第18話 対隠団体
試験は順調に進んだ。
途中霊力を込めろという指示があった時はさすがに焦ったが、悟のアドバイスのおかげでうまく込めることができたと思う。
……サインの円の部分が歪んでしまったが。
曰く、手のひらに意識を集中させて丸い球を作るようにすればやりやすいらしい。
彼は実はすごいやつなのではないかと思う。
そうして順調に最終問題へと差し掛かった時、ほかの受験生たちが最初の広間に集まっているのが目に入った。
「え、もう終わったのかな?」
「どうだろうな。最初の指示に従った奴らはまだやってるやつもいるけど」
今いる3階の廊下では最初の指示で広間にとどまったうちの数人がいる。
その中には柚月の隣にいた青い髪の女の子の姿も見えた。
逆隣にいたピアス男は見当たらない。
恐らくはもう下の階にいるのだろう。
その他に今残っているのは前髪が朱色に染まった茶色の目をした女の子、長い茶髪を後ろに無造作に縛り付けた薄紫の目をした男の子、そして黒髪にこげ茶色の目をした三十歳くらいの男性が一人だけだった。
学院というだけあって受験している年齢層は15~18くらいだと思っていたのだが、それ以上の年代の人もいるのだろうか。
気になって悟に聞いてみる。
「なあ、ここって何歳までのやつが入学できるか知ってる?」
「え、お前知らねーの? 調べたらすぐにわかると思うけど、まあいいや。葦の矢学院は15歳から30歳までの人が入学出来て、18以上のやつだったら卒業後すぐに対隠団体に所属ができる様になってるんだ」
学院を卒業すると対隠団体の『
「なんで?」
「なんでってお前そりゃあ、あれだよ。俗な話。給料とか待遇がそっちの方がいいからじゃねーの?」
あんまりその辺は知らねーけど、と頬を掻く悟にふうんという声が出た。
(給料か……)
今まであまり意識をしたことはなかったが、そういえば普通に暮らすにもお金が必要なんだった。
柚月は寺に住まわせて貰っていたが、家賃を払ったことなどない。
それ故その辺りのことを考えるのを忘れていたのだ。
(でも奈留を養うのなら給料は多い方がいいな)
追儺師は命を懸ける職でもあるので当然手当や歩合制もたんまりと出るし、寮や食堂も完備らしいと悟は続ける。
悟は随分と調べているのだなと感心する。
「悟はその『桃泉花』に入団したいの?」
「うーんできればそうしたいけど、倍率めちゃくちゃ高いらしいぜ。何なら戦闘職だけじゃなくて事務職とか、非戦闘員の方も人気らしいし」
あまり入れる自信がないようだ。
「悟なら入れると思うけどな」
「……お世辞でもうれしいぜ」
彼は少しはにかみ頬を掻いた。
何故だかその表情は少し寂し気である。
「?」
「……まあ俺のことはさておき!今は試験を無事に終わらせないとな!」
話題を変える様に少し大きな声でそういうと、「ちょっと! うるさいんですけど!」と青い髪の女の子に怒られてしまった。
「うひょーこえー」
「あんまり大きな声は出さないようにしないとね」
二人は顔を見合わせると笑い合った。
そうして2週間後合格通知が届いたのだった。
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