第13話 孤児院と書いて〇〇〇と読む 4

『何しに来た人間の女!……紅白の衣に腰に剣?……どこぞの神官らしいが』


「……ずんぐりとした大トカゲに羽が生えてる?……この世界ではこんなものを龍と呼んでいるのですか?龍といえば奇麗な鱗があって尾の先が遠くに見える程長くて優雅に美しく飛んで。……それに古龍?あんまり古くは無さそうですが?」


『何だと?……矮小な人間風情が……』


「矮小ですか?私が?……おまけに神気、いやこの世界では魔力でしたか。大したものでもないそれを垂れ流しにするだけで能が無いですね……お陰で昔戦った悪鬼程の神気を想像していた私は、小者だと思って一度素通りしてしまいましたよ。」


『ふざけるな人間……ぐがっ!……』


「私が人間にしか見えないうえに、軽くはたき返しただけでこれですか?美しい龍をあわよくば下僕しもべに出来ると思って、態々コルドバ王国から帝国の奥地まで来たのですが、こんなに弱くて醜いのは要りませんね」


『……化け物……いや……神?』


「神?……残念ながら私は自分が何の神だったのか覚えて無いんですよ……神気をここでは魔力と呼ぶから……?……いや、もう神じゃないからその下の王……?……でもなんかしっくりしませんね……なんと名乗ったら」


『……冗談じゃない!……魔神で魔王!!』


「……あ……考え事をしてる間に逃げられてしまいましたか。まあ弱いし、要りませんし、もう辺境伯の依頼は完了ですね。しかしあんな古龍ざこと契約したペトラの兄を怖がってやりたい放題にさせていたとは。もっと早く教えてくれていれば。」







「さあ、息を大きく吸って、ゆっくりと吐く。……先ずはニコ。さあ打ち込んで来い!」


「……やあ!……あれ?……何で兄ちゃんに当らない?」


 亡き両親が有名な傭兵だったというニコラウス12歳。


「俺は一歩踏み出しただけだぞ?……無手の型の最初の動きどおりに」


 ラモナと同い年だが10歳の俺を何故か兄ちゃんと呼ぶ。鷹の子は鷹で、元から子供たちの中でも一二を争う腕っぷしで、でも正義感が強いので弱い者には決してふるわない。


「え?……こうして一歩……あ!本当だ凄えなこれ!」


 先日の騒動では初めに絡まれたミレをかばって一歩も引かなかった。心身ともに将来が楽しみな素質を持つ。……捻くれた俺より、こいつを主人公にした方が良いんじゃないのか?


「次は2つ目だ。ギュンター来い!……俺が一撃本気で打ち込むから迷わず2つ目の動作をしろ」


 狼獣人のギュンター11歳。ニコのライバルだ。


「本気だって?……悪い冗談はやめてくれよ死んじまうよ!」


 いじめている訳じゃない。こいつの獣人特有の天性の反射神経なら万が一が無いからだ。皆に良い手本を見せてくれるだろう。


「行くぞ……えい!」


 ニコのライバルと言っても仲が悪い訳じゃない。背中をあずける戦友の間柄に近い。


「……うわっ……え?……地面に叩きつけちゃった……大丈夫か!レイ!」


「……と、この様に受け身を取ったから平気だ……あ……うっかり受け身を教え忘れてたな?……と言ってもいつも準備運動でしてるゴロゴロの応用だ。さあ皆で地面でゴロゴロからおさらいだ」


「ミレも……ゴロゴロする」


ミレ7歳。猫ちゃんのゴロゴロは可愛いな。じゃなくて年齢より小さく見えるので3、4歳かと思ったくらいだ。なのでミレも参加出来る様に受け身の反復練習になる準備運動を考えたので、まとめてちび共まで稽古する事になってちょっと大変だ。


……まあ、何だかんだ楽しいものだな。

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