第三話 恐らく最強でなく最凶なんじゃないか



その男について行くと廃ビルの様な場所に着いた。


体が震えて怖い。


入り口に二人立っているが、この二人ですら中坊の俺からしたら凄く強そうに見える。


果たして、本当にうちの中学の不良たちは彼等より強いのか?


頭の中に疑問が生じる。


彼等を見ていると、恐らくは下っ端なのだろうが、怖さが半端ない。


中学で番を張っている守神さんより強そうに見えるが、多分間違いだよな。



「此処に入ったらおしまいだぞ! 竜生くんとの喧嘩が始まる…止めるなら最後のチャンスだ」


この人は、結構優しいのかも知れない。


俺の身を案じてくれているのが解る。


だが、此処で引く訳には行かない。


「いえ、行きます」


「そうかい」


俺が廃ビルに入った途端。


「死ね、このクソガキがぁぁぁぁー――っ」


「中坊だから殺さないが半分死ねやー――」


「蹴る、蹴る、蹴る」


「あはははっ、僕スタンガン試しかったんだよね」


いきなり頭に痛みを感じた。


嘘だろう…鉄パイプで後頭部を殴られた。


蹲った俺に対して、顔はよけてくれているが…ブーツをはいた男数人の蹴りがひたすらぶっこまれる。


「助けて…」


「はぁ~! お前此処に喧嘩しに来たんだろう!


俺にスタンガンが押し付けられた。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁー―――――――っ」


「これ、電圧をあげた改造品なんだぜ! 試す機会をあんがとな」


「ぐあぁぁぁぁぁぁー――っ」


俺は、そのまま意識を失った。


◆◆◆


「おら、起きろよ!」


「ぐふっ…」


蹴りをぶっこまれて俺は起きたが…


服は全部はぎ取られ、真っ裸で嘘だろう…手錠迄されていた。


「大きな声を出すなよ! 出すならブスって行くからな…」


そう言うと竜生くんの部下なのだろうか?


一人の男が俺の腹を少しナイフで斬った。


「痛いっ…」


奥に立っている、ロン毛に皮ジャンをきた、モデルの様な男がこちらに来た。


多分、彼が竜生くんだ。


俺の前まで来ると顔を近づけ話始めた。


「お前馬鹿なの? 喧嘩するのに丸腰って…そう思わないか、なぁ」


「あはははっ、竜生くん本当にアホですね!丸腰ですよ、丸腰」


「さて、どうしますかね? 面白いから、人間松明、ガソリンかけて燃やしますか?」


「止めてー――っ、止めてー-殺さないでー-っ」


俺はそのままドラム缶に詰め込まれた。


その状態で…嘘だろう?


ガソリンタンク?


もう死ぬのか…


「あはははっ、中坊相手だから、可愛そうだから止めてやれよ」


「そうすね! 竜生くん」


助かった…本当に良かった。


生きているって素晴らしい…命があれば…それで良い。


「それで、この喧嘩は俺の勝ちで良いんだよな?これ貰うからな」



「はい…」


これは俺が思っていたのと違う。


「おめぇ! 納得してねぇ顔してんな! 特別に教えてやんよ! 喧嘩に正々堂々なんてねーんだ! 漫画とちげーんだよ! 勝つために卑怯な事するのは当たり前だかんなぁ」


「少なくとも俺らのはそうですね」


「まぁガキだし、少し教えてやれよ!」


「この間のヤンキー…女人質にしたら無抵抗になってたぜ、馬鹿だな…黙ってボコられて…まぁ、ボコった後は20人で美味しく女を輪姦してやったら、泣いてやんの…ムカついたから歯が無くなる迄殴ったら…今度は女が暴れだしたから顔の形が変わる迄殴って、はははっ最後は女が化け物みたいになって誰も萎えて抱く気が起こらなくなったわ」


「むかつく、女の不良が居たから攫って輪姦した後、風俗で売ったな…喧嘩が強いなんて言っていたが、ボクシング経験者8人で殴ったら泣いてやんの、鼻の骨折ったら喚くんだぜ…最後は『許して』連発。

顔を見ると萎えるから、袋被せて輪姦…その後は薬つかって回し続けたら、もう終わり…いまじゃ素直にピンサロで働いているぜ、女なんてこんなもんだ」


桁が違う…


「俺は女には手を出さん…泣いている女を見ていると可哀そうになるからな…だが、凄くムカつく奴が居たから、仲間6人で家に押し入って目の前で家族をボコってやった…まぁそいつの親父を殴ってやってよ…幼稚園くらいのガキが居たから袋にしたら『もうしません、関わりません』って言うから、毎月8万円の上納金で許してやったよ」


なんだこれ…こんなの普通の不良のレベルじゃねーよ。


「どうだい? これ以外にも沢山あるぜ! 詐欺の標的にして借金背負わせて、家族を風俗に売ったり、大事な弟の手足を折ったり…相手の弱い所を狙えば簡単だぜ…あと喧嘩に腕力は関係ない」


「なぜ…」


「勝つ方法を使えば良いんだぜ…ナイフを持てば勝てるならナイフ。それで無理なら、スタンガン…それでも無理ならガソリンや灯油をぶっかけて火をつける…人質を取っても良いし、バイクや車で轢くのもありだぜ」


「そう言う事だ、解ったか? 今回は機嫌が良かったらサービスだ! 次はまっとうに相手するか解らないぜ」


竜生くんは笑いながらその場を去った。


だが、どうして竜生くんが渋谷で一番強いと言われているか解らない。


周りにいる人もけた違いに強い、そう思えた。


だから、その事について手下?のような人に聞いてみた。


「簡単だよ! 竜生くんの武器は銃だぜ、それに麻薬と詐欺のグループのリーダー格だ、金もあるし人望もある。それに兵隊も集められる…誰も勝てると思えねーよ」


俺の持っていた15万円は2千円残して没収された。


まぁ元からそのつもりだから問題ない。


「お前さぁ…どうしてもその相手に勝てなければ、うちのメンバーになれば?…まぁ薬の売人や詐欺の手伝い、なんでもやるって言えば…代わりに俺がやってやる、地獄位見せてやってもよいぜ...なんなら好きなクラスの女、お前専用のペットか便器にするおまけつき...俺の下につかない?」


この下は恐らく此処では下っ端な筈だ。


だが、それでも『それ位本当に出来る』そう思えてならない。


「考えておきます」


そう伝え、逃げるようにして此処を去った。


此処は怖すぎる。


この日から俺は…怖くて繁華街が歩けなくなった。







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