第14話 共有スキル
「ルティー、みんな自分の家が決まったわよ...ってずいぶん広い畑ね。それに城壁まで出来てるし。あれからまだ30分くらいしか経ってないと思うのだけど」
「ああ、ちょっと本気出した。おかげでクタクタだよ」
「そうだったのね、お疲れ様。あとでマッサージしてあげるわね」
なにぃいい!マッサージだと?うへへ。頑張ってクタクタになった甲斐がありましたな!我、すごく楽しみである!
シーナと住宅地エリアまで戻ると、大変満足そうな表情のみんなが居た。
「ルティー!私、最初のお家にしたよ!やっぱりあそこが1番好きみたい!」
「ルティー君!キッチンが凄かったよ!早くあそこで料理したいな!」
「ルティーさん!お風呂まで付いてるなんて貴族様になったみたいですよ!」
「トイレがピカピカー!すごーい!」
うんうん。それぞれ自分の住みたいところを選べたようだな。
電気もガスも水道も普通に使えた日本から来た俺からすると、まだまだ満足のいく家は作れていないのだが、この世界の基準で考えると相当豪華な作りのようだ。
お風呂は基本、王族や上級貴族の家にしか置いていないらしく、下級貴族の娘であるシーナもお風呂に入ったことは無いそうだ。ふむ。せっかくだから初めてのお風呂は家のお風呂ではなく、もっと豪華な温泉で華やかなお風呂デビューを飾らせてあげたい。よし、決めた。温泉を作ろう!
ということで急遽、住宅エリアの近くに立派な温泉を作成した。名人に温泉を掘り当ててもらい、親分さんと土魔法で風情のある浴槽を作ってみた。夕飯を食べ終わってから、後でみんなと入りに行くつもりだ。
え?もちろん俺も一緒に入りますよ?当たり前じゃないですか。どちらかと言うとそのために作ったようなもんですからな。男湯女湯なんて区切りは作ってないし、今後も必要ない。なぜなら我がハーレム王国には女しかいないからだ!(俺とポチを除く)ふふふ。とても楽しみだ!どんな楽園が待っているんだろう!
それと、これまで触れてこなかったトイレだが、この世界ではボットン式のトイレが主流だった。人が多く住む所には、トイレ処理士という職業の人がいるらしく、彼らにお金を払うことで溜まった排泄物を定期的に処理してもらっているようだ。街外れのシーナたちはどうしていたのか気になったが、あえて聞いていない。俺はデリカシーを身につけたジェントルマンだからな。
そしてみんなに作った家もこの世界のトイレ同様ボットン式トイレを採用している。まだ水道設備が整っていないからね。ボットン式トイレと言うと臭いが上がってきて不潔というイメージがあるが、そこは親分さんクオリティ。まったく臭いなんて上がってこないし、定期的に俺がクリーンをかけるので、トイレ内は非常に綺麗だし、溜まった排泄物も一緒に処理できる。恐らく、トイレ処理士もクリーンの魔法を使っているんじゃないのかなと思う。
とはいえ今は6軒しか家がないから、俺がみんなのお風呂にお湯を入れて、ボットントイレを掃除して、と回ることが出来るが、国民が増えてきたらそうはいかなくなるだろう。
ふむ。これは早急に水道設備を整える必要があるな。確かここから20分ほど歩いたところに川が流れていたから、あの川を使わせてもらおうう。親分さんにかかれば水道工事などちょちょいのちょいだからな。水道工事が完了すれば、家の中に蛇口を設置することも出来るし、トイレもボットン式から下水道式に変えることができる。
ただ風呂がなー。温泉を作ったから、最悪毎日そこに入れば良いけど、たまには自分の家の風呂でゆっくりしたい時もあるだろうしな。ガスも電気もないから水は出せるけど温める事が出来ないんだよな。みんなが火魔法さえ使えれば解決するんだけどな。
シーナによると、この世界では魔法を使えるのは基本的には貴族だけらしい。あれシーナは?と思ったが、どうやら貴族であることに加え、更に魔法学校で魔法を習得する必要があるのだそうだ。シーナは魔法学校に入る前に家を飛び出してきたので魔法は使えないらしい。ただの村娘だった他の4人ももちろん使えない。
うーん、困ったな。なにか解決策はないものだろうか。あ、そういえばシーナたちをハーレム王国の勧誘に成功した時に、新しいスキルが出てたよな。あれ使えないだろうか。えーっと、そうこれ、共有だ。取得に必要なSPはなんと50。ぶったまげである。だが、これまでの経験からして、ぶっ飛んだSPのスキルほど、ぶっ飛んだ性能をしているのは間違いない。それに俺の保有SPは今81もあるので余裕で取れる。うん。これは取るしかないだろう。それじゃ早速。
【SP50を消費して〈共有〉を取得しました。〈共有Lv1〉を取得しました】
取得が完了すると、共有スキルの大まかな情報が脳内に流れてきた。
ぬおおおおおおおお!なんだこれ!破格すぎる!なんてスキルを手にしてしまったんだ!まさに俺のためにあると言っても過言では無い。
あとでみんなに試してみよーっと。
今後の様々な課題が見えたところで、もう今日は日が落ちるので、みんなで夕食を取って、みなさんお楽しみの温泉に入りに行こう。
「みんな、夕食はどこで食べる?俺ん家は狭いからみんなの家のどこかで食べたいんだけど」
「はい!私の家で食べよう!ルティー君が作ってくれたあの素敵なキッチンで料理してみたいんだ!」
マリアが立候補してくれたので、みんなでマリアの家に移動することにした。
「ルティー君!今日は私に料理を作らせてくれないかな?前にルティー君、私の料理食べたいって言ってくれたでしょ?頑張って作るからさ!だ、だめかな...?(チラッ)」
ぐはっ!なんて可愛い上目遣いなんだ!無意識でこういうことやっちゃうとは、さすが天然属性持ちマリアだ。
「いいに決まってるだろ!むしろ俺はもうマリアの料理しか食わん!」
「ええ!そ、それはダメだよ!私のよりルティー君の料理の方が全然美味しいんだから! 」
何を言っているマリアよ。可愛い女の子が俺のために作ってくれた料理と、スキル任せで簡単に作った料理、どっちが美味しいかなんてもはや比べるまでもないだろう!
という訳で、マリアとキッチンに来た。他のみんなはリビングで料理ができるまで待ってもらっている。そしてなぜ俺もキッチンにいるかと言うと、共有スキルを検証するためである。
「じゃあマリア、さっそく夕食を作ってくれるか?ちょっと試したい事があるから、まずいつも作る量の半分だけ作ってくれるか?」
「うん!わかった!」
さっそくマリアがせっせと料理を始める。材料は俺のアイテムボックス内の野菜と肉を提供した。今は種類が少ないけど、明日になればもっと色んな種類の野菜、果物、穀物が手に入るので、みんなには楽しみにしておいて欲しい。
そうだ。農業が一段落したら、次は畜産業もやってみよう。牛乳とか卵も欲しいしな。あとリリーの洋服屋の夢を叶えるために綿花とか蚕も育てないといけないな。ひえー!やることが沢山だ!
そんな事を考えていたら、どうやらマリアが料理を作り終えたようだ。おお!めっちゃ美味そう!トマトスープにキャベツと肉の炒め物、キュウリとニンジンのポテトサラダだ。種類の少ない野菜でここまで作るとは。マリア、恐るべし。
「すっごく美味そうだな!それじゃこれと全く同じやつをもう一度作ってくれるか?」
「うん!わかった!」
今完成したものをアイテムボックスにしまってから、俺はさっそく共有Lv1を発動させて、マリアに俺の料理スキルを共有した。
「うわあ!なんだこれ!ルティー君!なんかさっきよりもっと上手に作れる気がする!一体何したの?」
「ちょっと俺の魔法を使ってみたんだ。それよりどこか体に違和感とかはないか?」
「うん!全然何ともないよ?それより早く料理が作りたいよ!もう始めてもいいかな?」
マリアがすごく燃えているのでさっそく2回目の料理を開始してもらった。
この共有スキル、なんと俺の持つスキルをスキルレベルを半分にしてハーレム王国の国民に共有することが出来るのだ。つまり今、マリアは料理Lv5を使えるようになったという事だ。
共有Lv1だと、スキルは1つしか共有できないが、今後国民が増えることによって共有スキルのレベルが上がっていき、それに応じて共有できるスキルの数も増えていくようだ。
また共有したスキルは、共有した相手に同じスキルを持つ部下が出来ることによって、そのスキルレベルは上昇していくそうだ。
例えば、今マリアに同じ料理Lv5を持つ部下が1人ついたとする。すると、マリアの料理スキルはLv6になり、部下が10人つくとLv7、部下が100人つくとLv8といったように上昇していく。
そして俺的に1番嬉しかったのが、共有した相手がスキルを使用するときに必要なMPは、全て俺が負担するということだ。恐らくみんな保有MPはそんなに高くないと思うから、この仕様はかなり助かった。スキルによってはめちゃくちゃMP使うから、魔力欠乏症からみんなを守ることが出来てよかった。
ただ国民が今よりもっと増えた時に俺のMPが持ちそうにないので、俺は今より更にレベルを上げて、ボーナス兄貴の恩恵であるHP・MP自動回復の回復量をもっと強化する必要があるな。
今わかっているのは大体こんな感じ。あとは、共有するスキルによってどういった違いがあるのかをこれから調べていく必要がありそうだ。
と、共有スキルの確認をしていると、どうやらマリアが2回目の料理を終えたらしい。
「ルティー君!すごいよ!今まで作った料理の中でも1番上手くできたと思う!ルティー君のおかげだね!早くルティー君にもみんなにも食べてもらいたいな!」
ニコニコ顔でとても嬉しそうなマリアをとりあえず抱きしめてから、今完成した料理をアイテムボックスにしまって、みんなの待つリビングに向かった。
「みんなお待たせ!今日は私が作ったよ!ルティー君のおかげで私の料理がパワーアップしたから比べてみて!きっと驚くと思うな!」
「そういう訳で、じゃあまずはこれが以前のマリアが作った料理な」
まずはマリアが1回目に作った料理をテーブルに並べていく。おお、マリアが俺のために頑張って作った料理だ。一口一口噛み締めて食べよう。では早速いただきます!
「うまい!マリア、君は天才だな!」
「相変わらずマリアは料理上手ねえ。とても羨ましいわ」
シーナの言う通り、マリアはとても料理上手なようだ。料理スキルなんて使ってないのにめちゃくちゃうまい。これ、料理スキル使ったらどうなっちゃうのだろう。
「それで、これがパワーアップしたマリアが作った方な」
見た目はさほど変わらないが、お味の方はどのように変化したのだろう。非常に楽しみだ。ではでは早速パワーアップしたマリアの料理、いただきます!
「う、うんめええええ!」
「マリア!あなた本当に凄いわ!はぁはぁ」
「美味い!美味い!美味い!マリア!すごい!」
「マリア!とっても美味しいです!川のせせらぎが聞こえてくるほどですよ!」
「マリアすごーい!我、感動したよー!」
どういう事だ?マリアが共有で使ったのは料理Lv5のはず。だが明らかにこの料理はLv6相当の美味しさだった。その証拠にみんながちょっと扉を開きかけていた。うーん、謎だ。こんな時は名探偵ルティンコの出番だ。
名探偵ルティンコの推測によると、その人が元々持っている素質によってスキルの効果は変動するんじゃないかっていう事らしい。確かに考えてみれば、元々料理が得意だった人と、全く料理なんてした事ない人じゃ、同じ料理スキルを使っても、完成する料理に差が出るのは当然だな。
「良かったー!みんな喜んでくれて嬉しいよ!これからもっともっと腕を上げて、またみんなに美味しい料理を食べさせてあげるからね!」
うんうん。マリアはすごく満足そうだ。みんなには早くLv6でもしっかり自我を保てるようになってもらいたいものだ。そうだ、これからは毎日マリアに料理をお願いしよう。そうすればみんなの料理耐性も徐々についてくるだろうし、俺も可愛いマリアの手料理が食べられる。うん。素晴らしい事尽くしだ。
「じゃあマリア、今日から俺含め、みんなの食事を担当してもらってもいいか?忙しい時は俺がアイテムボックスから出すからさ」
「いいの?ぜひ任せてほしいな!」
よし、交渉妥結だ。うひょー!これから毎日の食事がとても楽しみになったぞ!
「それで、マリアはルティーに一体何してもらったの?」
「いい質問だサリアくん。みんなもよく聞いてくれ。実はな、俺が使えるスキルをみんなに共有できるようになったんだ。具体的には……」
それから現段階で分かっていることをみんなに説明した。魔法やらスキルやら、いまいちピンとこない様子だったので、とりあえずみんなにも共有スキルを試してもらうことにした。俺も色々検証したいことがあるしな。
マリアの料理を食べ終わったあと、みんなと共有スキルの検証をしてみた。その結果、いくつか判明したことがあった。
まず、レベル表示のないスキル、アイテムボックスと生活魔法は共有することができなかった。アイテムボックスは仕方ないにしても、生活魔法はどうにかしてみんなにも覚えて欲しかったんだけどな。まあトイレ処理士が使っているのは恐らく生活魔法だろうから、きっと何らかの取得する方法があるんだろう。そのうち何とかしよう。
そして、加工スキルと採取スキルはそのまま共有することが出来ず、それぞれに含まれるスキルを共有できるようだ。例えば、加工スキルを共有しようとすると、加工スキルの中に含まれる建築、陶芸、革加工など様々な加工系のスキルに分類され、その中からどれかひとつを選んで共有するという仕組みのようだ。親分さんと名人は本当に何でも出来ちゃうから不思議だなと思っていたけど、どうやら様々なスキルの集合体だったようだ。そりゃ凄いわけだ。
それから、一度共有したスキルは完全に相手の一部となり、二度と変更できないようだ。そうとも知らず、料理スキルを共有した事をマリアに謝罪したら「今から選べるとしても私は料理スキルがいい」と言ってくれたので一安心だ。
最終的にみんなが選んだスキルはこんな感じ。
シーナ→回復魔法
サリア→家具工スキル
マリア→料理スキル
サーナ→写本スキル
リリー→裁縫スキル
ふむふむ。みんなやりたいこと、叶えたい夢があって王様はとても嬉しいです!これまで苦労した分、このハーレム王国で存分に人生を満喫してもらいたいものだ。
さて、夕食を食べて、共有スキルの検証も終わったところで、いよいよ本日最大イベント「わくわくハーレムお風呂タイム」を開催するとしよう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます