第3話 : オーバーヒート
リグーシカ隊の帰還から1週間が経つ。
シュミレーターを使った訓練に
明け暮れる日々が、突如...。
「No,2、少し。」
カラに声をかけられる。
上からの少しはそっとで終わらない...
いつもそういうものだ。
「了解」
~第六ケージ{
滅多に来ない、
というか使っていなかった
格納庫のひとつ...。
現時点で使っていないのは
6~12、そして4。
第四ケージは[Lyagushka]の4号機が
パンプアップ事故を起こしてから
全くと言って使用していない。
12の格納庫にはそれぞれ
古代日本のとある文化...から取ったらしい
12個の冠位と対応する色を与えている。
第六ケージは小礼、そして橙色。
さて、なんだったか...。
そうだ、第六ケージに着いたのだ。
「No,2、これが...。」
「これは...!?」
スカスカな鳥の頭のような
椅子の見える黒金のコクピット、
そしてこれ又剥き出しの人口筋肉。
「新型ペンドゥロ、[Ost-Rich]...。その試作機。」
「早いわね....。」
「構想は初期からあったので、後は人口筋肉次第だったのだが...」
見てみれば、リグーシカの時より
随分とスラリとしている。
「[Lyagushka]より大柄だが、本体重量は二分の一程までに軽く、その上で強度はそのままとなっている。」
「へぇ...」
これで闘うの?
素朴な疑問。
今あるのは2機のリグーシカと
これだけだろう。
戦場でパンプアップしたら...。
「この子も...戦場に?」
「いえ、[Lyagushka]とは違った、試作の為の試作機です。戦場では無く、ここでのテスト運用だ。」
「あぁ...はい!」
はやとちりか...。
責任に未だ順応出来ないNo,2。
「それで...テストを?」
「そう、隊の前でこれを動かせ。」
「やってみます...!」
「では明日の朝、ここで」
フリースペースに戻って来る。
「どうだったんだ隊長?」
最初に声をかけてきたのはNo,3
「試作機のテストについてです。明日の朝皆でグラウンドに集合とです」
「了解、んで、もう乗ったのか?」
「いや、まだだけど...」
「まぁ頑張れ、それと、肩の力抜けよ?じゃあな...」
「じゃあね...」
ほかのメンバーにも朝の集合の事を伝え、
寮に帰った。
男子寮へ通じる道で
何人かが話ながらの帰宅...
彼らのナンバーは3、5、7
「なぁ、2って...」
話の起点はNo,5
「隊長な?」
訂正を入れるのはNo,3
「ごめんごめん!」
「で? 恋バナか?」
「っ!? ちがうっすよ!張り切りすぎじゃないかってことっす」
「まぁそうだな...」
「自分のせいで感出してるけど、俺たちも死ぬ気無いんだから............死んだところで補給は入るし」
「下を護るのが年長者の務めだ、そして、其れを支えるのが下の務めだ。自分達でできる事をして行けばいいんだ」
No,5はやれる事、と考えた...。
「心配かけなきゃいいか」
「まぁそうだな」
「明日って、何時集合でしょうか?」
疑問を呈したのはNo,7。
.........。
そういえば.........。
「今日は早く寝ようか」
「うっ...、そすね......」
「了解、」
女子寮、No,2と同室のNo,6は聞く
「明日の集合時間って伝えた?」
「...、あっ......。」
「隊長ったら〜」
くすくすと6は笑う、
えへへと2は頭を搔く。
女子寮とは言ったが、
ペンドゥロ隊には現時点で女子は
No,2とNo,6の二人だけだ。
1から3は前期に生産され、
それ以降は後期に産み出された。
ナンバーは産まれた順にだ。
人造人間達は、1週間の培養液漬けと
2週間で、肉体及び精神年齢は
16歳レベルにはなる。
身体年齢は16から18の間に留まり続ける、
一見不老不死に見えるが、
30年もすれば反動で大地へ還る...。
いや、還る事など出来ないのかもしれない
ヒトに都合よく使われる、エルフ達。
だがそれに臆することもなく彼らは寝た。
朝焼け前に目覚めた2は
こっそり支度に入るが、
うっかり6を起こしてしまった。
「あっ...おはよう!」
「ふふっ、おはよう」
そして
日が昇り、世界は明るく照らされる。
海に沈み、そこから突き出た
東京のビル群に雪が積もる。
そこから崩れた雪々が朝焼けに融け煌めく。
同時刻、試験は始まった。
様々な障害物で溢れたグラウンドに
ペンドゥロ隊の一同が集まる。
「1,2,3,4,5...全員着いたか?」
カラの前に横一列に並ぶ。
「着きました」
3が返事をする。
ぐおおおおおおおおお...。
大型クレーンに
吊られた状態で運ばれてくるのは
しゃがんだ何か、
いや、皆分かっている。
「No,2、搭乗。」
「搭乗...!」
骨組みだけのコクピットに
車のドアで作った何か。仮の装甲か。
背中にはドアの無い廃車が
生贄の様に括り付けられている。
防護服の上にヘルメット、
耳に小型インカムギアを付けた2は、
丸見えのコクピットに乗り込むと...
カラが先行して、
「起動シークエンス開始。」
「了解、起動シークエンス、開始!ジェネレーター起動。」
かたっ、カチッ...ピー。
「第二シーケンス移行。」
「了解、第二シークケンス開始。」
「順次、進め。」
「了解、人工筋肉の光速通信を繋げ、電力供給をジェネレーターから送電、及び初期人工筋肉通電量を50に設定、同時に5軸ジャイロ設定を零点補正。相対保護装置起動。脚部エラー無し、保護装置エラー無し。全情報確認、オールクリア。PENDLo.Code.........えーと、......あっ! [Ost-Rich]試作型、起動!」
「締まらねぇな」
3達は笑う。
ひゅぅるるるぅぉおおおおお......!!!
発電機と通電により、
金属が浮いた上で擦れる様な音。
直ぐに吊っているカーボンワイヤが
煙を上げ始めた。
「とんでもない熱量......。防護服はこの為っすか...?」
5は驚く。
リグーシカは幌で防げる程度だったが、
今回はそれどころじゃ無さそうだ。
この発熱量は4号機以来......いや!
「想定より発熱量が大きい...。」
聞いて5は、
「それってつまり....」
防護服越しに少し熱が伝わる...
汗だくで今にも溺れそうだ...。
「やらなきゃ...!」
2は尚も機体の微調整を行う。
「私が...! 動かして! みんなを...!」
カラは何か異変に気づく。
「排熱版が開かない...。」
脚部の車のドアに残されていた
プラスチックが溶けて独特の臭いが漂う。
その排熱版はドアに仕込まれているが...
その動くべき金具が
溶けたプラスチックでくっついている!
「それって
6が頼みながら奪い取ると、
「マシンを止めて! 隊長! 聞こえる?」
返事は無い。
「磁場で通信が出来ないか...。」
巨体を吊り上げていたワイヤが
1本ずつ耐えかねてちぎれ始める。
「みんな...を、引っ張って...!!」
「隊長!」
ヅガァン!
銃声。
突如、車のドアの側面が吹き飛び、
中から伝導質の金属布が、
伸びたフレームと共に、
ヒレの様に大きく広がる。
そうすると...
しぅぅううぅぅぅ......。
少しずつ筋肉の熱が収まり始める。
「行くのよ──────ッ...!!!」
ひゅおぉぉぉ...!!
がしゅぅううん!!!!!
たった今、
一歩、踏み出した。
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メカ紹介はこちら
[Ost-Rich](アストリーチ)試作型試験用装備No,2仕様
https://kakuyomu.jp/users/notunayo-exe/news/16817330650877815976
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