第3話 ボーナス兄貴

 30分ほど横になって休んだら、だいぶ魔力欠乏症が回復した。MPを見てみると3回復していた。


「MPもHPと同じ10分毎に1回復するみたいだな。相変わらずなんとも言えん」


 とりあえず今は腹が減ってるので、とっととマッスルラビットを狩りたいところだ。さあ出ておいで筋肉兎!少し歩くと奴はいた。


「そいやっ!」


【マッスルラビットを倒しました。経験値9を獲得しました】


 マッスルラビット討伐はもう慣れたものだ。まだ3体目だけど。我ながら惚れ惚れするほどの適応能力である。さすが未来のハーレム王といったところかな。(キリッ)


 兎肉が手に入ったところで、改めまして、


「レッツクッキング!」


 先程と同じく、そこら辺の枯れ木を集めてその上にマッスルラビットを置く。なんだかこの時点で何かが違う感があるが、俺はちっちゃい事は気にしない男だ。まあ丸焼きでいいだろう。包丁があればもう少し切り分けてもいいかもしれないが。あ、そういえばさっき火葬したマッスルラビットの骨、加工できないかな?


 そんなことを考えながら、今度は威力を弱めた火魔法で兎肉の丸焼きを作ってみた。すると、


【取得条件を満たしました。〈料理〉が取得可能です。SP消費は1です】


 おお!なんか料理スキル出てきた。充実した食生活は人生を豊かにするって聞いたことあるし、健康第一をモットーに生きてきた(コンビニ生活)俺からすると、これはぜひ欲しいスキルだ。


 なによりだ。料理ができる男はモテるのだ!これ以外に料理スキルを取る理由が必要だろうか。


 ただ今はSPが0なので、明日レベル上げしてから取ろうと思う。今日はもう日が暮れてしまったし。


 とにかく今は飯だ!結構動いたからだいぶ空腹が限界に近い。俺は目の前のかろうじて兎肉の丸焼きと言えるものにかじりついた。


「オロロロロロ」


 2度目の虹を架けてしまった。なんだこのクソ不味い肉は。おかしい、確かに焼いたのに。焼いたら美味くなるんじゃないのか?こんな理不尽があってたまるか!


 ああジーザス!やはりこの世界は残酷だった。まるで、可愛い女の子のおっぱいをいただいてると思いきや、よく見たら消しゴムでしたというオチの悪夢のようではないか!


 いやまあでも一瞬でも可愛い女の子のおっぱいをいただけたという妄想を味わえただけでも幸せなんですけどね。


 はっ!そうか!つまり一瞬でもこの兎肉を美味いかもしれないと思えただけで俺は幸せ者ということですね?おっばい大先生!それに、この兎肉のおかけで俺は料理スキルを取得できるようになった。感謝感謝である。


「仕方ない。今日はもう寝よう。明日朝からレベル上げして、料理スキルを取得して兎肉をたらふく食べてやろう」


 あと喉乾いたから水魔法も取ろう。明日は大変だな。まあ明日の俺に任せよう。


 ということでふて寝した。




 ー朝7時ー


「し、死ぬ……」


 やばい。そろそろもう限界が近い。腹が減って死にそうだし、喉が渇いて死にそう。こんなの日本じゃ味わったことがない。ああコンビニが恋しい。


 今の俺はマッスルラビットを難なく倒せるようになったので、スライムベッスよりマッスルラビットの方が経験値効率がいい。食えるし。だから今日はひたすらマッスルラビット狩りだ。ああやばい。まじで限界。


 朦朧とする意識の中、俺はマッスルラビット殺戮兵器となって、ひたすらマッスルラビットを倒しまくった。





 あれから何時間経っただろうか。


「兎肉…ぐへへ…パワー!」


 はっ!いかん。マッスルラビットを狩りすぎて、俺の脳みそがマッスルになってしまっていた。なんか途中でマッスルラビットじゃないやつも倒していた気がするがまあ気のせいだ。


 目の前にはマッスルラビットの死体の山。あとなんかゴツイ猿の死体もある。マッスルモンキーとでも言うのだろうか。


 それにしてもさすがに狩りすぎたか。後半はもうあまり経験値が入んなくなってたしな。すまないマッスルラビットよ。今度なかやまくんを紹介してやるから許してくれ。きっと仲良くなれると思うぞ。とりあえず戦果を確認しなければ。


「ステータスオープン!」


 名前:ミナギ=ルティンコ

 年齢:16

 種族:人間 Lv10

 HP:8/28

 MP:5/28

 攻撃:21

 防御:21

 敏捷:21

 知能:21

 装備:なし

 スキル:体術Lv2 火魔法Lv1 痛覚耐性Lv2

 SP:9


 取得可能スキル

 水魔法 土魔法 料理




 ほう。思ったよりレベルが上がってないな。もうマッスルラビットではレベルが上げづらくなってしまったのだな。あ、でもスキルのレベルが上がってる。うふふ。思わずにやけてしまうぜ。俺も成長したもんだ。


 はい、確認終了!俺は忙しいんだ。なんかステータスとSPの値がおかしい気がするけど今はいいのだ!はやくやらなきゃならない事があるのだ!


「飯だ飯だー!」


 さっそく俺は当初の目的だった料理と水魔法のスキルを取ることにした。


【SP1を消費して〈料理〉を取得しました。〈料理Lv1〉を取得しました】


【SP2を消費して〈水魔法〉を取得しました。〈水魔法Lv1〉を取得しました】


 まずは水魔法でカラカラの喉を潤す。水魔法の使い方はもちろん何となくわかる。


「出ろ!ウォーター!」


 チョロチョロチョロ


 ふふ。俺は一度したミスは二度と犯さないデキる男だ。威力の調整はお手の物だ。ふぅ。蘇った。ああ身体全体に染み渡るぅうう!この世で1番美味い飲み物はなんだと聞かれたら、これからはただの水です!と答えるようにしよう。


 さて。心まで潤ったところで料理スキルの方に意識を向ける。途端、俺は雷に打たれたような衝撃を受けた。


「血抜き……だと?」


 料理スキル取得と同時に流れ込んできた知識の中に血抜きの情報があった。なるほど。だから今までの肉はあんなにクソ不味かったのか。そんな裏技があるならもっと早く言ってくれよな!まったくもうっ!ぷんぷんっ!


 ということでレッツクッキング!と言いたいところなのだが、どうやら血抜きをするにも料理をするにも刃物が必要らしい。さっき覚えた。


 というわけで昨日思いついたマッスルラビットの骨を加工してナイフにしてみようと思う。


 まずは、昨日偶然ゲットしたマッスルラビットの骨を取ってきた。太いのが2本ある。どうしていいかわからないので、とりあえず1本をもう一方の骨にガンガン叩きつけてみた。


【取得条件を満たしました。〈加工〉が取得可能です。SP消費は5です】


 我ながら引いた。今ので取れちゃうんだ。はっはっは。さすが未来のハーレム王である。というか必要SP高すぎじゃない?あの素晴らしき火魔法さんや水魔法さんでも2だったのだぞ?5なんて取れるわけ、あれ?取れちゃうね!なんでだろう。まあいいや。そんなの後で考えればいい。こっちは腹減ってんだ。


【SP5を消費して〈加工〉を取得しました。〈加工Lv1〉を取得しました】


 うぉおおお!なんだこりゃ!ちょっと軽く目眩がするほどの知識が流れ込んできたぞ。さすがSP5も消費するだけのことはある。今なら結構色んなものを作ることが出来そうだ。スキルレベルが上がったらどうなっていくんだろう。すごく楽しみである。というわけで、


「ていっ!ていっ!」


 はい。出来ました!マッスルナイフ1号さんでーす!


「ていやっ!そいっ!おんどりゃー!」


 はい。出来ました!兎肉のステーキさんでーす!


 ふう。何が起きたんだろう。自分でもよく覚えていない。気づいたらナイフを作って、気づいたら目の前に美味そうな兎肉のステーキがある。スキルちゃんあなた、なんて恐ろしい子!絶対にもっと育ててあげるからねっ!


 まあ難しいことはお腹を満たしてからだ。では、いただきます!あ、フォーク作ってないや。んー、後で作ろう。今は素手でいいね!え、行儀悪い?うるせえ!こっちは腹減ってんだ!では改めまして、いただきます!


「美味い!」


 三度目の正直という言葉は今この時のために存在しているんじゃないかと本気で思った。不本意ながら2回も虹を架けた甲斐があったというもんだぜ。そういえば1回食べることなく灰にしたこともあったな。あれば料理ではなく火葬しただけなのでノーカンだ。


 それから俺は大食い大会を開催した。参加者、俺。以上!べ、別に寂しくなんかないんだからねっ!


「ぐ、ぐるじい……」


 食べすぎた。普通に食べすぎた。食べても食べてもマッスルラビットの肉があるもんだからついつい欲張ってしまった。まだまだ余ってるんだけど、こいつらどうしよう。腐らせても勿体ないしな。命は大切にすべしだ。そうだ、干し肉にしよう!


 というわけで、料理スキルで得た情報をもとにマッスルラビットの干し肉を大量に作っておいた。


「これで当分食料には困らないだろう」


 ふむ。さすが俺である。誰もが認めるサバイバル能力を遺憾なく発揮している。そういえばなんかステータスがおかしかった気がする。あとSPもおかしかったな。確認してみる。


「ステータスオープン!」


 名前:ミナギ=ルティンコ

 年齢:16

 種族:人間 Lv10

 HP:20/28

 MP:17/28

 攻撃:21

 防御:21

 敏捷:21

 知能:21

 装備:なし

 スキル:体術Lv2 火魔法Lv1 水魔法Lv1 痛覚耐性Lv2 料理Lv1 加工Lv1


 SP:1


 取得可能スキル

 土魔法



「なるほど。わからんということがわかった」


 俺のステータスに一体何が起きたんだろう。たしか前に確認した時はレベルが1上がる毎にHPとMPが2、その他が1ずつ上がる仕様だったはず。ふむふむ。ここは名探偵ルティンコの出番ですな。


「あれれー?おかしいぞー?レベル10になった途端にいつもより多く数値が上昇してるぞー?」


 なるほどそういうことか。これはレベル10のボーナスと見ていいだろう。とすると、次はレベル20かな?ボーナスか。ボーナスっていい響きだな。もっとよこせやこら。


「あれれー?おかしいぞー?」


 どうした名探偵ルティンコ。まだあるのか?よし、聞こうじゃないか。


「前にステータスを確認してから、まだ1時間くらいしか経ってないのにHPとMPがいつもの2倍回復してるよー?」


 なにぃいいい!名探偵ルティンコ。お主の洞察力はまさに世界一と言っても過言ではないだろう。さすがはハーレム王になる男である。


 今までは10分で1だったのが、これからは5分で1回復するようになったわけだ。おお、ボーナス凄すぎる。ぜひボーナス兄貴と呼ばせてもらおう。


 そんなこんなで、俺は餓死の危機を無事に乗り越え、ハーレムへの道を1歩1歩進んでいくのだった。




 ルティンコ日記

 はじめてりょうりをしました。あとないふもつくりました。おにくおいしかったです。そろそろおんなのこにあいたいです。

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