第35話

1度溢れた涙を止めることができなくて、舞はその場に泣き崩れてしまった。



「大丈夫だよ舞。青っちは絶対によくなるから」



「そうだよ。舞がメソメソしててどうするの」



「ほら、舞も一緒に折り鶴作るよ!」



3人組が舞の体を支えて起こす。



舞は何度も頷き、折り紙に手をのばした。



あの3人組が舞のために、青っちのためにこうして手をかしてくれる。



こんな未来を授けてくれたのも、青っちだった。


☆☆☆


みんなで作った折り鶴は、クラスのみんなで持っていった。



青っちは本当に千羽あるツルを見て驚いていたし、ひとつ開いて見せたメッセージには目に涙を浮かべていた。



「ありがとう。みんな、本当にありがとう」



この日は不思議と青っちの体調はよかった。



体が透けることもなく、楽しい時間を過ごすことができたのだ。



それはまるで、青っちの最後の力を出し切ったような、そんな気もした。



そしてそれから青っちの体は急速に変化していく……。



『私はもうすべてが消えてしまうみたいです』



アマンダは入院3周目に入ってそんな動画ブログを投稿した。



画面に映っているアマンダの体は半透明で、透けていない箇所を探すほうが難しかった。



『でも不思議。ここまで透明化が進むと苦しくはなくなるみたい。体力は落ちているけれど、自分で立って歩くことはまだできる。完全に透明になっても歩き続けられるように頑張るわ』



その後もアマンダの動画ブログはアップロードされていたけれど、病室のどこにアマンダがいるのかわからなかった。



誰もいないベッドの布団が膨らんでいたり、誰もいないのに花瓶の花が空中に浮いたりする動画になった。



『これが透明になるということ。私はもう二度と、自分の顔を自分で見ることもできない』



誰もいない空間から声が聞こえてきて、動画はそれで終わった。



青っちもいずれこうなってしまう。



そう遠くない、きっとごく近い未来。



舞が病室へ行っても姿は見えなくなってしまう。



そう思うと途端に強い恐怖が舞を襲い、スマホを投げ出して頭から布団をかぶった。



青っちを見ることができなくなってしまう。



自分から青っちにふれることも難しくなるかもしれない。



青っちを探すことも困難だ。



そう思うと体が震えた。



随分泣いてきたはずなのに涙がとめどなく溢れ出してきて止まらない。



舞は布団の中で体を丸めて自分の体を抱きしめるようにして、いつまでも震えていたのだった。

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