第2話 ネコになった

人が嫌い。そう思いながら僕はここまで生きてきた。

嫌いになったキッカケは小学校に入った頃。その時僕は父の仕事の都合で引っ越していた。

慣れない街に慣れない人。引っ越しってきた場所が小さな街のせいで小学校ではもう幼稚園からの集団が出来上がっていた。あまりの積極的じゃなかった僕はその輪に入り込めず、ずっと一人でいた。ある日そのオドオドとした性格のせいでイジメの標的となった。発端が何なのかは分からないがだんだんとイジメがエスカレートしていた。

中学のときにはほとんど学校に行けていなかった。学校に行けばイジメられる。親にも相談出来ずにここまで来てしまった。親は察して先生に相談したそうだが、学校は動いてくれない。そんな日々を過ごしいつしか僕は"人"が嫌いになっていた。

そして今日はなんやかんやで入ることになった高校の入学式の日である。僕は嫌嫌親に連れて行かれ参加していた。もちろんイジメをしてくる人たちもいる。式が終わり教室へと案内された。小さな街だからクラスが2つしかない。残念なことにイジメをしてくる奴と一緒だ。先生の紹介が終わり休憩時間になった。

「今年もよろしくなうじ虫」

イジメっ子が話しかけてくる。僕は無視をした。

「無視すんなよ。よろしくっていってんだろ」

机を蹴られたが僕は無視を続けた。

それからしばらく机に伏せて時間が経つのを待った。

帰りの時間になり校門をでる。

親は仕事があると先に帰っていた。

とぼとぼと帰り道を歩く。途中猫が僕の前を通り過ぎた。その猫は他の猫に近づくとじゃれ合っていた。

(猫になりたいなぁー)

誰もが一度は思うことを僕は考えた。

すると後ろからイジメっ子とその連れが来た。

「ねぇ。これからさぁカラオケ行こーと思ってるんだけど金無くてさぁ」

すると連れが僕のバックを取り中を漁った。

「あったぜ」

「結構持ってんじゃん。んじゃもらってくで」

そう言い母からもらった昼代を奪っていった。

僕は悔しいよりも諦めたが先に出ていて何もできなかった。


帰り道僕は取られなかった交通カードを使ってホームで電車を待っていた。

不意に頭に過る。ここで前へ出れば○ねる。何も考えなくて良くなる。すべてが楽になる。だが、そこであるブレーキがかかる。僕が死んだあと親はどう思うのだろうか。悲しむに決まっている。それにここで○ねばあのイジメっ子に負けたことになる。そう思い僕は黄色い線を踏み込んだところでとまった。


『プーーー』


電車がホームへと入ってくる。

僕は後ろに下がろうとした。しかし体がうまく動かない。そう思った瞬間…トン…後ろから誰かに押された。前によろけながら後ろを見るとそこには誰もいない。代わりにホームの反対側から走って来る同じ年くらいの女の子がいた。


「望里くん!!」


その瞬間から僕の記憶は途絶えた。


────

──


(んっ)

気が付くとポカポカとした野原の上にいるような感覚に包まれていた。

明らかにあれは○んだであろう。そう思い目を開けれることをしばらく気づかなかった。目を開けれることに気付き少しずつ開く。

完全に目が開くとそこには青い空が広がっていた。

(ここが天国か…)

とても奇麗な場所だった。寝ていることに気づいた僕は上半身だけ起き上がりあたりを見渡す。どうやら僕は花畑のど真ん中にいるらしい。森に囲まれた花畑。いかにも天国のようだ。

僕は立ち上がった。そして気付いた。何かいつもと違う。なぜ違和感を覚えるのかしばらく悩んだ。

しばらくあたりを見渡した。そしてあるものを見つける。森の中に地面から大きな水晶が飛び出ていた。私は鈍い感覚の中その水晶へ向かう。

(やっとついた)

水晶は以外にも遠かった。そして僕は水晶に反射した自分を見るとやっと違和感に気付いた。

(なるほど背が小さくなっていたんだ)

水晶には小さなケモミミの少女が映っていた。

僕は不思議そうに耳を触る。感覚がある。どうやら本物のようだ。そして、ある重要なことに気付いた。さっきから肌寒いと思っていたが、服を着ていない。少女の姿で服を着ていない。服を…

『ミャーーー!!』

僕は驚いて意味もないのにダッシュで森を駆け抜けた。

(とにかく着るもの!)

そう思いながら走っていると…

ドスッ

目の前の岩に気付かずぶつかってしまった。と、最初は岩だと思っていたが何か今とは違う。


ゴゴゴゴゴ…


なんと岩が動き始めた。岩は動くとともに変形しヒト型になった。


グォーーー!!


僕はこんなのを何処かで見た気がする。そう、アニメとかで見たゴーレムだ!

突然のことに僕は腰を抜かし立ち上がれなくなっていた。

起きたゴーレムはあたりを見渡す。幸い僕は小さくって見えていないらしい。


ゴゴゴゴゴ…


僕がやっとのおもいで起き上がろうとしていた時だった。なんと、もう一体のゴーレムが僕の後ろで起き上がったのだ。


『ミャーーー!!』


僕は叫び。そのままゴーレムの間を駆け抜ける。思ったよりも早く走れたが、大きなゴーレムにとっては短距離だ。後ろの方で物凄い音がする。


僕は限界まで走りへばった体を休めようと木の幹に腰を掛けた。

『ミャー…』

今更だが、僕はいつから猫みたいしか喋れなくなってるんだ?

しばらく前からだった気がするが、今は疲れてて考えられない。いつの間にか日は沈み辺りが見えにくくなってくる頃だ。


日が沈み、辺りは森の中ということもあって一切光がなかった。そんな中僕は違和感を覚える。なんと全然目が見えるのだ、慣れて見えるようになるとは違く、まるで明かりをつけた部屋のように見える。そしてさらに何故か体を動かしたくて仕方ない。

そんな状況に戸惑っていると、地面が縦に揺れ始めた。ズドンッズドンッという音が近づいてくる。どうやらゴーレムがこちらに来たらしい。

僕は慌ててまた走り出す。


ハァ…ハァ…


体力の限界の僕は走っているのか歩いているのかわからない程にスピードが落ちていた。


ズドンッ!ズドンッ!


どんどん音はおおきくなる。


一瞬後ろを見るとなんと目の前までゴーレムが迫っていた。僕は死にものぐるいで逃げる。その時木々の隙間から満月が見えた。満月と言っても地球とは違い大きい月と小さい月があった。そして満月を見た僕は急に体中が熱くなりさっきまでの疲れたがすっかり消えた。


『に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!』


僕はわけも分からず叫んだ。自分の意思に反し僕はゴーレムの方を向く。そしてそのまま飛びかかった。


『う゛に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛!!』


グォーーー!!


ドゴッ!!


しかしゴーレムなんかに勝てるはずもなく僕は吹き飛ばされ、そのまま気絶してしまった。


────

──


意識が戻ったが朦朧としている。微かに開いた目で様子を確認する。

どうやら僕は木の枝に引っかかっているらしい。地上ではゴーレムと騎士らしき人たちが闘っていた。一頭はもう倒しているようだ。ふと騎士の中にいた一人だけ甲冑が違う高身長の人に目が留まる。視界がぼやけていたが、長く尖った耳が見えた。それだけ確認すると僕はまた気を失った。


────

──


次に目が覚めると目の前にはさっきの騎士がいた。やはり長く耳が尖っている。興味本位でその耳を触るとピクピクっと動いた。


(やっぱりエルフだ!)


僕はいつしか見たアニメを思い出し、この女の人はエルフだとわかった。

寝ているようなので、邪魔にならないように起き上がりあたりを見渡す。

どうやらテントの中のようで僕とエルフさんの二人っきりらしい。テントの中には大きなリュック以外何もなかった。

外に出て様子を見ようとしたがこの人が心配するかもしれないので、起きるまで待つことにした。

ふと耳に違和感を持ち触ると右耳に何かが巻かれていた。触っていた手を下ろすと乾いて固まった血のカスが手についていた。痛みは感じないが、ふわふわと感覚が鈍い感じがする。その感覚は胸にもあった。

不思議には思ったが、あるものに意識を取られ考えるのをやめた。それは、さっきから漂ってくるこの匂いだ。とてつもなく美味しそうな匂い。僕の頭の中は"お腹すいた"でいっぱいだ。

そんな匂いの中我慢して待っていると


「ーーーーーー!ーーーーーーーーー」


外から男性の声がした。何やら呼ばれてそうなので仕方なくエルフさんを起こす。


『ニャー』(起きてー)


やっぱり猫のようにしか鳴けない。が起こさないといけないので体を揺らしながらずっと叫び続ける。


『ニャーニャー』(呼ばれてるよー)


『ニャー』(おねーさん)


『ニャーニャー』(おーきてー)


そうずっと鳴いているとエルフさんが目を開けた。


『ニャーニャニャー』(やっと起きたよー)


エルフさんは横のまま僕に話しかける。


エルフさん「ーーー。ーーーーーーーーーー?」


エルフさんは何かを僕に言っているようだが全く言葉がわからない。


『ニャーー』(おはよう)


とりあえずあいさつしておく。

エルフさんは起き上がり僕の前に座った。


エルフさん「ーーーーーーー。ーーーーー?」


どうやら僕に何か質問しているようだが全くわからない。

ふと、僕はこの言葉が伝わらない状況に不安になる。


『ニャニャー』(どうしよう…)


エルフさん「ーーー。ーーーーーー?」


『ニャーーー!』


僕は不安に襲われ涙目になった。


『ニャー』(僕、これからどうしよう)


すると突然エルフさんが僕のことを抱きしめた。


『ニャオォ』


安心して不意に声が漏れる。それと同時に涙が止まらなくなった。


しばらく抱かれたままでいると、外からまた男の人の声がした。


「ーーーーーー!ーーーーーーーーー」


するとエルフさんに抱えられテントの外に出た。外は森の少し開けた場所のようで、周りを木々に囲まれている。それと騎士らしき人たちが5人居た。

そして、いい匂いの正体!ベーコンと目玉焼きがあった。しばらく何も食べていない僕はお腹が空っぽだ。


『ニャニャオーー』(早く食べさせてーー!)


僕はエルフさんの腕の中でもがいた。さっきからヨダレが止まらない。


「ーーーー、ーーーーーーー」


エルフさんは僕を椅子に座らせると、ベーコンと目玉焼きを取りに行った。

僕はワクワクしてヨダレを垂れ流している。

エルフさんは騎士の人達と少し話すと僕にベーコンと目玉焼きを持ってきてくれた。


『ニャー』(いただきます!)


腹がペコペコの僕はたまらずお行儀が悪いがそのまま道具を使わず食べてしまった。

直ぐに食べ終わってしまった僕はまだ腹がペコペコだ。しょうがなくエルフさんにまだ無いか聞く。


『ニャー…』(申し訳ありませんが、もうちょっとくれませんか?)


するとエルフさんは僕にフォークに乗っけた目玉焼きを何かを言いながら差し出した。


「ーー。ーーー。」


『ニャーーー』(あーーん)


目玉焼きを一口で食べるとエルフさんは何故か後ろを向いてしまった。


(なんかしたかなぁ?)


────

──


お腹がいっぱいで機嫌がいい僕は鼻歌を歌いながら馬車の荷台の後に乗っていた。


『ニャーニャンニャニャーン♪』 


エルフさんと騎士さん達は何やら真剣な話をしている。邪魔しちゃいけないので、僕はできるだけ迷惑をかけないようにしていた。

するとエルフさんが僕の方を向き何やら話しかけてきた。


「ーーーーーーーー」


僕は聞き取れなくてもちゃんと聞こうとエルフさんの方を向く。


「ーーーーーーーー、ーーーーーーー?」


やっぱり何を言っているかわからない。僕は首を傾げた。


「ーーーーーーーー、ーーーーーーーー」


『ニャ?』(なに?)


ダメだ本当にわからない。

するとエルフさんが口の前にバツ印をつくった。どうやら僕に黙ってほしいようだ。鼻歌がうるさかったのか。これはすまないことをした。僕は理解したことを伝えるためエルフさんの真似をして口の前にバツ印を作り、頭を下げ謝った。それから僕は喋らないように過ぎていく景色を眺めた。


しばらくすると、荷台の前のほうがうるさくなった。何事かと僕は後ろを見る。するとそこには大きな壁と大きな門があった。


僕らが乗っている荷台はその門の近くに来ると門番みたいな人に周りを囲われ、手荷物などを調べられた。


その時の門番みたいな人と目があった。門番さんは僕を指差すとエルフさんに何かを聞いていた。

すると騎士の一人が僕に近寄ってきた。不意に僕はその騎士に対して警戒した。なぜ警戒をしたか、それは前世で僕は人間が嫌いになったからだ。エルフさんには何故か警戒をしなかったが、それ以外は本能的に警戒してしまう。

騎士に警戒していると、突然エルフさんが何故か大きな声を出した。

周りの人たちは驚いた顔をする。そしてエルフさんは僕の手を取り、僕を荷台から降ろし何処かへと連れて行く。


連れて行かれた場所は門の中。周りをレンガで囲まれた4人分の椅子とそれに合ったテーブルが置かれた小さな部屋だった。そこに僕とエルフさん、門番さんが入る。

エルフさんの隣りに座った僕はずっと門番さんに警戒をしている。

門番さんは一つの紙を机の上にある入れ物から取り出すと、エルフさんに渡した。


「ーー、ーーーーーーーーー」


「ーーー」


門番さんが何か言うとエルフさんがその紙に何かを書き始めた。文字もどこのか知らない。

エルフさんは書き終わったようで、門番さんに紙を渡す。門番さんはそれをしっかり見ると、エルフさんに何かを言った。


「ーー。ーーーーー」


そして、門番さんに連れられ僕たちは他の部屋へ通された。

不安な僕はずっと落ち着かない。そんな時、エルフさんが僕の頭を撫でてくれた。


(優しい人だなー)


僕は初めて?このような優しい人に出会った気がした。


しばらく待っていると、さっきの門番さんが部屋に入ってきた。


「ーーーーー。ーーーー。ーーーー」


エルフさんは門番さんの話を聞くと何かを了解したようで、首を縦に振り僕の手を握りさっきの門まで戻った。


荷台に再び乗ると、門番さんたちが何かを言いながら敬礼した。


(この世界でも敬礼あるんだ…)


馬車が進み始め門の中へ僕たちは入っていった。


「ーーーー!ーーーーーー!」


門番の人の声にエルフさんが手を降って答えていた。どうやら"じゃあねー""またねー"とか言ってるのだろう。そしてどうやらそれは僕にも言ってるようだ。僕はさっき無駄に警戒してしまったお詫びに元気よく答えた。


『ミャ!』(じゃあねー)


するとエルフさんが慌てた様子で僕の口を塞いだ。


(なんで?)


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『にゃーにゃにゃみゃ。にゃーみゃーみみみゃー。』(いつもお読みいただきありがとうございます。モチベーション向上のため『いいね♥』や『フォロー』おねがいします)

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