第12話 孤児院と書いて〇〇〇と読む 3

「しばらくぶりですね……レアンドール」


「……神楽殿?……何故、王都のやしきに」


「今の私はカーラですよ?……辺境伯様。……ペトラ子飼いの護衛隊ころしやどもが白昼堂々あるじ様を襲撃しました」


「レイモンドは無事なのか!」


「無事どころか武器なしで16人全員返り討ちにしたそうですよ。それにしても何故ペトラにやりたい放題にさせているのでしょうか?」


「……この国の混乱を防ぐ為。王命で緘口令が出されているのだが。そうだな。もう身内同然の神楽殿に隠して置くのも申し訳ないか。それは……」








「おじいちゃんおはようございます!」


「おはよう」


「おはようございます司教様!」


「おはよう……ラモナ」


「おはようございます……もっさり?はげ?司教様」


「モッサーリ・ハーゲンだ!……おはようレイ」


 いつになったら私の名前を覚えるのか?というよりワザとだろう。そもそもフルネーム呼び要らんだろ!それと私の頭を哀れそうに見上げながら言うな!

 

 あの騒動からもう一週間。レイと呼んでいる少年は領主の三男レイモンド様なんだが、あれから毎朝やって来て子供達と一緒に朝稽古をしている。ついでに朝食も一緒なんだが食費の名目での少なくない額の寄付はとてもありがたい。彼の希望で身分など忘れてレイと呼んでくれと、それに貴族位とは独立したツクヨミ神殿の司教の位を持つ私だって同じだろうと。……それならもっと尊重しろよこのクソガキ!これでも最近頭が薄いのを気にしているんだ!


「「「もっさりじーちゃん、おはよー!」」」


 それにチビ共が真似するから頼むから本当にやめて欲しい。


「こら!司教様にそんな呼び方したら、朝ご飯抜きにしますよ!」


「ラモナ。構わんよ。あのくらい元気な方がいい。それにもうとっくに逃げてるしな」


 ラモナは12歳の見習いシスターでこの領都でも大きなアルカラ商会の長女だ。巫女という上級神官になる事を目指して頑張っているので、少々堅苦しいところがある。あの騒動でミレを抱えたままレイに怯えていたので心配だったのだが。


「ところでレイ様。司教様をふざけて呼ぶのはいい加減に……(以下略)……それと……(以下略)」


「……ああ……はい!……よく良く分りました!」





「「「「「天におわしますツクヨミ様に感謝を。いただきます。」」」」」


「ところでレイ。昨日衛兵隊長のカミル殿が来たんだが、あの時の貴族。ゲス子爵だったか……」


「ゲスじゃなくてグエスだろ?……でそのグエス子爵がどうした?」


……やはりワザと私の名前を間違えてるのか。……クソガキめ。


「調べたらクーデターを起こそうとした証拠が見つかったらしい。」


「え?」


「首謀者は第二夫人のペトラ様だったらしく、投獄されたらしい。」


「あの優しい母様かあさまが……」


「悔やんでいるのか?……自分の言動が元でグエス子爵を詳しく調べる事になったのを……だがそれは間違いだ……お前が何を思おうと事実は変わらない……奴らの自業自得だ」


「事故で死んだのはやはりペトラの糞婆くそばばあの仕業だったか……」


「………………」

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