第4話 今後の方針

 当分の食べ物が確保できて心に余裕が出来たので、今後の方針を考えることにする。


 ふむ。どうしたものか。ハーレム王国を築き上げるためにはまず女の子に出会わなければならない。であるならば、俺は人がいる街に行く必要がある。


 しかしだ。残念ながら俺はまだまだ弱い。レベルもスキルレベルも圧倒的に低い。今の俺が街に行ったところで、女の子達からしたら俺はただの通行人Bに過ぎない。そんなの絶対にあってはならん。俺の美学に反する。なんでもできる男にならなければ、ハーレム王国など夢のまた夢だ。とするならばやるべきことはただ1つ。


「修行じゃーい!」


 しばらくここで鍛えることにした。早く街に出て誰よりも目立って女の子とイチャイチャしたい気持ちは山々だが、目立つためにはそれなりの準備がいる。今はその期間だと思うのだ。


 というわけでここに拠点を作ろうと思います!


「ふむ。拠点か。拠点ねぇ。んー、拠点って何作ればいいんだ?」


 拠点を作ろう!とか意気込んでしまったが、いまいち何を作ったらいいかわからない。そうだなぁ。よし。


「とりあえず衣食住を揃えよう」


 そういうことにした。


 ではまず「衣」からだな。俺が今着てるのは普通の部屋着だ。外で着るには正直ダサい。だってしょうがないじゃないか。突然来たんだもの。だが心配することは無い。俺には加工スキル親分がいる。さっきマッスルラビットの干し肉を大量に作った時に、同じく大量の骨と皮が手に入った。皮を加工すればきっと服が作れるだろう。ちなみに干し肉を大量生産したおかげで料理スキルと加工スキルがLv2になった。いえーい。


 はい次は「食」ね。食べ物には今は困ってない。大量の干し肉があるからね。水も魔法で出せるし。ただずっと干し肉ってのも飽きるし、なにより栄養が偏ってしまう。健康第一の(コンビニ)生活を送っていた俺にはそれは許せない。じゃあどうするか。そうだ!畑を作ろう。農業ちょっとやってみたかったんだよね。知識なんも無いけど。まあなんとかなる気がする。


 最後は「住」か。昨日はその辺で野宿したけど、確かに家があった方が安心して寝れる。あと風呂にも入りたい。昨日から風呂に入ってないからなんか体が臭う気がする。清潔感はモテる男の必須条件なので、風呂付きの家はマストだ。そういえば家ってどうやって作るんだろう。木?コンクリ?あれ、マジでわかんない。家なんか作ったことないもん俺。ん?どうした親分さん。え?なんか作れそうな気がする?おお!さすがは親分さんだ。まじで優秀すぎる!SP5も使って取った甲斐があったぜ。これからも育てていくんで、よろしくお願いしゃーす。


「なるほど。何も問題はなさそうだ」


 というわけで衣食住充実計画を開始しようと思う。まずは家か?うん。家だな。さあ夢のマイホームを手に入れようじゃないか!


「どこに家建てようかな!」


 そうだ!せっかくなので、俺が最初に転移して来た場所に家を立てよう。初心を忘れるべからず、ってね。


 そういうわけで、俺は始まりの地にやってきた。木に囲まれた小スペース。大体6畳くらい。ああ懐かしい。全てはここから始まったんだ。マッスルラビットに敗れたあの日、一時はどうなるかと思った。だがスライム先輩方のおかげで、今もこうして俺は生きている。魔法使いにもなった。ここに来ると異世界にやってきたのがつい昨日の事のように感じる。まあ昨日の事なんですけど。そして気づいた。


「家建てるスペースがない」


 あらやだ、こりゃ困った。うーん、どうしようか。場所を変えるか?いや、ならぬ!今の俺に場所を変えるという選択肢など無い。なぜなら、ここは始まりの地なのだ。それにさっき思い出にふけて、なんか凄くカッコイイ雰囲気を出してしまったのだ(こっちが本命)。漢ルティンコ、ここで引く訳には行かない。というわけで、


 俺は木こりになった。




「ていやっ!ぐはっ!そいやっ!ふがっ!」


 どうも、木こりです。俺が今手にしているのは親分さんに作ってもらったボーンアックス1号さんでーす!カッコイイでしょう!ただ、木が硬すぎて1回1回斧を振るう度にダメージを喰らっています。HPは減ってないけども。あ、それと最初に斧を振った時に、斧術スキルと採取スキルが取得可能になりました。必要SPは斧術が1、採取スキルが5だそうです。


「なんだよこの木!木のくせに!硬すぎだろ!」


 俺はこの硬すぎる木、通称ユグドラシル(今命名)を全力で切りつけながら考える。俺の残りSPは1。斧術は取れるが、取ったところでこのユグドラシルを切れるようになるとは思えない。ならばどうするか。俺はなんとなく採取スキルを取ればどうにかなるんじゃないかと思っている。だって消費SP5だし。SPを5使うやつは間違いなく優秀だって親分さんが言ってた。というわけで急遽作戦変更だ。


「レッツレベリング!」


 今はおそらく昼過ぎくらい。日が落ちるくらいまでモンスターを狩りまくれば採取スキルが取れそうな気がする。そうだ!せっかく武器が作れるようになったんだしカッコイイ剣を作ろう!ここは剣と魔法の世界なんだ。剣がなければ始まらないってもんよ。では、親分さーん!お願いしゃーす!


「ていっ!おりゃっ!よいしょー!」


 はい、出来ました!ボーンソード1号さんでーす!うおお!なんてカッコイイ!さっき斧も作ったけど俺はやっぱり剣派だ。


 そういえば何回も親分さんにお世話になって気づいたんだけど、この加工スキル、使うと普通にMPが減る。簡単な加工ならそんなに減らないんだけど、作業が複雑になればなるほど消費MPは大きくなるっていう仕組みのようだ。だから言ってしまえば1種の魔法みたいなもんなのだ。かっこいいぜ親分さん!


 というわけでボーンソードで早速素振りをしてみる。


「めーん!」


【取得条件を満たしました。〈剣術〉が取得可能です。SP消費は1です】


「どーう!」


【SP1を消費して〈剣術〉を取得しました。〈剣術Lv1〉を取得しました】


「くせー!」


 決まった。俺の必殺奥義「めんどくせえ」が炸裂してしまった。小学生の時、この奥義で数多の女の子を笑わせてきた。久しぶりにやってみたが、正直何が面白いんだろうと思う。なんかすごく恥ずかしくなってきた。俺はそっと必殺奥義「めんどくせえ」を脳内黒歴史シュレッダーで木っ端微塵に切り刻んで、もう二度と口にしないと心に誓った。


「つい勢いで剣術スキルを取ってしまった」


 いかん。今は一刻も早くSPを貯めて、採取スキルを取らなくてはならないのに!まあ取ってしまったものは仕方ない。それに、いいじゃないか剣術!かっこいいもん!ではさっそくモンスター狩りに出かけますか。


「そういえばもうマッスルラビットじゃ経験値全然入んないんだよな」


 ふむ。どうしたものか。あ、そうだ。話は変わるが、最近うちの近所でマッスルラビット大量殺兎事件が起きたらしい。どうやら犯人はまだ捕まっていないようだが。うぅ、なんとも恐ろしい事件である。その跡地にマッスルラビットじゃない猿みたいなやつの死体もあった。多分マッスルモンキーという名前なんじゃないかな。俺はそいつを倒しに行こうと思う。きっとこいつが殺兎事件の犯人に違いない!


「待ってろマッスルモンキー。お前を成敗してマッスルラビットの仇を取ってやる!」


 ところでマッスルモンキーはどのくらい強いんだろうか。一応倒した記憶はあるけど、あの時は極限の空腹状態で意識が朦朧としてたからよく覚えてないんだよね。でも確かあの大量殺兎の後、HPが結構減ってたな。マッスルラビットじゃそんなにダメージを受けないはずだから、俺のHPを削ったのはきっとマッスルモンキーだろう。


 なるほど。どうやらマッスルモンキーはそこそこ強いようだ。うんうん。いいじゃないか。経験値が美味そうだ!肉は不味そうだけど。猿肉なんて聞いたこともなければ食べたいとも思わない。でもまあ貴重な経験値だ。大事に頂こうと思う。では出発!



「出てこーいマッスルモンキー!」


 出発してから15分くらい歩いてみたけど、なかなかいない。どこにいるんだマッスルモンキー。ならばと更にもう15分ほど歩いていると、なんだか遠くの方にちょっとした集落のようなものが見えた。とっさに木に隠れて遠くから様子を伺っていると、大勢のマッスルモンキーがなにやら1箇所に円を描くように集まりだした。その中心にはなんだか見たことのあるマッスルモンキーの死体。あれ、そういえばあのマッスルモンキーの死体どうしたんだっけな。


「ウッキャアアアアア」


 そんなことを考えてたら突然1体のマッスルモンキーが怒り心頭といった具合で叫び出した。それに続いて周りのマッスルモンキー達も怒り狂ったように叫び始めた。


 やばいめっちゃ怒ってる!多分というか間違いなく中心の死体をやったのは俺だ。だが俺にも言い訳はある。だって向こうから襲ってきたんだもんっ!正直よく覚えていないけどきっとそうだ。あれはれっきとした正当防衛だ。「眼には眼を歯には歯を俺にはハーレムを」って知らねえのかこのアホ猿公が!かかってこいやコラ!


 いかんいかん。冷静になれルティンコ。さすがにこの数一気に相手にすんのはキツい。恐らく30体はいると思う。今からちゃんとあの死体を火葬してあげるから許してくれないかな。ん?火葬?はっ!そうか!


 天才大量殺兎鬼ミナギ=ルティンコは思いついてしまった。なんというひらめき力の持ち主なんだ。奴らはまだ怒り狂っている。今が絶好のチャンスだ。さあこの天才的作戦を実行に移すとしよう。


 俺は奴らに気づかれないようにできるだけ近くまで木に隠れながら接近すると、すかさず最大火力の火魔法をマッスルモンキーの集団にぶっ放した。


 ブオオオオオオオオオオオ


 集団の中心で爆発が起こり、8割ほどのマッスルモンキーが焼き尽くされた。


【マッスルモンキーを25体倒しました。経験値413を獲得しました。レベルが19になりました。SP9を獲得しました】


 き、気持ちいいい!そう、これだよこれ!魔法の醍醐味ってこれなんだよ!全滅とはいかなかったが大方減らすことが出来た。天才的作戦と言ったが、閃いたのは高火力ぶっ放しという脳筋作戦だった。いよいよ本当に脳みそがマッスルになってきているのかもしれない。リハビリが必要だ。


 残るは6体か。これなら俺でも倒せそうだ。レベルも上がったしな。一応MPは2残しておいたので魔力欠乏症にはギリギリなってない。俺はボーンソードを手に取って、残りのマッスルモンキーに向かって走り出した。



【マッスルモンキーを倒しました。経験値14を獲得しました。レベルが20になりました。SP10を獲得しました】


 最後のマッスルモンキーを倒したところでレベルが20になった。やはり予想通り10レベル毎にボーナスが発生するようだ。お久しぶりです!ボーナス兄貴!今回も報酬よろしくお願いしゃーす!


 兄貴にきちんと挨拶をしてから、俺はマッスルモンキーの集落を探索することにした。

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