第28話
最初は手を繋ぐだけでも緊張していたけれど、それもどんどん慣れてきた。
これからもっともっと2人の距離は近づいて行くはずだ。
それは楽しみで、少し恥ずかしさも感じる。
舞の心臓がドキドキと高鳴り始めた時、不意に青っちの手に違和感があって視線を向けた。
その瞬間、舞は自分の目をうたがった。
握りしめられている青っちの手が少しだけ透けて見えたのだ。
「えっ」
思わず口に出してしまい、青っちが不思議そうな顔を舞へ向けた。
「どうした?」
質問されたとき、すでに青っちの手は元通りになっていた。
透けてなんかいない。
舞は何度か目をこすってみたけれど、もう透けることはなかった。
きっと見間違いだったんだろう。
「ううん、なんでもないよ」
舞はそう言い、気を取り直すように車窓の外へと視線を向けたのだった。
☆☆☆
2度めの遊園地では前回に乗れなかった乗り物に乗ることができて、とても楽しい時間を過ごしていた。
青っちも今度は乗り物に酔うことがなくて、終始楽しんでいる様子だ。
母親に貸してもらったミュールが痛くなることもなかったし、成功だったと言える。
太陽が沈み始めて園内がオレンジ色に染まり始めた頃、「どうしてこんなに時間が経つのが早いんだろう」と、ポツリと呟いてしまうほどに楽しかった。
「最後に観覧車に乗ろうか」
青っちに提案されて舞はすぐに頷いた。
観覧車の前まで行くと夜景を見るために沢山のお客さんが並んでいる。
「どうする青っち。これに並んでいたら真っ暗になっちゃうよ」
さすがに時間を考えきゃいけない。
けれど青っちは舞の手を強く握りしめた。
「舞、家に遅くなるって連絡できる?」
「え、できるけど?」
「じゃあ、これに乗ってから帰ろう。ちゃんと家の前まで送るから」
青っちはまっすぐに観覧車を見つめて言った。
なにか青っちなりの考えがあるのかもしれない。
「わかった」
舞は頷き、バッグからスマホを取り出したのだった。
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