数と

同じ数の生産となっている。

No,2は今までと同じ先行量産型(前期型)

その部下隊員には基本量産型である

後期型が宛てがわれている。


 明くる日、2は全員を呼び出した。

「今回呼び出した理由は分かるかな?」

「やらかしましたか?」

アルパがシンプルに答える。

「違います...明日、実戦が始まります。」

「お、実戦ですか? ...待ってた....」

「そこ、私語は慎みなさい」

「はいっ! すみません」

ビシッとガンマが背筋を伸ばす。

「早めに言って置くと、戦場で死ぬ理由は油断と偶然よ...油断すればやはり死にます。気を引き締めても偶然的に死んでしまう事も有るわ、でもね...私達はここに帰って来なければなりません。何故なら...その為に産まれたからです。補充が効く...、それが人造人間だけど...いや、補充をださせるものですかって! 見くびられているという事を...生き延びて! ひっくり返しましょう!」

激励の言葉の後に、

ぱちぱちと拍手が続く...。

「という訳で今日は機体の整備、武器の調整...そして寝る。というのが任務よ。以上!」

「はっ!」」」」」


 各々がそれぞれの準備を整える。

2はいつも通り

マルチミサイルポッドの弾種を考える。

「うーん...、露払い用の広域用...となんだ? クラスターも入れておくか...。」

クラスター弾頭は様々な条約で

悉く禁止されてきた。

しかし、クローン技術の応用の人造人間等、

既に散々やらかしている上咎める者もいない

まぁ、昔に記したと思うが...。

そもそも敵をヒトとして見ていないのも...

その理由にあるにはあるのだ。

さて、それぞれの装備は

アルパがAMSDPCの使える二連砲の装備、

ベータはショックアンカーを二基。

続くガンマは連装機銃を4本。

デルタはレールガンと発電ユニット。

イプシルはミサイルポッドに単砲。

思い思いで活躍できると考える装備を

一人一人のアストリーチに着付きつける。

コレが闘う上で最も長い時間なのだ。


 そして時が来た。

砂漠越え作戦。

ペンドゥロ隊は勿論No,2が直接指揮を執る

陸続きでの攻略戦となる為、

今回はヘリコや飛空挺などの

大掛かりなヴィークルでの

乗り上げ等は行わない。

戦車隊や陸上戦艦を先行させ、

後ろから脚で追いかける。

[[怪獣の投入を確認した。対策指揮等はそちらに任せる。]]

アナウンスだがカラでは無い。

あの無機質な生きた声を少し懐かしがりながら

No,2は叫ぶ。

「作戦開始!」

今回の怪獣は、四足歩行タイプ...。

腕っぷしが強いんだよなぁ...。

「ベータとガンマは目標の腕の同行に注意しつつ攻撃、アルパとイプシルは中距離からAMSDPCをかましてちょうだい!デルタは後方でレールガンのチャージ。一撃で頼むわよ?」

私は先ず...!

「ミサイルランチャーマルチロック!」

映し出されたアンダーソナーの敵情報に

ピピピピピッ!とロックがかかっていく。

「撃つ!」

ばひゅるるぅぅぅぅ!!!

一面に爆炎が広がるが、

アストリーチのモニターは

光学遮光機能で抑えられる。

「次! クラスター!」

切り替え入力を入れ間髪入れずに発射!

親爆弾から小さい子爆弾が巻かれ、

再び辺りは爆炎に沈む。

その爆炎から揺らりと出るのは30m級怪獣。

「いつもよりでかいじゃない!」

No,2は思った事を口にする。

近接組を庇うように2機のアストリーチ、

アルパ機とイプシル機が進む。

「AMSDPC撃ちます!」

アルパ機が2連装砲を前足に射撃。

ずがぁあん! 

ぐわうっ! 

ごぉおおおん!!

内部から弾き飛ばすAMSDPCの非道な一撃が

巨大な魔怪獣を襲う。

すかさず同じ部位にイプシルが

多数のミサイルをマニュアル標準で叩き込む。

怯んだのが見えた。

同時に後ろから飛び出したのは、

近接組のベータとガンマ。

ベータはショックアンカー2基を

怪獣の頭部に突き刺しジャンプ。

伸ばしたベータ機の脚を

ガンマは脚で掴みそのまま引っ張られ、

最短で頭部上空に辿り着く。

「点火!」

ベータ機からガンマ機が離れるのを確認し、

ベータはショックアンカーに電撃を流す。

甲殻が雷撃の任せるままに弾け...。

「こんにゃろ─────ッ!!」

ガンマの高音の叫びを乗せて、

ずががががががが!!!

総4門の連想機銃が火を噴く。

超近距離で放たれた。

80mmの鋼の雨が怪獣に降り注ぎ、

グエァアアッ! と悲鳴を上げる。

しかし怪獣は構え直し、

力を貯めたと思った次の瞬間。

全身の尖った甲殻が一斉に放射された。

近くに浮いていたベータ機とガンマ機は、

もろに当たる結果となり、そのまま墜落する。

「ベータッ! ガンマもッ!」

イプシルが声を上げる。

発射されたはず鋭利な甲殻は

もう既に回復している...!

また怪獣は力を貯め始める。

二射目.....!

が放たれるよりも早く、

プラズマ化した金属が怪獣の頭を貫く!

グギャアアアア!!

「間に合った....!」

デルタがほっと息をつく。

「とどめ任せるぜ!」

そしてデルタが言うタイミングで

ベータ機からアンカーが射出されるのが

アルパやNo,2から確認できた。

イプシルは堕ちてくるガンマ機を

身体で受け止める。

ベータ機の射出したアンカーは

怪獣の首元に深々と刺さり、

「堕ちろ!」

電撃を加えながら巻きとる。

まるで稲妻を纏ったキックのようなかたちで

高質量のアストリーチが首元にぶち当たり、

怪獣は衝撃で大きく仰け反る。

ベータ機はさらにコマンド入力。

脚に仕込まれたパイルバンカーをねじ込み、

一先ずの終止符を打つ。


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