第5話 お金が欲しいです

ミヤコと宿で暮らして2週間が経った。ミヤコも元気を取り戻したようで元気に鳴いている。まぁ、それが原因で只今私はペット禁止の宿で猫を飼っていると疑われている訳だが。


「メアリーさん。困りますよ。毎朝うるさくって」


「だからー…」


「夜は下が酒場だからしょうがねぇけどよ。せめて朝は静かにしてくれよ」


「事情は知らないけどねぇ。うちはペット禁止だから、飼ってるなら他の宿に止まってくれないかい?」


「だから。飼っていませんって」


そんな話をしていると宿主のクレアさんが来た。


「なんだい。朝早くから。揉め事ならうちを通しなさい」


「クレアさん!メアリーさんがどうやら猫を飼っているみたいなんですよ」


「うるさくって、朝気持ちよく起きれねぇんだよ」


それを聞いてクレアさんはすぐに他の住居人(宿に住み込んでる人)達を呼びミヤコの説明をした。


それを聞くとみんなは自分の部屋に戻っていった。


「ごめんね。説明してなくって。でも、ミヤコちゃんにはちゃんと朝は静かにするよう言ってもらえる?」


「はい…」


さすが元騎士団長といったところだろうか。人をまとめ、物事を解決するのが早い。それに、獣語病を知ってる人がここにいなくてよかった。


私も部屋に戻り元気な猫ちゃんに静かにするように説明する。前やった口に人差し指を当ててみる。するとミヤコも真似をする。理解しただろうか、心配だ。


────

──


ミヤコを静かにすることは成功したが、問題はまだまだある。

1つはミヤコの親を探すこと。2つ目は獣語病の治し方。そして3つ目はお金の問題だ。ここ最近ミヤコの介護をしていたせいで資金が底をつきそうだ。いち早くこの問題を解決しないと残りの問題も解決できそうにない。

しょうがない、夜の酒場の手伝いを再開するしかないだろう。ミヤコはここまで回復したから少しは私が部屋にいなくても大丈夫だろう。寂しがり屋なのが気がかりだが。

早速クレアにこのことを伝える。


「あら、ミヤコちゃんはもう大丈夫なの?」


「多少の時間なら」


「なら良かったわ。丁度人手が足りなかったところなの」


なんとか酒場の手伝いはできるようになったが、正直これで足りるだろうか。私はとりあえずやってみることにした。


────

──


そして夜。私はミヤコに少し部屋を出ることを伝える。


「ミャー。ミャミャー」


何かを訴えているが、ここで引き止められては今後の私達が大変だ。


「ゴメンなミヤコ。朝には戻ってるからな」


そう言い私はミヤコをベッドに寝かて、急いで一階の酒場へ向かう。


「メアリーちゃん。早速だけどグレアさんとガイアさんにマタリヤ酒とソヤ茹でをそれぞれ一つずつ持って行ってくれる?」


「はい。わかりました」


酒場は大繁盛のようで席がすべて埋まっている。これは忙しくなりそうだ。


客「久しぶりのメアリーちゃんだぞ!!」


客「よっしゃー!メアリーちゃんクリーテ酒1つお願い!」


何故か客には好かれているが、私はこういう空気は苦手だ。お金の為なら仕方ない。


それからオルネー(月が一番高い位置に登ると鳴く鳥)が鳴くまで沢山のお酒とそのつまみを運んだ。


久しぶりの仕事で疲労困憊になりフラつきながら自分の部屋に戻った。


ガチャ


扉を開けるとそこには天使が寝ていた。


(癒やされるぅぅぅぅ)


ふと気付く。何故床に寝ているのだ。仕事に行く前にベッドに寝かしたはず。

とりあえず風を引いてほしくないのでベッドにそっと戻す。

スヤスヤと寝る姿は仕事の疲れをふっ飛ばしてくれる。


(よし、私頑張るぞ!)


そう心に決め昨日買ってきた寝袋で私も寝た。


────

──


「ミャー」


ミヤコの声で起きた私は重たい瞼を開け寝袋ごと起き上がる。


「ミャー。ミャー!」


「よしよし。元気だねー」


寝起き早々ミヤコから癒やしをもらう。そして、床に何かが置いてあるのに気付く。

ミヤコの隣にお盆に乗った朝食が置いてあった。いつも私が朝食をクレアさんの元へ取りに行くのだが、今日は既にある。


するとミヤコがお盆を私の前へスライドしてきた。


「もしかして、ミヤコが持ってきてくれたの?」


するとミヤコは質問を理解したのか首を縦に振った。


「ありがとう!」ナデナデ


「ミャッミャ」


ミヤコが私のためにわざわざ一階に行き朝食を取りに行ってくれた。なんていい子なんだろう。

ん?でも待てよ。つまりミヤコが一人でこの部屋を出たって事だよな。ただ一階に行くだけだがもしそのときに階段で転んだり悪い人に合ったりしたら危険だ!


「ミヤコ。ありがたいんだけど、これからは一人で外に出たりしないでね、危ないから」


「ミャ!」


元気な返事のように聞こえるが、たぶん理解していないだろう。

仕方ない。これからはミヤコより早く起きるようにしよう。


朝食を食べ終え、今日やることを確認する。

とにかく二人分お金をどうにかしないといけない。最初はミヤコは子供だからあまり食費には困らないだろうと思ったが、育ち盛りなのか思ったよりも食べる。目の前に出したものは全て食べてしまいそうな勢いだ。それで、私の本職【冒険者】を再開しようと思う。しかし、そうするとミヤコを置いていくことになる。どうにかしてミヤコに安心して待ってもらう方法はないものか。

誰かに預けるという方法があるが、ミヤコはどうやら私以外の人には怯えている様子だし、なんたって私が安心して預けれる人が居ない。


そんなことをミヤコを撫でながら思っていると誰かが部屋をノックした。それに気付きミヤコが私の後ろに隠れる。


「メアリーさん、ミヤコちゃん。入っていいかい?」


クレアさんだ。


「いいですよ」


クレアさんはゆっくりと扉を開ける入ってきた。


「失礼するね。今日の酒場の件なんだけどね…」


話の内容は今日は祝日の前の日だから客が多くなりそうで、早めに来てほしいという話だった。


私はクレアさんを見てふと思った。

クレアさんにミヤコを任せられないだろうか。クレアさんならミヤコも多少警戒が弱い(普通なら威嚇する)みたいだし。


「わかりました。それでなんですけど、今日ミヤコも一階に連れて行っていいですか?」


「いいけど、ミヤコちゃんは大丈夫なの?」


「客には合わない場所に居させるので」


「なら大丈夫ね。ミヤコちゃんをしっかり見てるのよ」


「わかりました」


ミヤコにできるだけ人に慣れてもらうために少しずつ人と接触させるために、酒場の裏でまずは人の声に慣れてもらおう。

ミヤコが人に慣れれば私としても行動しやすくなり、お金が稼ぎやすくなる。《スライムも積もれば強敵となる》だ。


日が沈み始め、早速ミヤコを連れ酒場へ向かう。


ガクガク


ミヤコは私の腕の中で震えている。嫌だろうがこれはミヤコのためでもある。

酒場の更衣室に着きミヤコを降ろす。すぐに私にしがみついた。これでは着替えられない。しょうがなく脱げるところだけ脱ごうとすると、ミヤコは部屋の隅に行ってしまった。着替えるのに邪魔だなと思ったのだろう。


私はミヤコを気にしながら着替えを済ませた。


「ミヤコ。しばらくここで待っていられる?」


「ミャー…」


しょんぼりとした声で鳴く。言葉は分からないがこれから置いていかれることは分かってるみたいだ。


そこであるものを取り出す。大きなグルグル飴だ。

するとミヤコはすぐにそれを手に取り目を輝かせていた。


「それを舐めて待ってて」


そう言いミヤコを置いて私は仕事へ向かった。


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『にゃーにゃにゃみゃ。にゃーみゃーみみみゃー。』(いつもお読みいただきありがとうございます。モチベーション向上のため『いいね♥』や『フォロー』おねがいします)

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