第4話 恩を返すと決めた
門を過ぎしばらく進んだところで僕とエルフさんだけ下ろし馬車はどこかへ行ってしまった。
降りた場所は噴水のあるまぁまぁ大きい広場だ。
沢山の人が行き交っている。それにビビってしまう僕。前世では人が嫌いだったが、こんな本能的に嫌うものではなかった。何故だろうか。
そんな怯えている僕の手をしっかり握ってくれるエルフさん。この人にだけは何故か抵抗がない。逆に安心感を覚える。
エルフさんは馬車に手を振ると僕の手を引っ張り広場から伸びている1つの道へと進んだ。
僕は街の人々に怯えてエルフさんにぴったりくっつく。
そうやってしばらく歩いていると、とある建物の前で止まった。
ドアの上に看板がある。なにか書いているようだがわからない。こっちの世界の言葉が書いてあるのだろうか。
というかさっきからエルフさんは何をしているのだろう。5分位このドアの前で止まっている。わかった。もしかしてエルフさん恥ずかしがり屋。
わかるその気持ち初めての店に入るとき何故か戸惑うよね。別に入っちゃえば平気なのに。
それからちょっとするとエルフさんは意を決したのか建物の中へ入った。
ドアを開けるとカラカラーンという音が鳴った。どうやら木製のドアベルがつけてあるようだ。
手を引かれ僕も中へ入ると、そこにはカウンターに立った小太りのおばさんがいた。
ここでも僕の臆病が出てエルフさんの後ろへ隠れる。
「ーーー。ーーーーー。」
おばさんが何かをエルフさんに言っている。何を言っているかさっぱり分からないが何故か親しみよく話していることはわかった。
するとおばさんが僕に気付きエルフさんに何かを聞いていた。おそらく『2名様ですね』とかだろう。
「ーーーーー。ーーーー。」
エルフさんがその問いに答える。『そうよ』なんて、だいたい何を言ってるかわかってきた気がする。
「ーーーー。ーーーー」『二人分の料金で5000円ね』
「ーーーー。ーーーー」『いや、4500円にしてもらえないかしら』
「ーーーー。ーーーーー」『しょうがないわね。まだ、子供のようだし安くするわ』
「ーーー。ーーーーー」『じゃあ、上の階へどうぞ』
エルフさん値切りするとはなかなか。
僕は連れられ2階に上がる。そこには長い廊下と沢山の扉があった。
さてはここアパートだな。ということはさっきの妄想話は間違っていた。どうやら家賃の相談だったようだ。
そんなことを考えているとエルフさんは一番奥の部屋の扉を開けた。
部屋の中はベッドと小さな棚が1つそれ以外なんにも無かった。
一瞬やっぱり宿なのかと思ったが、エルフさんが棚を開けると私物のようなものが沢山入っていた。そこからペンと何やら色々印刷された紙を取り出すと書き始めた。
どうやら作業中らしい。僕は仕方なく部屋の探索をする。
まずはここからの景色。ベッドの上に乗り窓から外を見る。どうやらこの部屋は道側らしく、外を歩く人々がよく見える。
次にエルフさんがずっと背負っていたこの大きなリュックだ。一体何が入っているのだろう。
『ミャミャ』
何に使うか分からないが道具が沢山ぶら下げられている。他にはー
っと中を覗こうとしたときだった。
ズキッッッン!!
突然胸をさされたような痛みが僕を襲った。胸だけでなく頭や耳も、とにかく痛い僕はもがくしか出来なくなっていた。
『ミギャーー!!』
もう何も考えられない。とにかく痛みに耐えることに必死でこの間のことはそれから覚えていない。
────
──
突然痛みが収まり朦朧としていた意識が少し戻った。疲れて全く体が動かない。それに頭がポヤポヤする。
目の前には大きな杖を持った少年が涙目になったエルフさんと話していた。
エルフさんに心配をかけてしまった。というか僕は出会ってから迷惑しかかけていない。この恩を返したい、どうにか今の状況で恩を返す方法は…恩を返す方法…恩を返す…方法…恩を……
知らぬ間に僕は寝てしまっていた。
──────
────
──
朝、胸の痛みで目を覚ます。
『ミャー…』
痛くて声が出る
「ーーー…」
どうやらエルフさんを起こしてしまったようだ。
エルフさんはベッドから起き上がると部屋を出ようとした。
『ミャー…ミャー…』(行かないで…)
僕は無意識にエルフさんを止めてしまう。
「ーーーー。ーーーー」
エルフさんは僕に何かを言うと小走りで部屋の外へ出て行ってしまった。
まぁ、すぐ戻って来るだろう。
遅い。
実際そんなに時間は経っていないが、一人ぼっちの僕は長く感じてしまっていた。
しょうがなく僕はベッドを出て床を這いずる。まだ力は入りにくいようだ。
ドアに届きそうになったときゆっくりとドアが開きエルフさんが入ってきた。
『ミャー!』(遅い!)
「ーーーー。ーーー」
どうやらエルフさんは朝食を取りに行ったらしい。
遅いと言ってしまってすみません。
それからエルフさんに介護される自分を情けなく思いながら朝食を取り、薬のようなものも飲まされた。にしても、なんだあの小麦を水でふやかしたような食べ物は、とてつもなく不味かった。←失礼
ベッドの中でボーっとしていると突然エルフさんが絵を見せてきた。かなり下手な絵だが外を書いていることはわかった。どうやら外に行くらしい。僕は了解したと頷き、エルフさんに手を振った。返ってくるのはあの絵からしてすぐだろう。
────
──
遅い。遅すぎる。眠すぎて1回寝たがもう日が沈みそうだ。
『ミャーーーー!』(遅ーーーーい!)
『ミャミャーーー!』(遅すぎるぞー!)
叫ぶのが意外と体力を削るのに気付きやめたが、本当にエルフさんはどこへ行ってしまったのだろうか。
寂しい。なんやかんやで前世から初めて感じた気持ちだった。
そんな寂しさに押しつぶされそうにしていると、
ガチャ
「ーーーー。ーーーー!!」
エルフさんが帰ってきた!!
「ミャーーーー!」(遅すぎるぞー!!)
私は両手を大きく広げ訴えた。
🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾
『にゃーにゃにゃみゃ。にゃーみゃーみみみゃー。』(いつもお読みいただきありがとうございます。モチベーション向上のため『いいね♥』や『フォロー』おねがいします)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます