第3話 霜降の推理(2)
「自殺した死体を偽装した? なんで俺がそんな事をしなくちゃならないんだ」
「あなたが被害者たちと親しい存在だからです」
「なにを根拠に──」
「先日から亡くなった被害者の女性は、恋人からプロポーズをされて幸せの絶頂でした。SNSに残された写真には仲睦まじい二人と、ガラスに映った撮影者の姿が残されていました」
「顔にモザイクがかかっていたはずだが──」
「私には関係ありません。手首で分かります!」
「て、手首?」
「そしてこの場で亡くなっている男性の死体の鎖骨は、婚約者の彼と同じです」
「さ、鎖骨?」
「つまり、貴方はカマイタチの被害者たちと知り合いだという訳です」
「……探偵って、皆あんたみたいなのか?」
「私はランキング六十二位です」
「俺たち大学が一緒でさ、卒業してからも三人でよく会ってたんだ。結婚式のスピーチ頼まれてたんだ……泣かせやるつもりだった……」
「彼女を失い、婚約者はどうなりましたか」
「守ってやれなかった俺が悪いと言っては壁に頭を打ちつけ、何度も首を吊ろうとした。心配でずっと付き添っていたんだ。けど、早朝うたた寝してる内に家を出て──」
「公園で手首を切って亡くなっていた」
「なんでなんだよ、何も悪いことなんかしてない。やっと奨学金を返し終わったから結婚するんだって、つつましく生きてきた二人が、なんでこんな目に遭うんだ!」
握った拳が震えている。
霜降には見えないが、唇は噛み続けて変色していた。
「犯行声明を残すようなヤツだ。ニセモノが現れたらムカついて出てくると思ったんだが、野次馬が多すぎて分からねえ!」
「居ましたよ。捕まえるのを手伝います」
霜降は手錠を外し、今度は自分にかける。
戸惑う眼前の男の、目の当たりに狙いを定めて、笑ってみせた。
そして作戦の内容を告げる。
「なんで、アンタがそんな危ない目に」
「私にも大切な人がいます。あの子を理不尽に奪われたら、きっと同じ事をします」
瞼に浮かぶ皐月の姿。
失敗したら、もう会えない。
「最高の名演技を、見せてください」
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