第13話 ふるさと大改造

 無事に道路工事が完了したので、みんなが待つオシャレハウスに帰ろうと思う。今が大体午後2時くらいだから向こうに着くのは5時くらいになりそうだ。


「そんじゃポチ、今から俺を待つ女の子たちのもとに帰るぞ」


「わん!わふっ、わふっ」


 ん?どうしたポチ。え?背中に乗ってくれだって?ふむふむ。いいだろう。さっき戦いたそうにしてたのを我慢してもらったし、それくらいは許してやろう。俺も走らなくて済むから助かるしな。


 そんじゃ、お言葉に甘えて背中に乗せてもらおう。


「大丈夫か?重くないか?お前は病み上がりなんだから無茶しちゃダメだぞ?」


「わん!」


 ふむ。大変よい返事だ。凄く気合いが入っているようだな。ちなみに、重力魔法で軽くしようか?と聞いたら必要ない!と言われた。


「そんじゃ、この道をひたすら真っ直ぐ進んでくれな。途中で出てきたモンスターは俺がここから蹴散らすから、ポチはひたすら走ることに専念してくれ。もう一度言うけど無茶はするなよ?」


「わん!」


 ということで、オシャレハウスに出発した訳だが。




「うっひぃいいいいいい!」


 どうもルティンコです。この頃ルティーばっかりでなんだがルティンコが怒っているので、久しぶりに本名で挨拶してみました。あ、それと俺は今、風になっています。ポチが想像の100倍走るのが速かったからです。なにこのスピード!軽くギャグ漫画みたいなスピード出てるんだけど?「出てきたモンスターは俺が蹴散らすからポチは走ることに専念してくれ」とかカッコつけてしまったが、全然そんな余裕はない。落ちないようにポチに必死にしがみついているのがやっとだ。飼い主として情けない姿を見せる訳にはいかないので、必死に余裕の表情を保ちながら耐えていると、


 まさかの30分程でオシャレハウスに着いた。


「ポ、ポチ!お前なかなかやるじゃねえか。ここまで乗せてくれてありがとな。ただ次はもっとゆっくりでいいぞ?」


「わん!」


 ポチは褒められたことが嬉しいようで、しっぽをブンブン振って喜んでいた。なんて可愛いやつだ。よし、肉をやろう。


 ポチに肉をやってから、俺はオシャレハウスの中に入った。ポチには即席の豪華犬小屋を作ってそこで待っててもらった。「即席の豪華」って凄い違和感あるけど、即席で作っても一級品が出来ちゃうんだよな、親分さんの手にかかれば。




「ただいまー」


「あらルティー、おかえりなさい。夕暮れ前に帰るって言ってたのに随分早かったわね」


「おかえりルティー!早かったね!」


「ルティー君、お肉おかわり!」


 リビングに入ると、シーナ、サリア、マリアが出迎えてくれた。マリア、ちょっと君は食べ過ぎなんじゃないか?と言おうと思ったのだが、マリアが上目遣いで「ダ、ダメかな?...(チラッ)」と言ってきたので、迷わず追加のお肉を出してあげた。


「ああちょっと色々あってな。あとでみんなに説明するよ。ところでサーナとリリーは?」


「あの2人なら2階の部屋で何やらやっていたわよ?気になるなら行ってみたら?」


「そうなのか。ちょっと行ってみるよ」


 どうやらここに居ない2人は2階にいるらしい。何してるんだろう。めっちゃ気になるんですけど!


 ワクワクしながら2階に上がって2人がいる部屋を探すと、なにやら机に向かって筆を走らせる2人の姿を発見した。


「ただいま2人とも。ところで何やってんだ?」


「わ、わ!ルティーさん!お、おかえりなさい!早かったですね!」


「おかえりルティー!」


 2人は俺に気づくと一旦手を止めて、こちらに駆け寄ってきてくれた。サーナがなにやら慌てていたがどうしたんだろうか。


「見てー!前に頼まれたルティーの服、いくつかデザインしてみたよー!どうー?かっこいいでしょー!」


 おお。どうやらリリーは俺が前に頼んだ服のデザインをしてくれていたようだ。ふむ、どれどれ。


「おお!なんてかっこいいデザインなんだ!リリー!まさに君は天才だ!あとでこれ通りに作ってみるからちょっと手伝ってくれな。いやー、助かったよ。ほんとありがとうな!」


「うん!えへへー!良かったー!ルティーのために頑張って考えたんだー!」


 ニッコニコで答えるリリーがあまりにも可愛いすぎて思わず抱きしめてしまった。


「えへへー」


「あ!ずるいです!私にもしてください!」


 そんな事を言うサーナも可愛かったので一緒に抱きしめてしまった。ええ、とても幸せでしたよ。主に胸あたりが。


「ところでサーナは何書いてたんだ?」


「わ、私は、その...な、内緒です!いつか必ず見せますから!それまで待っててください!」


「そうかそうか。じゃあ楽しみにしてるな!」


 どうしよう。すっごく楽しみだ。早くそのいつかが来ることを願うばかりだ。で、何しに来たんだっけ。あ、そうそう。


「ちょっとみんなに話があるから2人とも下に降りてきてくれるか?先に下にいるからな」


 そう言ってリビングに戻ってから数分後、全員が揃ったので早速話をしようと思う。


「よし、全員揃ったから話を始めるぞ。まず、ここから俺ん家までの道が無事完成した。これでみんなを馬車に乗せて運べるようになったから、いつでも出発できるぞ。それで、次が本題なんだけど、実はみんなには紹介したいやつがいるんだ。ちょっとみんな一旦外に出てもらってもいいか?」


 そう言って、みんなを犬小屋の前まで案内して、俺はポチをみんなに紹介した。


「みんな、こいつが今日から俺たちの新しい家族になったポチだ。素直でとっても良い奴なんだ。道を作ってる途中でモンスターに襲われてるのを助けてやったんだ。俺が発見した時はもっと小さかったんだけど、なんか気づいたらこんなでっかくなってたんだ。ほらポチ、みんなに挨拶だ」


「わふっ」


「よろしくって言ってるぞ」


「「「「「か、かわいいー!」」」」」


 あれ、そういえば俺、いつの間にかポチの言葉がわかるようになってる。ふはは。さすがは飼い主だな。


「ちなみに俺が早く帰って来れたのはポチのおかげなんだ。ポチは走るのが凄く速くてな、ここまで背中に乗せてもらったんだ。ちょっと死ぬかと思ったけど」


「へえ、ポチは凄いのね。これからよろしくね、ポチ!」


「よろしく!ポチ!」


「ポチ君!よろしく!」


「ポチさん!よろしくお願いします!」


「もふもふー!きもちー!」


「わん!」


 よしよし。みんなもポチと仲良くなれたようだな。犬アレルギーの人とかいなくて良かった。ちょっと心配してたんだよね。まあいても治すけど。


 ポチのおかげで早く帰ってこられたので、大体今が午後3時くらい。今から出発しても、ポチに馬車を引っ張ってもらえば、余裕で夕方には我が家に着くだろう。もちろんポチにはあの漫画のようなスピードは出さないように言うつもりだが。とりあえずみんなに聞いてみるか。


「みんな、思ってたより早く帰ってこられたから、今から出発しても大丈夫か?何かノーゼンの街で買い忘れたものとかあるか?」


 みんなに聞いたところ、みんな揃って特にないようだ。あ!そういえば俺、鉱山がどこかにないか聞くの忘れてたわ。まあ別に今すぐどうこうという訳でもないので、次ゴルドフさんのとこに行った時に聞いてみよう。



 そういう訳で出発しようと思ったのだが、


「ちょ、ちょっと待ってよルティー!この素敵なお家はどうするの?せっかくルティーが建ててくれたのに!」


 サリアが今にも泣き出しそうな顔で言ってきた。ああ、そういえばそうか。もうそのまま放置で良いかなと思っていたんだが、サリアはこのオシャレハウスをとても気に入ってくれてるしな。うーん、どうしたものか。あ、そうだ。


「大丈夫だサリア。この家も持っていこう」


 そう言って、俺はオシャレハウスを丸ごとアイテムボックスに入れた。ついでに犬小屋も。うひょー!流石すぎるぜアイテムボックス。


「うわあ凄い!さすがだねルティー!」


 うんうん。サリアも満足そうだ。そんじゃ、出発と行きますかね!


「ポチ、悪いんだけどちょっと馬車引っ張ってくれるか?馬車ごと軽くするから重くは無いと思うけど」


「わん!」


 ポチが任せてと言っているので、早速みんなを馬車に乗せて我が家へと出発した。ちなみに俺はポチの上でスピード調整と遭遇するモンスターの対処を担当した。



 それから馬車で走ること2時間程。無事、俺たちはハーレムタワーの下まで到着した。


「みんなー、着いたぞー!見よ!これが俺の作ったハーレムタワーだ!」


「うわ、なんて高さなの!近くで見ると本当に凄いわね!ここがモールス大森林の中なんて信じられないくらいだわ」


 シーナが感嘆の声を漏らし、他のみんなもハーレムタワーを見上げてすごいすごい!と喜んでくれていた。いやー、作った甲斐がありましたな!


「この塔はあのてっぺんまで登れるように作ってあるから、あとでみんな一緒に登ろうな。それより先にまずはみんなの家を建てちゃうな」


 そういって俺はマイホームがある場所の近くにオシャレハウスをアイテムボックスから出した後、その横に同じような家を4軒並べて建てた。全部全く同じだと面白くないので、それぞれちょっと仕様は変えてある。もちろん食器やベッドなどの家具はしっかり完備されている。


「よし。みんなの家ができたぞ!5軒あるからそれぞれ気に入ったところに住んでくれ」


「「「「わー!」」」」


「ルティー、何から何まで本当にありがとう。大切に住まわせてもらうわね!」


 シーナが素敵な笑顔で礼を言ってきた。もうだいぶ俺に遠慮する癖が無くなってきているな。うんうん。とても良い傾向だ。他のみんなはもうすでに新しく建てた家に向かって走り出しており、それぞれ住みたい家を選ぶのに必死だ。


「ほらシーナも行ってきな。早くしないと選ぶのなくなっちゃうぞ?」


「ふふっ、そうね!じゃあちょっと行ってくるわね!」


「おうよ。俺はちょっとやる事があるから、みんなの家が決まったら教えてくれな」


 そう言ってシーナを見送ったあと、俺は早速やるべき事をやってしまうことにした。


「ポチにもあとでちゃんとした家を作ってやるからな。俺は今から色々やる事があるから、ポチはここでみんなの家を見張っててくれ。万が一モンスターが来たら大変だからな。頼んだぞ、ポチ」


「わん!」


 まったく頼もしい愛犬である。こいつをいじめてたやつらは俺が責任をもってお仕置きしてやらねばならんな。


 さて、このハーレム王国を確かなものにするために国王として色々やらなければならないことがある。それを早速実行に移すとしよう。


 あれ、そういえば王国王国言ってるけど、国の成立条件ってなんだっけ?領土、国民、主権だっけ?まあよく分からんけど王国って言っても別にいいよね。うん。いいだろう。俺がそう決めた。異論は認める。


 ちなみに俺が今からやろうとしているのは、畑の拡張及び種まきと、このハーレム王国を囲う城壁の設置である。ここはモンスターが多くいるモールス大森林の中。国民がモンスターに襲われでもしたらひとたまりもないからな。それを防ぐための城壁を作る。広さはそうだな、今後国民が増えたり、畑を拡張することを考えてかなり広めに作っておくか。まあ万が一広さが足りなくなっても、その都度更に城壁を拡張すればいいか。スキル使えば簡単だしな。


 そういう訳で、まずは辺り一面の木の伐採だな。それじゃあ土魔法さん、名人、お願いしゃーす!



 ズドドドドドドドドドドドド

 スパパパパパパパパパパパパ


 過去最大出力で土魔法をぶっ放していく。まあ土を掘る作業の応用なのでMPはほとんど減らないんだけどね。そして切った木を片っ端からアイテムボックスに突っ込んでいくと、そこには東京ドーム20個分は入るんじゃないかという程の何も無い平地が広がっていた。


「おお、見事になんにも無いな。いやー、俺の森林破壊能力もだいぶ腕を上げたもんだぜ」


 環境保全の団体がいたら半殺しにされそうなセリフを吐いてから、さっそく城壁の設置に取り掛かる。


「高さはそうだな。50メートルくらいあればいいか。それじゃ、土魔法さん、親分さん、お願いしゃーす!せーの、よいしょーー!」


 ズドドドドドドドドドドドド

 ズドドドドドドドドドドドド

 ズドドドドドドドドドドドド




「ふぅ、ふぅ、ふぅ」


 さすがに土魔法で色々生成したので、MPが結構持っていかれた。だが、広がった平地を囲うように、高さ50メートルの立派な城壁がついに完成した。これでこの王国内にモンスターが入ってくることは無いだろう。城壁の上にはちゃんと人が登れるような足場も作ってあるし、ここから城壁外のモンスターに魔法を飛ばすこともできる。ふむ。なかなかに素晴らしい城壁が出来たものだ。


「あとは、畑か」


 俺は以前作った畑の前まで来ると、野菜用とリンゴ用で合計2ヘクタールだった畑を、野菜用の畑4ヘクタール、果樹園4ヘクタール、穀物用の畑6ヘクタール、ゴールドリンゴ専用の畑1ヘクタールの合計15ヘクタールの大農園に大改造した。すでにノーゼンの街で新しく手に入れた種や苗を植えておいたので、明日の朝には全て収穫出来るだろう。またアイテムボックス内の量がとんでもない事になりそうだ。



 こうして、領土の拡張、城壁の設置、畑の拡張と種まきが無事完了したところで、シーナが俺を呼びに来るのが見えたので、みんなの所に戻ることにした。

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