第10話 国民とモッコリ病

 食事を済ませてから、俺はこの世界についてとか、盗賊の件についてなど、彼女たちから色々教えてもらった。シーナがここにいる中で1番知識があったので、主に彼女が教えてくれた。


 シーナによると、この世界には、ユースタス大陸という大きな大陸の上に4つの大国が存在していて、定期的に戦争を繰り返しているようだ。今は戦争は起こっていないが、いつ起こってもおかしくない緊張状態が続いているようだ。


 平和な日本で育った俺からすると、なんで戦争なんかすんの?バカなの?って思うけど、実際日本だってかつては戦争していたし、外国では普通にまだ戦争とかしてたからな。いつの時代もどの世界も争いは絶えないみたいだな。


 この4大国はユースタス大陸の東西南北それぞれに位置していて、東に位置するのがゲルド王国、西がマタタ王国、南がマール王国、北がアルテカ王国という名前だそうだ。ちなみに俺たちが今いるのは南のマール王国で、すぐそこに見えるのはノーゼンの街というマール王国の中でも有数の商業都市だそうだ。


 そしてユースタス大陸の中心にはモールス大森林という大規模の森が広がっており、この森はどの王国にも属さない場所らしい。なぜ各国がこの森に手を出さないかと言うと、この森の木が異常に硬いうえに、強力なモンスターも出現するため、開拓するのに莫大な資金、労力、時間が掛かるのだ。モールス大森林を開拓して街を作るより、もうすでに出来上がっている街を隣国から奪った方が手っ取り早いという訳だ。


 ふむ。その森、凄く心当たりがある。どうやら俺が転移してきたのはモールス大森林という森だったようだ。たしかに木は硬かったし、強力なモンスターは多かったな。転移してすぐあいつらに出会ってたら間違いなく瞬殺されていただろう。序盤でスライム先輩方やマッスルラビットに出会えたのは不幸中の幸いだったようだ。



 暦に関しては、あまり地球と変わらなかった。違うのはひと月30日で固定ということだけだった。今は4月でちょっと肌寒い程度だ。1年を通して四季があるそうで、まあ日本と似たような気候のようだな。


 通貨は全ての国共通で、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類。シーナの話を元に、日本円の価値に換算してみると、


 銅貨=100円

 銀貨=1000円

 金貨=10万円

 白金貨=1000万円


 といった具合だった。まあ正直金がなくてもスキルがあるので生きてはいけるけど、金持ちの方がモテるしな!ガンガン稼いでいこう。


 何故こんなにシーナが博識かというと、実は彼女、マール王国の下級貴族の娘らしい。詳しくは聞かなかったが、なにやら親と揉め事を起こしてそのまま家を飛び出してきたらしい。そしてその時に他の4人と出会い、この村を作ることにしたそうだ。


 シーナ以外の4人が元いた村は、ここから10キロほど行った場所にあるそうで、4人は昔からの幼なじみらしい。彼女たちが小さい頃の村はまだ活気があって十分な食事もあったらしいが、5年ほど前に村がモンスターに襲われた事件をきっかけに村は一変してしまったようだ。駆けつけたノーゼンの街の騎士団によってモンスターは駆除されたものの、すでに村は壊滅状態。4人もモンスターに襲われており、騎士団員の治療により何とか命は助かったものの、その時に手足を失ってしまったそうだ。


 それから何とか生き残った者たちで村を復興させようと試みたものの、なかなか上手くはいかず、村はどんどん貧しくなっていくばかり。その結果、口減らしのために4人は村を追い出されてしまったそうだ。


 彼女たちの話を聞くに、この世界、かなりの男尊女卑だ。恐らく戦争のために兵力として男の方が需要があるからだろう。ハーレム王国を目指す俺としては非常に不愉快だ。俺の作るハーレム王国は男尊女卑なんかではなく、女尊尊尊の世界なので、ぜひ全世界の女性たちは我が王国に来て欲しい。


 シーナ達がここに移り住んできたのは今から1年ほど前で、もう誰もいない廃村をなんとか住めるように改良したそうだ。畑で取れた作物や手芸品などを街に売ってなんとか生活していたが、かなり生活は貧しく1日1食が普通だったようだ。


 そして、あの盗賊共が現れたのが今から3ヶ月ほど前で、突然現れて「ここは俺たちの縄張りだから、ここに住みたかったら金を寄越せ。それができないならこの村は消す」と脅してきたらしい。到底彼女たちでは奴らに逆らうことは出来ず、さらに生活を切り詰めてなんとかお金を納めていたのだが、今月もきちんとお金を納めたのにも関わらず、さらにお金を要求してきたそうだ。まあその辺からは俺も現場にいたし、なんとなくわかる。とりあえずあの盗賊共はぶっ殺して良かった。ただもうちょっと苦しめてやれなかったのが心残りだ。



 彼女たちから聞いたのは大体こんなところだ。ああそうそう、俺の出自について聞かれたから「実は記憶を失くしていて、この世界の事が思い出せないんだ。気づいたら森の中にいた」と答えておいた。なぜ異世界から来たと言わないかって?だってその方がなんかカッコイイじゃないか!で、今に至る。


「森って、まさかモールス大森林のこと?よく生きてここまで来れたわね…」


「まあ結構死にかけたけどな。ほら、あそこにでっかい塔が見えるだろ?あそこが俺ん家」


「「「「「う、嘘……………」」」」」


 シーナが聞いてきたので、ここからでも見えるハーレムタワーを紹介してあげたらみんな良いリアクションをしてくれた。ああ癖になる。やっぱり驚いている顔も素敵だぜ。


「あそこが俺ん家、じゃないわよ!なによあの高さ!まさかあれもあなたが…うんあなたが作ったんでしょうね。もう私の中の常識は粉々に砕け散ってしまったわ」


「モールス大森林に家を建てる人なんて初めて聞きましたよ!さすがルティーさんです!」


 シーナがついに驚くことを辞めてしまった。がっくしである。そしたらサーナが嬉しいことを言ってくれた。ふむ。なんていい子。後でいい物をやろう。シーナもサーナを見習って欲しいものだ。


「そういえば、ルティーは何しにノーゼンに行くの?」


「なにって、そりゃあハーレム王国を築くために決まってるだろう」


「はーれむおうこくー?なにそれー!楽しそー!」


 リリーが聞いてきたので、丁度いい。ここでみんなに俺のハーレム王国の素晴らしさを全身全霊でプレゼンするとしよう。サラリーマン時代に鍛えた俺のプレゼンテーション能力を発揮する時が来たようだ。


「いい質問だリリーくん。みんなもよく聞いてくれたまえ。いいか!俺の作るハーレム王国とは、可愛い女の子たちが毎日幸せに暮らせる国のことだ!具体的には…………」



 あれから2時間、俺の熱い熱いハーレム王国のプレゼンテーションは続いた。


「はぁ…はぁ…はぁ…どうだっ…!俺のハーレム王国の素晴らしさは!」


 全力を尽くし満身創痍の俺。だが、伝えることは全て伝えきった。あとは彼女たちにどう響いたかだが。



「「「「「ぐすっ、ぐすっ…」」」」」


 彼女たちはみんなポロポロと涙を流していた。どうやら俺の強い意思は彼女たちに伝わったようだ。


「そ、そんな夢のような場所が本当にあるっていうの…?」


「ああ、絶対に作ってみせる。なぜなら俺はハーレム王になる男だからだ!」


「「「「「か、かっこいい………」」」」」


 シーナの問いかけに、キリッとドヤ顔を決めてやると、みんなは頬を赤く染めて照れてくれた。ひとまずモッコリ病を発動させてから俺は言う。


「だからみんなには俺について来て欲しい。必ずみんなを幸せにすると誓おう。どうだろう、ハーレム王国の国民になってくれるかな?」


「なるわ!」「なる!」「なるよ!」「なります!」「なるー!」


 シーナ、サリア、マリア、サーナ、リリーがハーレム王国の記念すべき初国民となった。


【取得条件を満たしました。〈共有〉が取得可能です。SP消費は50です】


「いやったあああああ!FOOOO!」


 久しぶりにレーザーなラモンになった俺は思わずみんなを抱きしめてしまった。なにやらスキルが開放されたが今はそれどころじゃない。


「わ、わ、わ、ちょっと!」


「「「「えへへ……」」」」


 シーナはちょっと慌てていたが、他の4人は素直に喜んでくれた。シーナ、君はまさかツンデレの属性を持ってるのか!


「ところで、そのハーレム王国ってどこに作るつもりなのかしら。この大陸に自由に国を作れる所なんてもうモールス大森林くらいしかないわよ?」


「へ?」



 なにぃいい!そんな馬鹿な!街に行って目立って目立って目立ちまくったら勝手にハーレム王国が出来るんじゃないのか。くっ、なんという事だ。俺の脳内お花畑辞書の知識にはそんな事載っていなかったぞ!


「うーん。困ったな」


 モールス大森林か。モールス大森林と言えば、俺が転移させられた場所だが…はっ!まさか俺がモールス大森林に転移させられたのは、ここにハーレム王国を築きあげなさいという女神様(会ったことは無い)からのお導きなのか!俺のハーレム王の才能を見破るとはさすがは女神様だぜ。そうか、そういう事だったのか。ならばやるべき事はひとつ。


「お、俺ん家くる?」


 しまった。The童貞のような誘い方になってしまった。だってしょうがないじゃん。こんな可愛い子たちを家に誘うなんて生まれて初めての経験なんだから。べ、別に俺は童貞なんかじゃないけど?ただ本気で魔法使いになろうとしてただけだし。


「ルティーがいるなら安心だとは思うけど、ほんとに大丈夫?モールス大森林に住むなんて不安で仕方ないのだけれど」


 シーナの指摘はごもっともだ。誰が好き好んでわざわざあんなモンスターのいる場所なんかに住みたいと思うだろうか。だがまあ大丈夫。俺には考えがある。


「大丈夫だ。ハーレム王の名にかけて、みんなの事は俺が絶対に守るからさ。それに俺には考えがあるんだ」


 まあ今思いついた対策は家に帰ってからやるとして、せっかく街の近くまで来たんだし街に行ってみるとしよう。色々買いたいものもあるしな。あ、あと鉱山についての情報も聞きたい。


「それでさ、俺ん家に行く前にあそこのノーゼンの街に行ってみたいんだけど、シーナ、案内頼めるか?」


「ええ、全然いいわよ」


「他のみんなはどうする?一緒に来てもいいし、ここで待っててもいいぞ?買うものだけ買ってすぐ戻ってくるから、そんなに時間はかかんないと思うぞ」


「私はちょっとこの素敵なお家を探検して回りたいからここで待ってる!」


「ルティー君、私もっとあの美味しいお肉食べたい」


「私は街に行きたいです!ルティーさんと一緒にいたいですから」


「わたしも行くー!楽しそー!」


 ふむ。みんなが可愛すぎる件について。特にサーナ、抱きしめてもいいか?(キリッ)

 ていうか、回復魔法Lv10をもってしても治せなかった俺のモッコリ病がそろそろ限界突破して命の危険が迫っている気がする。



 という事でサリアとマリアはお留守番組で、俺、シーナ、サーナ、リリーで街に行くことになった。出発する前に、マリアのためにレッドボアのステーキをテーブルいっぱいに並べてあげた。2時間前に昼飯を食べたばっかだけど、本人曰く、お肉は別腹らしいので大丈夫だそうだ。


 では早速、ノーゼンの街に行ってみようと思う。この世界に来て初めての街だ。すごくワクワクする。一体どんな可愛い女の子たちが俺を待っているんだろうか!

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