02  転生特典使えねー

固有ユニークスキル【状態異常完全無効】。俺は早く死んじまったから、親として何もしてあげられなかったからな。せめてもの償いだと思ってくれ」


 何だよいきなり、神妙な顔で。

 それにユニークスキル?


「この世界にも毒や麻痺、火傷に凍傷等の様々な状態異常がある。このスキルは、ルキが認知している状態を全て完全無効にするといった物だ」

「あんまりピンとは来ないけど」

「まぁ、いずれ分かる。でだ、お前はという事態も一つの状態という概念を持っているだろ?」


 うん?

 まぁ、異世界転生を本気で考えていたからかな。


「前世でどんな考えを持っていたかは知らんが、ルキにとってというのは数ある状態の一つに過ぎない」


 ということは、要するに。

 えっ、俺不死なの!?


「さらに言えば、死という状態に陥った時、死に追いやった事情の耐性を得る。これについては今のルキには詳しく説明することができない」

「死に追いやった事情?」

「要するに、今ルキには下位ではあるが【刺突耐性】と【斬撃耐性】を獲得したってことだ。あくまでも耐性だから、慢心は駄目だがその辺の人間レベルの剣撃でやられることはもう無いだろう。死ぬけど死なない、死ぬたびに強くなる。まぁ世ほどなことがない限りないとは思うが精神体、所謂魂への直接攻撃さえ回避できれば、お前は無敵だ」


 なるほど。

 強くなるにはそれ相応の痛み、死ぬほどの痛みは生じるってことか。


 えっ、やだ。普通に嫌なんだけど!?


 ゲイルの話を聞く限りでは強力なスキルみたいだけど、死なないと強くなれないとかどんな拷問だよ。

 それただの苦行じゃん!


 もっと普通に炎でバババーンって山を吹き飛ばしたり、ドラゴンを一振りでかち割れたりできるような能力が欲しいんだけど?

 自重せずに大暴れ無双したいんだけど?


「あ、ちなみに金と服に関してだけどな、がんばれ」

「は?」

「そうだな、この布くらいなら渡せるぞ?」

「——っ!?」


 俺は小さな手で拳を力一杯握った。

 ゲイルが提示してきたのは俺が元々着ていた服ではなく、本当にただのバスタオル大サイズの布一枚だ。


 馬鹿にしてやがる。


「その手に持っている俺の服を返せよ! それで服の問題は解決だろうが!」

「今、この空間は生界と死界の狭間。俺はどちらかというと死界側の重鎮ってとこだ」

「無視すなっ!」


 ゲイルが重鎮だとか、そんなことは聞いとらん!

 はよ服返せ!


「そして、ルキが転生した世界には普通に魔物が存在する。魔物は一定以上のレベルになると人型になり、知能を得て魔人へと進化する。簡単に言えば、魔物の上位互換が魔人だ。人間はそれらを総称して、魔族と呼ぶ」

「はいはい、分かったから。服返せ」


「ルキ、お前はもう人間ではない。額に生えた角を触れればわかるだろう。人は人よりも遥かに力を有する魔人を恐れている。だから襲われたってわけだ」

「いや、もう分かったって。だから、服を」

「次転送したら、とりあえず王都からは抜け出した方がいいな。目的なんて自分で決めなさいとは思うが、そうだな。世界征服なんてのはどうだ?」


 なんか、おっかないことを言い始めたよ、このおっさん。

 何、世界征服って。


 学校の制服を返せって話から、どうして世界を征服する話になってんの?


「それとだな、元の世界のモノは持ち込めない。別世界の干渉は許されない、だから服は返さない。決して欲しいとかでは無いぞ? 勿論、技術を持っていくことは構わんが、実物はタブーなのだよ。とにかく、頑張ってくれ。きっと辛いのは最初だけで、いつかは楽しくなるさ」


 その答えを聞いて俺は思った。

 こいつ、俺で楽しんでいるな——と。


「チッ。頑張ればいいんでしょ、頑張れば」


 俺は布を受け取り、渋々魔法陣の中に戻る。


 念願だった異世界だ。

 二つの意味で不服だけど、この程度の代償は払ってやんよ!


 意識が遠のいていく。


「あっ、言い忘れてた! 王都付近の森にだな、王猩々キング・エイプっていう大きな猿が——…まぁ、次会った時でいいか」


 そこには既にルキの姿はなかった。

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