ep.4 女王も最初は苦労したそうで…
「――なるほどね。アキラは、まだこの星に来て間もないのか。3年なんて言うもんだから、てっきり地球基準の半月ほどは眠っていたのかと思ったよ。それでも十分長いけど」
アゲハがそういうここは、王宮内にある和室の一角。
窓から見える夜空が、星の動きが少し早いのは気になる所だが、それでも美しい。
そしてアゲハとしては、国として事を荒立てない様にするためか、ここはサリバとイシュタも招き入れ、お手製の温かい緑茶を振る舞ってくれたものだ。
ちなみに、先程失神したイシュタは、あのあとすぐに目を覚ましてくれたので一安心。
「ここって、いつもこんなに昼夜のサイクルが短いのか?」
僕は素朴な疑問から質問した。
アゲハが「うん」と頷き、詳しく解説していく。
「この世界の1日は、私達の元きた世界でいう『20分』。つまり、現実世界のちょうど72倍速で、時が流れている事になるんだ。私も最初は、なんでこんなに早いんだろう? って思ってね。
そこで、元きた世界で
メトロノームを自作、か。どこからか購入したのではなく。
アゲハは、確か元きた世界の本職が世界的有名な歌姫だからな。音楽で時間を計ったと。
「ちなみにアキラが目覚めたのは、神の跡取りゲームの終了から約3年後だって聞いたけど、するとこっちでは×72。私の計算が合っていれば、今年でちょうど建国200年を迎えるここアガーレールと、ほぼ辻妻が合うんだよね」
200年!?
いや、現実世界でいうたった3年だから、そんな大した事はないんだろうけども。
ただ、それでも上記の年数はどちらをとったってヤバすぎる。下手したら僕たち、あっという間にヨボヨボの爺ちゃん婆ちゃんになってしまう次元じゃないか。
「え? じゃあ俺たちは、この世界の基準でみたら、もう1000歳を超えている事になるんじゃ!? 子供も、成人する15,6歳の体になるまで、何百歳という計算に…」
ふと、サリバとイシュタの顔を見る。
2人は異世界との比較話で良く分からないのか、お茶をもったまま「?」と首をかしげていた。アゲハは肩をすくめた。
「それが、私達が元きた世界の歳の取り方とは、少しわけが違うんだ。ここは子供の成長はあっという間だけど、成人してからの若い期間がとても長く、みなすぐには老いない。だから、成人するまでの歳の数え方は正直、あまりアテにならないんだよね。個人差もあるし」
「はぁ」
「私がこの世界に来たばかりのころ、サリバとイシュタはまだ、幼稚園の年中さんくらいに小さかった。それが、現実世界でいう僅か3年で、ここまで成長したんだよ。今では2人とも、私の背を超えるくらいに立派になってさ」
「いえいえいそんな!」「それほどでも~」
と、とっさに
「アゲハはなぜ、この国の女王様に?」
「はて。明確な理由というのはないかな。気が付いた時には、この国の君主になってた」
超・適当!!
「もちろん、この星に降り立って、最初から先住民達と仲が良かったわけじゃない。まだあの頃は、狩りが主流の石器時代で、私みたいな部外者はものすごく警戒されたよ。
ヒト型の種族が
「和解? どうやって」
「虹色蝶だよ」
♪~
と、ここで青色基調の半透明な蝶々を1羽、自身の片手の平から生み出したアゲハ。
僕と同じ、その奇跡を操れる証明がされたところで、彼女の説明は続いた。
「これ自体は、生身の体で触る事も出来なければ、私達の目に見える以外に何の力も有していない。でもその代わり、このキラキラした蝶の体を透過させる形で、宇宙の真の姿を“魅せる”事は出来るじゃないか」
「まぁ、そうだな」
「たとえば今日は流星群なのに、
なるほどね。それでアゲハ、皆からは「娯楽を生み出してくれる貴重な存在」だとして、大切に扱われる様になったと。
で、その延長として、国の女王に抜擢されたんだろうな。あからさまな手の平返し。
ん? でもそうなると、あのマニーだって虹色蝶が使えるのだから、ここは「王」に抜擢されてもいいのでは?
というか、さっきからマニーの名前が一回も出てきていない様な…
「マニーと出会ったのは、その後だよ」
あっ… 言ったそばから漸く登場ですね。フラグ回収、お疲れ様でした。
「マニーはマニーで、スポーン地点がここからだいぶ離れた無人の森だった。そこで自生していた野菜や果物を食べて飢えを凌ぎ、自給自足の生活をし、やがて移動した末にここへ辿り着いたわけだけど… その頃には、私は既にこの国の女王に君臨していた」
つまり、スポーン地の場所や順番が違っていたら、マニーの方が王になっていた可能性は十分にあったと。
しかしマニーったら、随分とワイルドな暮らししてたんだな。当時は相当ヒゲ伸びてそう。
(つづく)
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