第23話

英介の気持ちは知っていた。



それでも知らないふりをして、突き放した。



それなのに英介はこうして気持ちを伝えてくれる決意をしたのだ。



「僕と付き合ってほしい」



そう言われた瞬間舞の心臓がドクンッと跳ねた。



告白されたのは生まれて始めての経験だ。



こんな風に異性に想われることがあるなんて、ちょっと信じられなかった。



だけど、舞の心の中には揺るがないその人の姿があった。



青っちだ。



青っちの笑顔が舞の心を捉えて離さない。



きっと今目の前に人気俳優のリクが来たとしても、それは変わらないことだと思えた。



「……ごめんなさい」



せっかくの告白を断るなんて何様だろう。



自分でもそう思う。



だから、頭を下げたままなかなか上げることができなかった。



英介は黙っていて、時間だけが過ぎていく。


「そっか」



ほんの十秒とかそのくらいの時間だったと思う。



英介の言葉に救われるようにして舞は顔をあげた。



そこには笑顔の英介が立っていた。



その笑顔にチクリを胸が痛む。



きっと英介はとてつもなく優しい人だ。



付き合えば不安なんてなく、安心した日々を過ごすことができるだろう。



だけど……と、舞は思う。



それでは自分の気持に嘘をつくことになり、英介に対しても失礼なことをになってしまう。



紳士に向き合ってくれる英介には、本当の気持ちを伝えないといけない。



「青木君のことが好き?」



聞かれて、舞の頬がカッと熱くなる。



それは肯定しているも同然だった。



生理現象をごまかすことはできない。



「そっか。青木君はすごくいいヤツだもんな。わかるよ」



「……ごめんなさい」



「謝らないで。君は悪いことはなにもしてないんだから」



英介はそう言うと、笑顔を残して教室を出ていったのだった。

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