第7話 様子をみる

ミヤコを人馴れさせようと酒場の控室に連れて行くことにした私は、無理やり人と合わせることはせずミヤコ自身の成長を信じた。そして…


ミヤコ人馴れ作戦12日目

やっと進展が見えた。それは私が厨房で料理を受け取っている時。厨房の奥の出入り口からミヤコがこちらを覗いていたのだ。

しかも制服を着て!


(かわいい…)


かなりの時間がかかったが、ミヤコの大きな一歩が見られた。

それからというものミヤコは毎日のようにそこに立っていた。

それがいつからかお客さんに見られたのだろう。注文を取りに行ったりするときに「あの子だれ」などと聞かれるようになった。

ミヤコは人気のようで、ミヤコを見に来たという人も出てきた。

ミヤコはこちらを見ているだけで鳴いたりはしていないが、もし獣語病を知ってる人が来て連れて行かれたらと考えると悩ましい。

そんなことをは考えてる間もミヤコの成長は進み、15日目ついに厨房に入ってきた。

するとミヤコは持ってきた椅子を台替わりにして流し台の前に立つと皿を洗い始めた。

私は感動して涙をこぼした。

それに気付いたミヤコは皿洗いをとめ私にハンカチを渡した。

なんて優しい子なのだろう。

ミヤコはお客さんに警戒しているのか全然怖くない顔で睨みつけると厨房へ戻っていった。

睨みつけられたお客さんはみんなミヤコの可愛さに撃たれていた。


厨房に戻ったミヤコは再び皿を洗い始める。

そして恐れてたことがおきた。


「ミャ♪ミャ♪」


ミヤコが鳴いてしまったのだ。

私はヤバいと思いすぐにお客さんの様子をみる。


しかし、お客さんに驚いた反応は無かった。それにお客さんから思いもよらない事を言われる。

「初めてミヤコちゃんが鳴いてるところ見たよ」

あたかも最初から知っていたかの反応だ。

「にしても、猫のようにしか喋れない病気なんて可哀想にな」

もしかしてと思いクレアさんにこのことを伝えると「ミヤコちゃんのことはよく聞かれるから」と予想が当たった。

ってことはミヤコが喋れないという話しはかなり広まっていることになる。

クレアさんに口止めするのを忘れていた。

まぁ、バレたらこの街から出るつもりだが、今のところはそういう動きがないから安心していいだろうか。


────

──


仕事が終わりミヤコと一緒に部屋に戻る。

ミヤコはあれからずっと皿洗いをしていた。だいぶ疲れているだろう。

そう思い今日は特別にいつも清潔魔法で済ましているがお風呂に入ることにした。

早速着替えとタオルを持ち、ミヤコを連れ風呂屋へ向かう。


────

──


「ミギャーーー!」


風呂場の脱衣所に着くとミヤコが急に騒ぎ出した。一応人がいると嫌と思って大浴場じゃなくて個室を選んだのだが。

そういえば、猫は水が嫌いだったような。


「ミヤコ大丈夫だよ溺れたりなんてしないから」


私は抵抗するミヤコをしょうがなく抱えて体を洗う。水や泡が目に入るのが怖いのかずっと手で目を覆っている姿がかわいい。浴槽に入っても続けている。脱衣所に戻り服を着るまで覆っていたが何故だろうか。


さっぱりしたミヤコは、どこぞの学生が作ったという乾髪機かんぱつきで髪を乾かしていると寝てしまった。

そのまま起こさないように抱えて宿へ戻った。


ベッドにミヤコを寝かし、頭を撫でる。

自分から成長したミヤコは偉いな…

私はそのまま眠りについた。


────

──


「ミャー!」


しまった!ミヤコより遅く起きてしまった!

私はガバっと寄りかかっていたベッドから顔を上げる。

しかし、ミヤコは部屋の中に居る。前言ったこと分かっていたのか?

とりあえず部屋を出なかったミヤコを頭を撫で(癒やしのため)褒める。

そして、昨日はミヤコが人の前に出れたということである挑戦をしてみる。

私はミヤコを持ち上げると部屋を出て酒場へ向かう。

ちょっと戸惑っていたミヤコだが酒場の扉を開けると安心した。

夜、あんなに盛り上がっていた酒場は海の底みたいに静かだ。

厨房にはクレアさんとその主人『アルフレッド』がいた。アルフレッドさんとは初対面のミヤコは少し警戒している。


「あら、ミヤコちゃん。メアリーさん。おはよう」


「おはようございます」


「ミーヤ!」


ミヤコも元気に手を上げてあいさつをする。


「その子がミヤコちゃんか?」


「そうです。かなりの人見知りで」


アルフレッドさんは物珍しそうにミヤコを見る。


そういえばこの街のここらの地域では獣人族は珍しい。と言っても調和の街シュンフォニアは種族によって住むところが偏っていてそれぞれの居住区があり、獣人、ドワーフ、ヒューマン、リザードマン、ドラゴニアンそしてエルフが共に暮らしている。

調和の街と言っているが、それは街の中心だけであって、それ以外の場所では1つの種族しか見かけない。


アルフレッドさんにずっと見つめられたミヤコはプイっとそっぽを向いた。


「あなた、そんなに見つめるからミヤコちゃんに嫌われたんじゃない?」


「ああ、済まないミヤコちゃん」


そんなつもりのなかったアルフレッドさんはオドオドとしながらミヤコに謝った。


「それより、早くご飯にしましょ」


事前にミヤコを連れてくるを知らせといたので、クレアさんは四人分の朝食をテーブルに出す。


今日はいつものパンと、この街の郷土料理【クレパオ】(肉をほぐれるくらいスパイスと一緒に煮込んだ物)だ。私の好きな料理第3位。他は後々紹介しよう。


「aqras medias」


クレアさんがそう唱えると、ロウソクの火は赤から緑、青そして赤に一瞬で変わった。

見慣れた光景だが、ミヤコは不思議そうにロウソクを見ていた。

一体この子はどこのだれで、何故あそこにいたのだろう。

ミヤコの身元は今仲のいい国の役人に任せている。

私自身も調べたいが、ミヤコの世話で手がいっぱいだ(癒やしもらってるだけ)。


美味しい朝食を食べ終え、部屋に戻った私はミヤコに出かけることを伝える。


「ミャーミャー」


もう、何回も同じやり取りをしているのでミヤコも出かけると分かっているようだ。

私を引き止めることもなく送り出す。なんか寂しい…


🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾

『にゃーにゃにゃみゃ。にゃーみゃーみみみゃー。』(いつもお読みいただきありがとうございます。モチベーション向上のため『いいね♥』や『フォロー』おねがいします)

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