第6話 拠点完成

 お昼ご飯を食べ終わったところで、さっそく家を作っていこう。使うのはユグドラシルの木材だ。大きさはどのくらいにしようか。8畳くらいの小屋を作ろうと思っていたんだが、これだけ広いスペースがあるんだ。せっかくなので20畳くらいの小屋を作ってしまおう。


 親分さんいわく、家を建てるにはまず、地盤をしっかりさせないといけないらしい。地盤が弱いといずれ家が傾いちゃうんだって。


 地盤の強化か。土魔法でなんか出来そうな気がするので、さっそくやってみる。20畳が余裕で入りそうな範囲を土魔法で大体3メートルの深さに掘っていく。ほう。地面を掘るのは全然MPは消費しないようだ。そしてそこに同じく土魔法と水魔法でセメントと水を流し込んでいく。こうすることでセメントが水と化学反応を起こして硬化するのだ。うわ、これめっちゃMP食うな。まあでも仕方ない。地盤改良は立派な家を建てるには必要なことなのだ。


 俺は気合で深さ3メートルの穴に大量のセメントと水を流し込んでいった。うっ、やばい。魔力欠乏症になりそう。MPを確認すると残りMPは2。ふう。よく頑張った。あ、土魔法と水魔法がLv2になってる。土魔法も水魔法も、火魔法と同じ成長仕様だから、次からはもうちょっとMP消費を抑えることが出来るだろう。


 セメントが固まるまでMPを回復させながら待ってから、いよいよ木材を使って小屋を建てようと思う。それでは親分さん、よろしくお願いしゃーす!


「けんちくかんけーとんとんとーんっ!」




 なんということでしょう。あの何も無かった平地にそれはそれは立派な小屋が建っているではありませんか。中を覗いてみると、ベッドにダイニングテーブル、イス、キッチンまでしっかり完備。そしてガラスの窓からは夕暮れの太陽の光が部屋全体を優しく照らしている。ああなんて素晴らしい。この小屋を建てた匠はなかなかの腕の持ち主のようだ。まあ僕なんですけど。ちなみにガラスは土魔法と火魔法と加工スキルで簡単に作れた。


「家できたどー!」


 見てくれ!ついに俺だけのマイホームが完成した!よし、今日を俺のハーレム王国建国記念日として祝日にしよう。あれ、この世界の暦ってどんなんだろう。まあいずれ街に行けばわかるだろう。


 ちなみに小屋を作り終わったときに加工レベルがLv4になった。ますますものづくりが捗るぜ!


 俺は完成した小屋の中に入り、作っておいた椅子に腰かけた。


【取得条件を満たしました。〈生活魔法〉が取得可能です。SP消費は1です】


 おお!なんか出てきた!生活魔法?何ができるんだろう。俺の残りSPは11。SP大富豪の俺からするとたった1の消費など屁でもない。よし、取ろう。


【SP1を消費して〈生活魔法〉を取得しました。〈生活魔法Lvー〉を取得しました】


 お?なんか新しいパターンだ。レベルがないのか。ふむふむ。なるほど。今流れて込んできた情報によると、MPを使って洗濯や掃除などができるらしい。試しに自分に使ってみる。


「ていっ」


 ホワアアアア


 おお!3日間風呂に入ってない体や髪、ずっと洗ってない服が、光に包まれて一瞬でピカピカになった!おっ、歯もピカピカだ!息リフレッシュ。よし、これでいつでも清潔感のある男でいられる。モテる男の最低条件クリアだ。すげぇ。この魔法はクリーンと名付けよう。かっこいい。


 もう少し具体的な使い方を説明すると、自分の体や身につけている服だけに対してのクリーンはたったMP1で済む。なんというコストパフォーマンスの良さだ。SPも1しか使わなかったし。まさにコスパ界の革命児だ。そして範囲を広げる時は、円状に広がる適用範囲の半径10メートル毎にMP1が消費される。つまり自分を中心に半径10メートルの範囲にクリーンを使うとMP2、半径20メートルだとMP3を消費するといった仕様だ。やはりコスパがいい。



 よし、ひとまずこれで衣食住充実計画の「住」が解決した。次は「食」だな。そろそろ肉以外が食べたいし。という訳で前から計画していた畑を作ることにした。



 という訳で外に来ました。広さはどうしようか。とりあえず一辺が50メートルくらいの正方形にしておくか。ではでは、土魔法の出番だ。地面に手を着いて、


「よいしょー!」


 ドゴコココココ


 大体1メートルの深さを掘り返してみた。で、そこに土を流し込んでいこうと思うのだが、畑の土ってどんな土がいいんだろう。ん?どうした名人。畑の土はこうしろ?ふむふむ。わかった。


 俺は名人の言う通りに土魔法にMPを込めて土を出していった。うおおお!MPめっちゃ減っとる!なんの土なんだろうこれは。まあ名人のことだ。きっと凄い土なんだろうな!


 それから歩く所と種を植える所の列を整えて、はい完成!おお、俺が知っている畑だ。

 さっそくあの拾った種を植えてみよう。


 マッスルモンキーの集落で俺が拾った、種が入った小袋は2つある。片方には種が3個入っていて、名人によると全部同じ種類らしい。もう片方には12個入っていて、6種類の種がが2個ずつ入っていた。俺が拾った時は全部違う種類かと思ったけど、どうやら違ったらしい。あの時はまだ名人いなかったからな。ちなみになんの種なのかは、採取スキルLv3ではまだわからないようだ。


 という訳で、さっそく種を植えてみた。ちゃんと間隔をあけて伸び伸び育つようにしてあげた。頑張って育って欲しいものだ。最後に水魔法で水を与えてあげて、農作業終了だ。あとは毎日水をあげればいいだろう。どのくらいで育つのだろうか。非常に楽しみだ!


 これで「食」はもう大丈夫かな?干し肉がちょっと減ってきてるからまた追加するか。前より強くなったし、他に食べれそうなモンスターを探すのもアリだな。よし、「食」も大丈夫そうだ。


 最後は「衣」か。生活魔法と加工スキルがあるから汚れてもすぐ洗えるし、破れてもすぐ直せるから今のまま(普通の部屋着)で特に問題は無い。ちょっとダサいというくらいだ。俺は洋服には詳しくないので、今後街に行った時に可愛い店員さんに服を選んでもらおう。金持ってないけど。まあお金については後々考えよう。というわけで、



「拠点作り終了ー!」


 よし。これで衣食住充実計画は無事に遂行することが出来た。これで当初の目的だった修行に力を入れることが出来る。今日はもう日が完全に落ちてるから明日からだな。とりあえず家に帰ろう。




「ただいまー!」


 俺はマイホームに戻ってきた。1人なのにただいまと言う必要があるのかと思う人がいるかもしれないが、これは家に対して言ってるつもりなので、別に悲しい独り身男性の末路という訳では決してない。ないんだからねっ!


 ああやっぱ家っていいな!なんて落ち着く空間なんでしょう。椅子に腰かけ、ふと窓の外を見ると、綺麗なまん丸お月様が空に浮かんでいた。


「そういえば今日でこっちに来て何日目だっけな」


 ふとそんなことを思った俺はこれまでのことを思い返してみる。ここまで辿り着くのに、相当長い道のりを歩いてきた気がする。


 1日目、マッスルラビットに惨敗するも、スライム先輩方のサポートもあり、反撃に成功。念願の魔法使いになる。料理に挑戦するも、2回も幻想的な虹を架ける。


 2日目、餓死寸前のピンチ。偶然近所でマッスルラビット大量殺兎事件が起き、それを食べて餓死を回避。料理にも成功。ここで衣食住充実計画始動。またもや近所でマッスルモンキー大量殺猿事件が起き、劇的にレベルアップ。ユグドラシル伐採に挑むも惨敗。


 3日目、加工スキルを手にし、ユグドラシルに圧勝。そのまま始まりの地を開拓。切り倒した木材で小屋を建てる。畑を作り、拾った種を植える。生活魔法を覚え、衣類の心配が無くなったため、無事衣食住充実計画終了。


 そして今に至る。


「波乱万丈すぎる!」


 なんと、こっちに来てまだ3日目という事実が判明した。あまりの密度の濃さにもう7日ほど経ってるかと思ってた。ステータスはどうなったんだろう。一応確認してみるか。


「ステータスオープン!」


 名前:ミナギ=ルティンコ

 年齢:16

 種族:人間 Lv 20

 HP:64/64

 MP:11/64

 攻撃:40(+5)

 防御:40

 敏捷:40

 知能:40

 装備:ボーンソード

 スキル:体術Lv2 剣術Lv1 斧術Lv1 火魔法Lv2 水魔法Lv2 土魔法Lv2 痛覚耐性Lv2 料理Lv2 加工Lv4 採取Lv3 生活魔法Lvー


 SP:10


 取得可能スキル

 なし



 おおすごい。スキルだいぶ増えたな。今のところ加工スキルが1番スキルレベルが高いみたいだな。親分さんにはホントにお世話になりっぱなしだ。俺が今使っているボーンソードは確かLv2の時に作ったやつだから、そろそろ新しい武器を作ってもいいかもしれないな。ステータスの確認はこんなところだろう。じゃあ夜飯食ってさっさと寝よう。今日はなんだかすごい疲れた。MPめっちゃ使ったしな。明日から厳しい修行生活が始まるんだ。しっかり体を休めておこう。それでは、おやすみ!




 ー朝7時ー

 おはよう諸君。やはりベッドで眠るというのは最高だな。ちなみに今日は四日目の朝だ。怒涛の毎日すぎて日付感覚を失いがちなので、これからは毎日ちゃんとカウントすることにする。いつまで続くかはわからないけど。


 昨日、拠点が完成したので今日からさっそくレベルとスキルの強化に努めたいと思う。基本的には剣術と体術で戦闘を行い、群れと遭遇した場合は魔法ぶっ放しの脳みそマッスル作戦でいこうと思う。料理や加工、採取スキルもあげたいので、そっちも満遍なく上げていくつもりだ。それと、狩るモンスターはなるべく食べれそうなやつだ。


 そうだ。出発する前に畑に水をやらねば。畑を見に行くと昨日植えた種がもう芽を出していた。おお!いいぞいいぞ。なかなかたくましい生命力だ。


「いいかお前達!おっきくなるためには夢を持つことが大切だぞ!俺の夢は可愛い女の子達とイチャイチャすることだけどな!ぐへへへ」


 おっきくしてるところはお前達とは違うがな!がははは!とルティンコジョークをかましたところで、水魔法でしっかり水を与えてやる。うむ。これでもっとたくましく成長するだろう。



 さて。水やりも片付いたので、いよいよ修行開始だ。向かう場所は特に決めてない。テキトーにぶらぶら歩いてみるつもりだが、この始まりの地に大体1時間圏内で帰ってこられる範囲で修行を行うつもりだ。遠くに行きすぎて帰れなくなったら嫌だからね。一応今までは、ボーンソードで地面に線を書いて、帰りはそれを辿って家まで帰っていた。今回もそれを採用しよう。それでは、


「レッツレベリング!」



 こうしてミナギ=ルティンコの修行の旅が始まった。この先、彼を待ち受けているのは希望か、それとも絶望か、それとも可愛い女の子との出会いか。うん。それがいい。それにしよう。最後のやつ採用。頼んだよ!


 いくつもの困難を乗り越え、彼は今日も進む。彼の旅はまだ始まったばかり。つづく。ちゃんちゃん。

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