第2話 : フリーフォール

 海を越えて...

日本から飛び立った三機の超大型ヘリ。

下部にはコンテナが小判鮫の様に引っ付き、

その巨大さからは想像も出来ない様な

新幹線並のスピードで進んでいた。

大陸に近づいて来ると、

先行していた艦船と合流、そのまま止まらず

ヘリコプターが領空内に入ると同時に、

艦船から砲撃や戦闘機が発進する。


迎え撃ちにほうきに股がった人間や、

魔怪獣、獣戦車等が現れる。


[[コンテナ開きます。]]

無機質だが生きている声によって

アナウンスがかかる。


ヘリの輸送用弩級コンテナが展開!

中から一機ずつ露わになったのは...


[[健闘を祈ります。Entry start。]]


 二脚歩行型の対怪獣用技術怪獣...。

PEculiar-Next-Defiance-Locomotor...

その頭文字イニシャルと一部を取って

[[PENDLo.]]

直訳すれば、

{奇妙な、次世代へ挑戦する自立機}

次世代の奇妙な

挑戦は振り子のように

揺れて定まらず...

そういうヒトという物の存在を

暗示したかのような名を授かったそれは、

解放と共に降下を開始した。

そのメカ、ペンドゥロの名は[Lyagushka]。


 高度が近くなると第二バックユニットの

パラシュートパックを起動。

6mのサイズと重量に見合った

これまた巨大なパラシュートだ。

当然狙ってくる。

魔法による迎撃射撃で穴が空いてしまうが、

減速と高度が十分だったため、

そのままパージ、高さ60mから一気に落下。

残ったパラシュートパックに接続された、

減速用ブースターでさらに速度を落とし...

どごぉおん!

盛大な音を立てて着地する。

踏まれた大地は陥没する

もしもう少し緩い地盤だったら

大変な事になっていたが、リサーチ済みだ。

続いて2号機、3号機も着地に成功。

敵歩兵は先に進んだ戦車等が

露払いをしてくれた。

今回のミッションは

魔怪獣を実際に倒せるのか?

歩兵との戦闘はできる限りける。

だがおかげさまで突破してくるのは

ある程度のサイズの怪獣だけだ。


 今回の[Lyagushka]の装備はそれぞれ、

1号機は12連装多段ミサイルポッドと

試験導入のAMSDPC弾頭用2連砲。

2号機はミサイルポッドを2つ、

3号機はショックアンカーと

取り回しの良い機関砲を二門。

先ず2号機が相対する怪獣に向け

無数のミサイルポッドを放つ。

怪獣の中でも雑魚レベルはこれで倒し、

ただでさえ泥臭い仕事の環境を整える。

と、10m級が飛び出して来た。

平地で広い戦場な為、物陰なんてものは無い。

1号機と3号機が大きく前へ出る。

AMSDPC、対魔獣・怪獣用特殊貫通爆雷弾

という安直でそのまんまな名前を

ただなんの捻りもなく英語にし、

頭文字イニシャル取っただけの弾頭。

1号機のその射撃!

少し逸れ、肩部に入ったが

深々と突き刺さり、全自動フルオートで爆破!

怪獣の左腕が吹き飛ぶ。

その間3号機は別の怪獣、

こちらも10m級、にショックアンカーを射出。

命中後トリガーを引き、

猛電撃がワイヤ伝いに直撃する。

特大火花が弾けるとそこを中心に、

怪獣の鱗がジグザグの弾け散るのが見える。

3号機がアンカーで拘束しようとする一方、

1号機はミサイルポッドを斉射、

爆炎と爆煙で視界を奪うと、

ほぼ決め撃ちでもう一度AMSDPCを発射。

今度は頭部を爆発の

勢いのままに吹き飛ばした!

煙で強い規制がかかり、

その惨状は目にする事は無いが...。


10m級を一機ずつそれぞれで倒す。

今回のターゲットはクリア。

撤退命令が発令するが...。


1号機の動きが止まる。

左脚が深く沈んでいる、

泥濘に脚を呑まれてしまった様だ。

見逃さず魔法光線の雨が襲う...。

蜂の巣にされ、主は炭となってしまった

そのペンドゥロAIは全自動で自爆。

電力供給システムを爆破し、

電力が突如無くなってしまった人工筋肉は

急激に引き縮み、粉々に砕け散った。

それはもう、脆い岩肌が崩れる様に...。

1号機は還ったパイロットの後を追った。


振り返る事も出来ずに、

残りの二機は戦場を離れた。


長い目で見れば多大な戦果を記した

実戦データを科学者達は解析し、

新型の開発に移った。


「No,1は戦死した。」

3号機パイロットは仲間に伝える、

込み上げて来るものを、

ヒトが産み出したモノ達は、

はっきりと感じた。

彼らは闘う為に産まれた人造人間。

しかし、自我も感情も与えられた人間。

ただの兵器では無いのだ。

そこに......

「3と2、実戦、お疲れ様でした」

無機質な声で話しかけてくるのは、

部隊マネージャーのカラ、

そのままのトーンで

これからの行動を伝言する。

因み彼女は人造人間では無いが

彼らより感情に乏しい。

「他の隊員は引き続き、訓練を怠らないよう」

そう言って彼女は歩いていった。

はっ!...と芸術の様に乱れぬ動きで敬礼。

「No,2が隊長かな?」

切り出したのはNo,5

「そう、なりますね...。私、頑張ります...。」

彼女は少し責任を感じていた。

先ず、繰り上げにより、隊長となった事、

そして、助けられなかった事。

実際彼女の2号機が最もフリーだった、

フォローに回れたはずなのに...。

「気に病むな、隊長?」

大柄なNo,3が背中を叩く。

「............、はい...!」

生き延びる為に彼女は決心した。



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メカ紹介はこちら

[Lyagushka]

https://kakuyomu.jp/users/notunayo-exe/news/16817330650750891219









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