鉄鋼業の街.メタルインダストリー

 俺達は怪しまれないよう、街から少し離れた人気の無いところに降り少し休憩した。


「ふぅ〜久しぶりに翼動かしたぁぁ」


 マナはそう言いながら大きな翼を背中にしまう。


「翼ってしまうこと出来るんだな」


「あぁそのままだと色々と不便だからね」


 休憩後街に向かう、街の入口付近に来ると、門番の兵士達に身分証明書を求められたが当然持ってるわけない。


「身分証明書の提示をお願いしますギルドカードでも構いません」


「すいません持ってないです」


「え?」


 兵士達は驚いた表情をしている。


「そちらのお嬢さんは?」


「持ってるわけないだろ」


「は?」


 兵士は再び驚いた後、隣にいたもう1人の兵士と、何やらコソコソと話し出した。


〔なぁこれって、もしや······〕


〔あぁ逃げ出したどこかの奴隷か、盗賊達かもしれないな、警戒しろ〕


 兵士達は、コソコソ話を辞めると

「それじゃあステータスの公開をお願いします」と、要求してきた。


〔マナ、ステータスの公開ってどうやるの?〕


〔ステータスを開いて《公開を許可する》するって言うんだよ〕


「ステータス開示、ステータス公開を許可する」


『了解、ステータスを公開し他人にも閲覧可能にします』


「ステータス喋ったりもするんだ」


 ステータスが喋ったことに驚きつつ、兵士達にステータスを見せる。


「ふむ...なんだ、ただの一般人か···今回は特別に許可するが次は無いからな」


「身分証明書を持ってないなら早めに作っていた方が良いですよ」


 なるほど、話からしてこの世界の身分証明書はパスポートの役割も、持っているみたいだ。


 看板には

鉄鋼業のメタルインダストリー

と、書いてあり門や城壁はよくある安山岩や花崗岩ではなく、鋼鉄で、出来ている。


 壁を見ると重厚な鋼鉄の鉄板などが張り巡らされ造られている事がわかる。


俺はそんな壁を眺めていると

「この鉄の壁はいくら熱しても溶けないよ う、魔法が掛かって居るな」

と、マナは壁に魔法が掛かっている事を少し見ただけで見破る。


「マナはこの街に来たことあるのか?」


「そうだな、だいたい150年前ぐらいか?この街が鉄鋼業で栄え始めた頃に妾の山を鉱山にしようと山に入って来たから、抗議の意味を込めて街を火の海にしたなぁ」


 抗議の為街を火の海にするってこいつ、抗議の意味わかってないだろ。


「それ抗議じゃなくて、テロって言うんだよ...」


「ふふん!まぁいいそれより早くギルドに行くぞ」


 門をくぐり、すぐそばにある街の地図を見る。


 まず、街の中央区にはギルド、宿、武器防具屋その他商売の店、があり冒険者や旅人、商人が多く居そうな区域だ。


 北西には工業区域があり、海のすぐそばに多くの工場、製鉄所が建てられている。近くにいる人に聞くと、工業区域にある工場はこの世界で最先端の技術を使い造られているらしい。


 北東には、工業区域で作られた鉄製品を世界に輸出する為の貿易港がある。よくある木製の船もあれば、この街で造られた世界でたった一つの鉄製の船もあるらしい。


「すげぇな、まるでここだけ近代みたいだ」


「あぁ妾達、最初にくる街間違えたな」

俺達はギルドを目指した。


中央区は人々で賑わっており、まるで祭りの時みたいだ。

 俺達はそんな人混みにもまれながら、ギルドを目指す、なんとかギルドに入ったがギルド内部も人で溢れていた。


「いくらなんでも人、多すぎだろ」


「チッ!妾達、最初にくる街間違えたな」


 ギルド内に酒場や食堂が併設されているせいか、冒険者や旅人で溢れている更にここは鉄鋼業によって商業の街でもあるので余計人が多い。

 俺達は中央の受付を目指し人混みを通る。


「すいません、通ります」


「ハァハァ...邪魔だ!!妾に道を開けろ」


 マナは人混みを避け続けてストレスが溜まっているのか傲慢な態度になって来ている。


「おい、そこの姉ちゃん一緒に飲もうぜ」


「こっちおいでよ〜」


 何人かの知らない冒険者がマナに話しかけて来る。


〔お、おいマナ辞めとけよ〕


〔ハァ...わかってるよ〕


 マナは爆発しそうな怒りを堪え冒険者達を無視する。


「チッ!クソが...ただでさえ機嫌が悪いのにもっと悪くしやがって覚えとけよ...」


 無視された冒険者よりも、マナの方がめっちゃくちゃキレていた。


「落ち着けって」


「黙れ!!命令するな!火だるまにするぞ!」


 ギルドのカウンターに付き受付嬢に話しかける。


「すいませーん冒険者として登録したいのですが」


 <登録ですか?かしこまりました。ではステータス開示とその他の情報をこの紙に書いてくだい>


 ステータスを開示した後、紙に自分の個人情報を書いていく、げ!出身地だと!?なんて書くか...。


 この世界の事まだ全然知らない俺にとっては出身地など、適当に書けないのだ。しばらく考えたが、例え嘘を書いたとしてもいずれボロが出そうなので正直に書くことにした。


 <すいません、この出身地に書いてある、

 日本とは?地図には載ってないのですが...>


「異国です」


 <え?はい?>


「異国です!!海の果の果てにあります」


 俺はゴリ押した。


 <は、はい!!受けたまりましたでは、こちらをどうぞ>


 受付嬢が何かを唱えると、紙がカードになる。


 <こちらギルドカードですモンスターと契約する時や身分証明書としても機能します>


 受付嬢は続けざまに説明をしていく。


 <ランクは現在Eで、薬草集めなどの初級クエストしか受けれません、クエストをこなしていくとランクを上げることが出来ます>


「ランクはどのくらいありますか?」


 <最低がEで最高はSですねそれと、勇者や国を救った英雄などはSの上Gになります>


「ありがとうございます」


 <それでは、頑張ってください!!>


「はい!··········マナ!!ギルドカード取っ...」


「あぁ!?なんだお前妾に触るんじゃねぇぇぇ邪魔だァァァァァァァァァァァァァ」


 ガシャァァァン


「ひ、ひぃぃぃぃ」


マナに触れた冒険者は、逃げていく。


「ァァァァァァ散々散々人混みの中歩き回って疲れてんのに、ナンパしてきて休んでたら触ってきやがって妾に構ってくんなァ」


 ドンッ!ドンッ!ドンッ!ガン!ガン!


 マナは怒り叫びながら、かんしゃくを起こし暴れていた。


「えぇ.........マナ!!落ち着けって!!」


「おおい!マナ!!こっちだよ!ひとまず落ち着け!!」


 必死にマナを呼び、正気に戻そうとする。


「黙れ!!お前...命令するなと言ったよなァ、ふざけんなァァァ」


 マナはこちらを見てそう言うと、俺目掛けて殴りかかってきた。


 俺はマナと殴り合いになった。

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