遠藤正明⑦
「キャーー!」
病院に受付に到着するなり看護師から悲鳴を上げる
息を切らしてる俺の顔を見たら当然か
遠藤「あっ失礼
井上様を探してるのですが」
井上「遠藤さん?」
遠藤「井上さん
怪我は大丈夫なんですか?
事故にあったと聞きましたけど」
井上「え?」
彼女はキョトンとした顔でこちらを見てる
井上「ああ違うんですよ
今日は両親と来たんですけど急に気分が悪くなったみたいで救急車を呼んだ私が立ち会ったんです
幸いなんとも無かったみたいですけど」
遠藤「そうか良かった」
井上「!」
遠藤「?
どうしたんです?
やっぱり何かあったんじゃ」
井上「いえ、その
…
うふふっ
…
今のお顔も素敵ですよ」
?…
…
…
!…
俺は恐る恐る顔に手を近づけた
もう慣れてたはずの体毛が消えていた
放置された髭と髪だけを残して
それどころか牙や角も綺麗になくなり元の人間に戻っていた
同時に今まで感じたことの無い程の恥ずかしさが溢れてきた
遠藤「うわぁーー!
やめろーー!
見るなーー!」
思わず顔を覆い身を屈めてしまう
顔が耳の先まで赤くなっているのが見なくても分かる
パチパチパチ
Fooo!!
ヒュウヒュー
イェーイ!!
医師と看護師も含め待合室にいるみんながはやし立てている
周囲はもちろん
彼女に俺の内に芽生えた愛を秘める事は許されなかった
病院内じゃ静かにするんじゃ無いのかよ!
遠藤「井上さん、あの」
井上「あの日」
遠藤「…」
井上「初めてディスティニーランドに来た日
実は落ち込んでたんです
仕事で失敗しちゃって
誘ってくれた友達も来れなくなって
チケットを無駄にするくらいならって半分ヤケだったんです
どうせ子供だましで大した事ないって
でもディスティニーランドの職員は皆真摯に仕事に向き合っていてお客も純粋に楽しんで
遠藤さんのダンスからも優しさが伝わったんです
本当に魔法はあるんだって元気を貰えたんです
だから」
遠藤「ちょっと待ってください
仮にも俺は運命の国で働いてるんですよ
俺から先に気持ちを伝えさせてください
…
好きです
付き合ってください」
井上「はい」
ヒュウヒュー
イェーイ!!
「うっうん!」
再び歓声が上がったが突然響いた低い咳払いに皆思わず沈黙する
そこには見るからに面白く思ってない男性と優しく微笑む女性がいた
井上「お父さん」
!…
それを聞いた途端皆何も無かったかのように元の場所に戻って行った
遠藤「あの、はじめまして」
彼女の両親に思わぬ形で挨拶する事になった
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