第17話 戦争

「どもどもー!お久しぶりですゴルドフさん」


「おお、ルティー殿!やっと参られましたか。ルティー殿が来られるのをずっと待っていましたよ」


 俺はポチに乗って、ノーゼンの街までやってきた。前回死にかけたポチの全力ダッシュも、今やもうだいぶ慣れたもので、普通に乗っていられるようになった。


 現在ハーレム王国はクロカミ部隊によって厳重な警戒態勢の下に守られており、いざと言う時はシーナたちを乗せてノーゼンまで逃げてこいと言ってあるので、安全面はバッチリだろう。


「あ、俺のゴールドリンゴはどうでした?結構売れました?」


「いやあもうそれはそれは凄い反響で、前回買い取らせて頂いた千個はあっという間に売り切れてしまいましたよ。今貴族の間では我がナーガ商会が卸したゴールドリンゴが話題になっているそうで、多くの貴族様から注文が殺到している状況なのですよ」


「へえー!そりゃあ良かったです。じゃあ今回は前回より多く買い取って貰えそうですね!どのくらい要ります?3000万個以上ありますけど」


「さ、3000万…やはりルティー殿は規格外ですな。で、では今回は2万個を買い取らせて頂きます。それと前回10点ずつ買い取らせて頂いたあの準国宝レベルのお皿と絨毯なのですが、あれから更に20件程注文がはいりまして、その分も買い取らせて頂きますね」


 ということで、ゴールドリンゴ2万個と加工Lv9で作った皿と絨毯を買い取ってもらい、白金貨620枚を受け取った。


「あ、そうだ。ちょっと聞きたいんですけど、この辺に自由に掘れる鉱山ってありません?」


「自由に掘れる鉱山ですか?そうですねえ…あるとしたらバルト鉱山しか思いつきませんな。ここから北東の方角にあるのですが、あそこの鉱山は20年ほど前は利用されていたのですが、崩落事故があって今は手付かずの状態のはずです。あそこなら自由に利用出来るかと」


「おお、ありがとうございます!ちょっと行ってみます」


「や、やはり行くのですね。崩落事故には十分気をつけてくださいね」


 おお、いい情報を聞いた。さっそく行って金属を掘りまくろうと、部屋を出ようとした時、勢いよくドアが開いて若いお兄さんが焦った表情で部屋に入ってきた。


「た、大変です!東のゲルド王国からオークの軍勢3万がここマール王国に迫っているという情報が王宮から入りました!」


「なに?3万だと?王宮はすでに動いているのか?こうしちゃいられん!ギース、すぐに馬車を出せ!王都に向かうぞ!」


「はい!すぐに準備します!」


「くそっ、ゲルド王国!前からなにやら怪しい研究をしていると噂には聞いていたが、まさかモンスターの召喚に成功していたとは…」


 おいおい俺を置いて勝手に盛り上がるんじゃないよ。オーク?3万?マール王国に?


「ルティー殿、きちんと見送りが出来ず申し訳ない。緊急事態の為、私は今から王都に向かいます。万が一私が帰ってこなかった場合は、このギースに仕事を引き継いでおくので、彼に買い取りをさせてください」


「は、はぁ…」


 そういって、ゴルドフさんとギースと呼ばれた若い男はすぐに部屋を出ていってしまった。


 話に置いていかれ、部屋にも置いていかれた俺は少し考える。


「ゲルド王国って東にある国だったっけな。そこがマール王国を潰しに来たってことか?これ普通に戦争ってことだよな」


 ふむ。どうやら大変な事態が起こっているようだ。オーク3万ってだいぶ多いな。マール王国はちゃんと対応できるのだろうか。


「ん、ちょっと待てよ?」


 もし万が一マール王国がオーク3万を倒せなかったら、マール王国の可愛い女の子たちがオーク共に襲われるってことか?いやいやそれはダメだろ!俺が絶対に許さん。


「よし、決めた」


 オーク3万は俺が何としても叩き潰してやろう。オークと可愛い女の子なんて最悪の組み合わせだからな。それに俺はこういう時のためにあの地獄の修行を耐え抜き強くなったんだ。ここで動かなければハーレム王の名が廃るってもんだ。



「おーいポチー、いるかー?」


 俺はノーゼンの街を出ると、茂みに隠れてもらっていたポチを呼び出した。あ、きたきた。


「ポチ、今から俺の晴れ舞台があるんだ。一応シーナたちにも知らせておきたいから、一旦ハーレム王国に帰るぞ」


「わん!」


 黙って行ったらみんなすごく怒りそうなので、きちんと報告してから行くことにした。俺はきちんと報連相ができる男なのだ。社会人の基本は報連相。デキる男は決して基本を怠ったりしない。




「…………ということで戦争に行ってきます!」


「帰ってきて早々何を言い出すかと思えば、戦争に行くですって?どうしてルティーが戦争に参加しなきゃいけないのよ!」


 シーナが俺の戦争参加表明に反対してきた。


「まあシーナの気持ちは分かるけど、こればっかりはしょうがないんだよ。もし万が一マール王国軍がオークの軍勢にやられるとするだろ?そうすると、マール王国に残っている女の子たちがオークたちに片っ端から犯されちゃうんだ。それはハーレム王国の国王として許せない事態な訳ですよ」


「それはそうだけど…もしルティーが戦争で死んじゃったらと思うと、どうしても怖くて…」


「シーナ!ルティーなら大丈夫だよ!私たちを盗賊から守ってくれた時のこと覚えてるでしょ?あのルティーがオークなんかにやられるわけないじゃん!」


「そうですよ!ルティーさんは世界最強なんですから!」


 おお!サリアとサーナが俺を褒めちぎってくれている!ほう、世界最強ときたか。ふむ、なかなかいい響きではないか。


「ルティー君、オークって食べれるかな?」


「ルティー!私も見に行きたーい!」


 マリアとリリーも何も心配していないようだな。リリーには悪いが、この戦争にみんなを連れていく気はない。なにせ相手はオークだからな。オークなんかに俺の愛する国民を近づけさせてたまるかって話だ。


「はぁ…なんだか私だけ心配しててバカみたいだわ」


「ありがとなシーナ。でも本当に心配することはない。なにせ俺はモールス大森林に国を作っちゃうような男だぞ?オーク3万ごときに手を焼くわけないだろう。いいかシーナ、圧倒的強者の前では数は意味をなさないんだぜ。それをオーク共に身をもって教えてやりに行くだけさ」


「わかったわ。確かに考えてみればルティーが誰かにやられるなんて有り得ないわね。でも、絶対に無理はしちゃダメよ?それだけは約束してくれるかしら」


「おう!任せてくれ」


 よし、無事にシーナも納得してくれたので、俺は安心してオーク討伐に向かうことが出来るな。そんじゃ早速出発と行こうかな!


「クロカミ部隊、ちょっとまた出かけてくるから、その間みんなを頼むな」


「「「「「ガウ!」」」」」


 俺はクロカミ部隊に声をかけてから、再びポチと共にノーゼンの街へ向かった。



「すいませーん。王都ってどっち行ったら着きます?」


「うわあ!なんだそのデカいモンスターは!」


「むむ、モンスターとは失礼な。こいつは俺の相棒のポチだ。それよりどっち行ったらいいんだよ。早く教えてくれ」


「あ、ああ。王都はこの門を抜けて、左にひたすら真っ直ぐ行ったらあるぞ。だがそのポチとやらを街に入れることは出来ないぞ?」


 ノーゼンの街の検問所の職員さんに王都までの道を聞いたのだが、ポチの入場を断られてしまった。ええ!こんなに素直で可愛い天才犬だというのに。くっ、解せぬ。まあ仕方ない、パッと見3メートルの巨大犬だからな。街の人たちをびっくりさせても悪いしな。


「わかった。じゃあ単刀直入に聞く。この街に入らず、オーク共を迎え撃つ王国軍の元まで行くにはどうしたらいい?」


「な!その情報をどこで?」


「そんなことを説明している時間はない。とにかく今は行き方を教えてくれ」


「わ、わかった。この街の外周を左にずっと進んでいくと途中で川があるから、その川を渡ってひたすら東に行けば王都が見えてくるはずだ。そこからは王都の兵士に聞いたらいい。それと、この文書を持っていけ。すぐに戦場まで案内してもらえるはずだ」


「おお!助かった。あんた名前は?」


「マルテスだ。お前さんは?」


「ルティーだ。色々教えてくれてありがとな。はいこれ、お礼だ。そんじゃまた!」


 俺はマルテス兄さんにゴールドリンゴ50個ほどを渡して、ポチと共に王都を目指した。


「なんだったんだあのルティーとかいう少年は…ってこれゴールドリンゴじゃねえか!しかもこんな沢山!一体何者なんだあいつは」




 俺はマルテスから教えてもらった通りに、街の外周を進み、川を飛び越えてから、ひたすら東に進んだ。


 それから30分ほど進んだところで王都らしきものが見えてきた。


「おっ、あれが王都か。随分立派な城壁だな。まあ俺の城壁の方がカッコイイけど?ハッハッハ!」


 とりあえず検問所に行けばいいかな?検問所、検問所、あ、あそこっぽいな。


「すいませーん。戦場に…」


「止まれ!貴様、何者だ!そのモンスターはなんだ!今すぐそのモンスターから降りろ!」


 戦場まで案内してもらおうと思ったのに、気づいたら、兵士10人ほどに囲まれてしまいました。ええ、ボクあやしいものじゃないのに!くそっ、マルテスめ。話が違うじゃないか!


「いや待ってくれ。俺はあんたらに危害を加えるつもりは微塵もないぞ?こいつは俺の相棒のポチっていうんだ。モンスターじゃない。ちょっと大きい俺の愛犬だ」


「いやどう見てもモンスターだろ!何か身分を証明出来るものを出せ!」


 やっぱ王都は街より警備が厳重だな。身分を証明できるものか。なんかあったっけ?ああ、マルテスから貰った文書とゴルドフさんに貰ったカードを出してみるか。


「はい、これとこれで大丈夫か?」


「見せてみろ。ああ、マルテスからの紹介だったのか!いきなり囲んでしまって悪かったな。ってこれナーガ商会の特別客人カードじゃないか!いやぁ、大変申し訳ないことをした。この責任はどうか私だけで勘弁願いたい」


「いや良いって良いって。畏まらくていいから。そんなことより早く戦場まで案内してくれよ。ポチは中に入れるのか?」


「恩に着る。ああ、今なら問題ないと思う。王都の人々には現在自宅待機が命じられているから、外にいるのは王都の兵士だけだ。俺と一緒にいれば味方だと分かるだろう。そういえばまだ名乗っていなかったな。俺はガリオンという。よろしく」


「俺はルティーだ。よろしく。とりあえず移動しながら話を聞かせてくれ。どうする?ポチに乗るか?」


「そうさせてもらおうか。乗せてもらってよろしいかなポチ殿?」


「わん!」


 うんうん。やっぱりポチは良い奴だな!


「な?ポチは良い奴だろ?さっ、戦場まで案内頼むよガリオンさん」


「ああ。任せてくれ」



 それからガリオンさんの案内で、俺たちは戦場へと向かった。その途中、ガリオンさんから色々話を聞くことにした。


「なあなあ、オーク3万って結構やばいのか?」


「確かに少々まずいかも知れんな。オーク3万に対して、我々マール王国軍が今集められた兵士は2万といったところだ。だが、王宮の特別魔法部隊が各地から呼び寄せられているから、それまでなんとか持ち答えればこちらの勝ちと言っても良いだろう」


「そうなのか。でもそれだと今集まってる2万の兵士はかなり死んじゃうんじゃないの?」


「そうだろうな。だが今はそれしか方法がない。それに自らの命でマール王国の国民を守れるんだ。こんなに名誉なことは無いだろう」


 そういうもんなのか。死んじまったら意味ないと思うけどな。まあそこは平和ボケした日本との価値観の違いだろうな。


「ところでルティーは何しに戦場行くんだ?とても兵士の格好には見えないんだが」


「ああ、俺はそもそもマール王国の人間じゃないからな。ただオーク共が気に入らないから奴らを消しに行くだけなのさ。これでも結構魔法使えるんだぜ?」


「おお!それは心強いな。ぜひマール王国に助太刀頼む。お、戦場が見えてきたな。俺はここで街に戻るよ。本当は俺も戦場で戦いたいんだが、今回は街の方に回されちまってな。俺の分までオーク共を蹴散らしてくれると助かる」


「おお任せてくれ。俺がオーク共を一匹残らず全滅させてやるからな。案内助かったよガリオンさん。そんじゃまた!」


「ああ!健闘を祈る!」



 こうして俺はガリオンさんと別れ、ポチと共に戦場に向かうのだった。

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ハーレム王国建国計画! もりもり森三 @112635679

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