第4話 : リベンジ

 隊浴場の更衣室。

じゃばあぁあああぁぁ...。

防護服を脱いだ瞬間に

溜まりに溜まった汗が

滝の様に落ちる。

「あらら、隊長びしょびしょじゃない!」

くすくすとそれを見て笑うのはNo,6

「耐熱なのにこんな暑いなんてぇ...」

現隊長No,2は

まるで着衣水泳の後の様になり、

肌にべっとり引っ付く服を

剥がすように脱ぐ。

床拭かなきゃなぁ...とため息をつく。

6が気を利かせてバスタオルを渡し、

リレー式で拭き取る。

「あれ...」

「どうしました?」

「お風呂上がったらまたこれで体拭かないと行けないじゃん」

「あっ...」

更衣室ながらも彼女らの笑い声はこだました。


 -第壱ケージ{大徳タイトク}-


 何人かの人間が作業を行う。

その中にはカラの姿もあった。


「人工筋肉の通電量に少しリミッターをかけて頂きたい。」

『リミッターですか? あぁ、勿論やっておきましたよ』

「助かります。」

『一応任意でリミッターは外せる様にと、装甲を放熱版として使える様にする予定です。個人個人に残りの設定は任せてやってください』

「了解です。」

 カラが見上げる先には......。

「[Ost-Rich]...。その先行量産モデル...。」

試作型と対して変わらない体躯に、

骨じみた白に塗装された頭、

そして同じ色の鋭利な装甲。

背部のウェポンユニットは

上に載せる形となった。

リグーシカには無かったが、

背部装甲にはブースターが仕込まれている。

『性能面は問題無い、怪獣共に通用してみせますよ』

「後はパイロット次第。」

『お宅らのパイロットはみんな優秀ですから、きっと戦果を上げてくれましょう!」

「伝えておきます。」


 格納庫と機体数の釣り合い的に

一つの格納庫で3機ずつの整備。

パイロット達は完成した各アストリーチの

カスタムやシステムの確認。

そして、グラウンドでのテスト。及び調整。

全5機の鋼の怪物が、

がしゅうん! がしゅうん! と

障害物を置いたグラウンドを周回するのは

どこかシュールに見えた。

小さな山を越え、実弾頭で射撃訓練。

ペイント弾でのエキシビションをこなした。


「くぅ〜疲れたっすよ!」

「まぁ...おつかれさんだ」

No,3とNo,5が並んで格納庫に向けて歩く。

「みんな! 知っての通り明日、初陣です。備えて整備を行い、ゆっくり休むように!」

「了解!」「うーす」

「了解です」「了解、」


 -インド洋上空-

 大型飛空挺が二機、大海原を渡っていた。

陸地が見えてくる。

「みんないい? 手筈通り!」

「大丈夫だ」

「前に同じっすー」

[[残り50秒で、飛空挺隊は着水。更に120秒で着岸。作戦を開始する。]]

そこにアナウンスが流れる。

いつも通りの無機質な声。

「うぅ...緊張するなぁ...」

「大丈夫よ! みんなで守りあって進んで行くのよ! 誰も死なないわよ」

死なせなんてしない....!

[[着水します。各員衝撃に備えよ]]

がかあああああん!

ここから飛空挺は先行艦を盾に

ゆっくりと進んでいく。

空挺作戦をとらなかったのは

前回と違いをつけ、対策の不意を狙う為だ。

そして、インド洋から攻める理由は、

拠点である日本の位置を

相手側に悟られない様にする為だ。


30秒...。


15秒...。

5、4、3、2、1...。

[[作戦開始。]]

ごがぁああああああんんん!!!

着岸と同時に、ゲートが開く。

ゲートはそのまま渡す為の橋となった。

3機と2機が、飛空挺からそれぞれ上陸。

[[健闘を祈る。]]

「「「「了解」!」っす」です!」、」


 乗機はそれぞれ

ミサイルランチャー装備の2番機にNo,2。

次いでアンカーと単砲装備の3番機にNo,3。

5番機は単砲とミサイルポッドでNo,5。

No,6は機銃とプラズマスピアー装備の6番機。

最後に長距離砲装備のNo,7が駆る7番機。

いや、更に一機。

[Lyagushka]も現れる。

背中には大型アンテナとキャリアーユニット。

それに乗っているのは、

何を隠そうカラだった。

一応操縦くらいならできる。

今作戦では、一部都市、

しくは町を奪還し、第2拠点を得る、

それが目標だ。

故に、情報統制を図るため

カラ本人が中継・補給役として出撃している。

「健闘を祈るのはカラさんのほうっすかね」

[[無礼なめるな。元は同じ戦闘部隊のだ。]]

「そりゃ意外だな」

「ほら! お喋りしない! 集中!」

「うーっす」「りょーかい」


 敵のほうき部隊が見える。

蝿を落とすように容易く

ミサイルランチャーで吹き飛ばす。

小回りの効く箒軍団は、

機動力と同時に魔法による熱線での

攻撃力を備え持つ。

ペンドゥロからすれば怪獣よりも、

こちらの方がタチが悪い。

何せ、相手の魔力の出力が強いと、

防ぐ手段が無いのだから。

だがひ弱な生物だ。

落とすだけなら歩兵でもできる。

箒はこちら側の歩兵や戦車。

敵の獣戦車にはヴィークル隊を当て、

確実に怪獣を撃破するのが

彼らペンドゥロ隊の使命。

「お出ましだな!」

魔怪獣が投入される。

即座に再びNo,2は露払いを始める。

「マルチロック開始アンダーソナーから...、これは...クラスターに切りかえ、再修正。撃ちます!」

ばひゅばひゅばふばばばばばばばば!!!

空中で破裂すると熱と爆発の雨が降る。

死体を踏み飛ばし、3、5、6が前に出る。

クラスター弾を物ともしなかった怪獣、

その怪獣のサイズは15mレベル。

一体とは言え二倍以上の差がある。

アンカーをかけるのは3番機。

走り出すとジャンプ。

ブースターで加速し、怪獣を軸に公転する。

距離が近づいたタイミングで

背中に脚でしがみつく。

AMSDPCのゼロ距離射撃!

深くくい込み、内部から爆発を起こす。

が、怪獣は暴れだす。

「チィっ! 次! 頼む!」

アンカーをパージし着地、一旦距離を取る。

「やってみるっすよ!」

No,5のリカバリー射撃。

目を重点的に狙う。

怯んだところで、

「射撃、」

ずがくううううくぅううん!!!

質量エネルギーの暴力で怪獣は衝撃で倒れる。

後方からの狙撃。No,7の400mm徹甲弾。

「念の為....!」

6は、プラズマスピアを展開、

頭部に深く突き刺し、

二連装機銃でトドメを刺す。

怪獣が沈黙すると同時に

途端に戦場は静かになった。


がしゅうん、がしゅうん...。

リグーシカが後ろから出てくる。

[[敵、撤退を開始。都市制圧は別の隊に任せる。ミッション終了。お疲れ様です。]]


青い空に白い雲が写るのとは対照的に、

白いはずのアストリーチの足は

踏み締めた死体で紅く染まっていた。



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メカ紹介はこちら

[Ost-Rich]

https://kakuyomu.jp/users/notunayo-exe/news/16817330651004876925

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