198 主従逆転の魔物使い
アースドラゴンを使役する魔物使いには一人だけ心当たりがある。レヴィーリア様を暗殺しようとしたあの黒ローブの男だ。
それを思い出し、ハッと伊勢崎さんと顔を見合わせたところにマリステルの顔がにゅっと割り込んできた。
「ねえねえ、あんたたち何見つめ合ってんのよ。もしかしてこんなところでおっぱじめる気なのかしらん? 別にいいけど、それなら私も混ぜてよねえ?」
「おおおおおおおっぱ!?」
「いえ、違いますから」
俺たちは同時に口を開き、マリステルが残念そうに唇を尖らせる。
「えー……。それじゃあなんだってのよ」
「もしかしたらここに棲んでいたアースドラゴンに俺たちが関わっていたかもしれないと思ったんです。マリステルさんに教えて欲しいんですけど、アースドラゴンって契約しやすい魔物なんですか?」
「んなことないわよ。バカな契約だったけど、それでも大したもんだとは思ったもの。……それで? あんたと関わりのあるアースドラゴンってのはどうなったのかしらん?」
「一応、俺が倒しましたよ」
「あの時の旦那様は本当に素敵でした……」
頬を染めながらうっとりとつぶやく伊勢崎さん。けれど俺としてはとにかく必死だったし、そんなに素敵なものではなかったような気がする。
そしてマリステルも
「倒したって……それ本気で言ってるのお? アースドラゴンは頑丈で力も強くて、マツナガが壊しちゃった私のオークキングゾンビでも一対一なら勝てるかどうかわからないような相手よん? それをどうやって倒したっていうのよう」
「ええと、【
「ふんふん」
「そこから地上に落としました」
と言う俺の言葉に、呆れたように眉をひそめるマリステル。
「あんたねえ……。言うのは簡単だけどお、そんなのが本当にできちゃったら【
「と、言いますと……?」
「運んでいる間、敵の攻撃はどうすんの? それに【
なるほど、なかなかお詳しい。もしかするとマリステルも試したことがあるのかもしれないな。とはいえ俺はこう返すしかない。
「それは全部なんとかなりました」
「……マジで言ってるの?」
「マジですよ」
「旦那様はすごいんだから! ムフン!」
俺よりも早くドヤ顔を披露した伊勢崎さんにやや引き気味になりつつ、マリステルはさらに質問を重ねる。
「へ、へー……。ちなみに魔物使いの方はどうなったのかしらん?」
「アースドラゴンの甲羅に潰されて死にましたね」
「そっ、そう……。まあ、これまでにもあんたの異常な力は見てるワケだし、とりあえず納得するしかないわねえ……。それにしても……はあ~~。最初っからあんたたちがそんな化け物だとわかっていれば、私も絡んだりしなかったのに……」
そう言ってがっくりと
そしてしばらくうなだれていたマリステルだったが、突然がばりと顔を上げたかと思うと勢いよく話し始めた。その表情はなぜかとても明るい。
「あっ、でもよく考えたらそう悪い話ばかりでもないわ! だってあんたたちに絡んだ結果、なんだかんだで私のお家ができたんだもの。だからやっぱり絡んでよかったのかもしれないわあ!? うふふふふっ、やっぱり私ってツイてるわねえ!」
今も生殺与奪の権利を
そうしてウキウキになったマリステルは先ほどまでの警戒態勢から一転、無防備にてくてくと滝壺に向かって歩き始めた。
「とりあえずマツナガの倒したアースドラゴンだろうとそうじゃなかろうと、マツナガがいればどうにかなりそうじゃない。それならこんなところにじっとしてないで、さっさと薬草を採りにいきましょっか~」
「いやいや、アレはたまたま上手くいっただけですし」
「なによ、まあ細かいことはいいじゃない。実はねえ、前に来たときにはアースドラゴンのせいで薬草は採れなかったの。薬草にはお人形ちゃんを強化させる薬効のモノもあるのよう。私もたくさん採っちゃおうっとフンフフ~ン♪」
鼻歌を口ずさみながらずんずんと進むマリステル。こうなれば仕方ない。俺と伊勢崎さんは慌ててマリステルの背中を追いかけたのだった。
――後書き――
8月17日発売の『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女』2巻のタイトルロゴ入り書影をいただきましたので、さっそく公開しました。
https://kakuyomu.jp/users/fukami040/news/16818093082353078697
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