第一章 出会い
第1話 ネコ拾った
私の名はメアリー・サロス・スクリオス。
風の国アウラー王国の首都シュンフォニアで冒険者をやっている。
今日は国の騎士達と街の外への足りない騎士の代わりとして偵察に来ていた。最近魔物が増えてきたという報告が国に入り、警戒に当たっていた。
個人事業なのに騎士団の指揮役を何故かやらされているが、いつものことだ。
騎士a「メアリーさん。ここ開けてて警戒しやすいので、ここで野宿しましょう」
偵察は昼から始まったが魔物に合わないままもう日が沈んでいた。
メアリー コクッ
私は頷くとその場に座り込み野宿用の道具を取り出した。
他の騎士達は連れてきた馬車の荷台から食料を取り出していた。
どこかの学園の生徒が発明したという加熱板(かねつばん)を取り出したその時のだった。
グォーーー
私は直ぐに警戒態勢に入る。
グォーー
どうやら魔物は離れたところで何かと闘ってるようだ。
グォーーーーーーー
鳴き声が近くなってきた。
メアリー(やばい、こっちにくる!)
私が剣を抜くと他の騎士も抜く。
左手を上げゴーサインの準備をする。鳴き声の方向は定まっている。あとは目視で魔物の確認をする。
バキッバキバキッ
奥の方で木が次々と倒れる。どうやら魔物はもうすぐでここに来るようだ。
グォーーーーグォーーー
鳴き声と共に魔物の目が見えた。私はすかさず左手を勢いよく下ろしゴーサインをだす。
騎士達「「うぉぉぉぉ!!」」
騎士達は勢いよく魔物へと向かった。魔物はすでに戦闘状態だが、こちらに向かってきてからには仕方ない。
私も騎士たちに続き魔物へと向かう。向かってるうちに目が暗闇に馴れ、魔物の全容がわかった。
森林ゴーレムだ!
どうやら森林ゴーレム同士で闘っているらしい。
私は素早くまわりの木より高いゴーレムに登り、頭の後ろにある魔動石(まどうせき)を一突きした。するとゴーレムは動かなくなりもう片方のゴーレムに殴られ倒れた。
残すは一体だが、私が倒す必要はなさそうだ。
国の騎士達によりゴーレムはすでに動力を失っていた。
ひと仕事を終え剣をしまう。私達はさっき野宿するはずだった場所へ戻ろう…そうしようとした時だった。
バキバキン
上の方から枝の折れる音が鳴った。上を見るとちょうど私のところに白いモフモフが落ちてきていた。すかさずキャッチする。
一瞬のことで魔獣が落ちてきたのかと思ったが、腕の中を見るとそこにはホワイトシルバーの髪が特徴的なネコ耳族の少女がいた。
メアリー(なにこれ…かわいい…)
私はひと目に心を惹かれた。
周りにいた騎士達もその少女を見ると顔がトロンとしていた。
少女は気絶しているようでどこにも力が入っていない。怪我もしていて右耳の先が無い。そして服を着ていない。
メアリー(ん?服を着ていない…服を…服…服を着ていない!!)
私以外は全員男性だ!私は急いで野宿予定地にダッシュした。
野営地にいち早く戻り少女に応急処置と布切れを着せてあげた。にしても可愛過ぎる。どこかの令嬢だろうか?にしてもどうしてあんなところに?色々疑問に思う事はあるが、とりあえずこの子が起きないと何も進まない。私はこの子が起きるまでそばで休むことにした。
────
──
『ニャー』
『ニャーニャー』
どこからか猫の声がする。野営のテントに入ってきたのだろうか。
私は確認するために重たい目を開ける。すると目の前に昨日拾った猫耳少女がいた。どうやら私が寝ている間に起きていたらしい。
『ニャーニャー』
メアリー(ん?)
寝ぼけてるのだろうか。さっきからこの子がニャーニャーと猫みたいに言ってるように聞こえる。
『ニャーニャニャー』
いや、どうやら本当にニャーニャー鳴いているようだ。
メアリー「おはよう。昨日の事は覚えてるかな?」
私は昨日何があったか聞こうとした。
『ニャーー』
応急処置の患部無痛魔法をかけてもらったこの子は今だけは元気になり、どうやら私と仔猫ごっこで遊びたいらしい。だが、いち早くなぜあのようなところに居たかを聞かないといけない。
メアリー「ごめんね、遊んでる場合ではないの。昨日なんで森の中にいたの?」
私は起き上がり少女の前で正座になり聞いた。
『ニャニャー』
メアリー「ごめんね。今だけはちゃんと話してほしいかな?」
『ニャーーー』
すると突然少女が涙目になった。
メアリー(もしかして!)
私の頭にある病の名が過ぎった。
【獣語病】
獣のようにしか鳴けなくなることからこの名がついた。これに罹ると獣のようにしか鳴けなくなる他にだんだんと本当の獣のようになり、最後には人に襲いかかるようになり殺されてしまう。このアウラー王国ではまだ症例が2件しかない奇病だ。
治し方は症例が全然ないため無い。
『ニャー』
メアリー(まだ若いのにこの病気に罹るとはとても可哀想に)
私は少女を優しく包み込んだ。
『ニャオォ』
少女が嬉しそうに鳴く。少女が泣き止むまで抱いていると
騎士b「メアリーさん朝食の用意ができましたよー」
騎士に呼ばれ私はそのまま少女を抱えテントの外へ出る。外では国の騎士たちが朝食を作っていた。どうやら今日は目玉焼きとベーコンらしい。いい匂いが漂ってくる。
『ニャニャオーー』
急に少女が私の腕の中で暴れ始めた。どうやらお腹が空いていたらしい。手を匂いの方へ伸ばしヨダレを垂らしている。
メアリー「待ってろ今取ってくるからな」
そう言い少女をテントの近くに置いてた椅子に座らせるとベーコンと目玉焼きを取りに向かった。
騎士a「メアリーさん猫耳少女の様子はどうですか?」
騎士からの質問に少し戸惑ったが私は素直に伝えることにした。
メアリー「どうやら獣語病みたいだ…」
その一言に騎士達は驚いた反応をする。
騎士a「それは…」
騎士達はみんな下を見る。この病に罹ったっていうことはあの子の命はそう長くないということだからだ。病によって死ぬのではなく、人によって重症化する前に殺されるのだ。
騎士a「と…とりあえず様子を見ましょう。症例は少ないですから、助かる場合もあるはずです。まだ、若いのに可哀想ですから」
メアリー「そうだな…。とりあえずあの子は今お腹が空いてるらしい」
私はベーコンと目玉焼きを2つずつ貰い少女の元へ向かった。一人分のお皿を少女の目の前に置くと少女は手を合わせ『ニャー』と鳴くとそのまま皿に口を近づけ食べ始めた。フォークを渡そうとしたが、目に止めずそのまま道具を使わず食べ進める。
メアリー(ここまで症状が進んでるとは)
こんなに可愛い少女が獣のように食事をしている姿を見て心が痛む。
少女があっという間に食べ終え、私も食べ始める。
『ニャー…』
少女がこちらを見て物欲しそうに鳴く。どうやらベーコンと目玉焼きじゃ足りなかったらしい。うるうるの目にやられ私は目玉焼きを少女にあげることにした。せっかくだからあれをやってみることにしてみる。
メアリー「はい。あ~ん」
『ニャーーー』
少女は大きな口を開けフォークの上に乗った目玉焼きを食べた。
メアリー(かわっっっっっ)
あまりの可愛さに私は気絶しそうだった。
こんなに可愛い子の命を奪うなんてできない。私はそう思うのであった。そしてその思いは近くにいた騎士達も同じだった。
────
──
朝食を終え私達は街へと向かっていた。
『ニャーニャンニャニャーン♪』
少女はご機嫌のようで荷台の後ろで足をぶらぶらさせていた。
メアリー(かわいい…)
騎士a「メアリーさん」
そんな様子を見ていたが邪魔が入った。
騎士a「そんな睨まないでくださいよぉ〜」
どうやら顔に出ていたらしい。
騎士a「この子どうしますか?」
確かに。それはとても重要な難題だ。この子が獣語病だと分かればその場で殺されるかもしれない。
悩んでいるとある騎士から名案が出た。
騎士b「喋らなければ分からないのでは」
確かに、喋らなければ獣語病だと分からない。しかし、問題はそれがいつまで保つかだ。
騎士b「獣語病はそんな有名ではないので街の人達には気付かれないと思いますよ」
とすると、検問を通り過ぎれば安全ということだ。
早速猫耳少女に喋らないように伝えなくては。
メアリー「ちょっといいかな可愛い少女ちゃん」
少女はこちらを向き話を聞こうとしている。
メアリー「これから街に入るんだけど、申し訳ないけど入り口では喋らないようにしてもらえるかな?」
すると少女は首を傾げる。聞こえなかったのかと思いまた同じことを言う。
メアリー「これからね街に入るんだけど、申し訳ないけど入り口では喋らないようにしてほしいんだ」
『ニャ?』
メアリー(ダメだ。伝わっていない)
どうやら少女は私の言葉が理解できていないらしい。もしかしてこれも病気のせい?と思ったが異国から来たという可能性もある。とりあえず言葉が伝わらない。私はどうにか伝えようと口の前に指でバツ印を出した。すると少女は気付いた用で首を縦に下ろした。同じく口にバツ印を出すと何故か少し反省したようにして、それから喋らなくなった。なんか違う意味で伝わったようだが、喋らなくなったなら良しとしよう。
それから数分で私達は門の前に着いた。
門番1「おかえりなさい。メアリーさん。」
門番にいつものようにジェスチャーであいさつをする。
門番2「今日はどうでしたか?」
騎士a「ゴーレム2体殺って来たよ」
いつも通り会話が続く。しかし、今日はいつもとちがう質問が来た。
門番1「おや?そのネコ耳族はどうしたんだ?」
やはり聞かれた。しかし、これは逃れられないことだ。この子はここの住民票がない、だからどっちみち門での手続きが必要だ。
騎士a「森で合ったんですよ。一時的に保護してて」
門番1「そうか。では手続きをしにこちらへ」
と、国の騎士に連れられて行く流れだったが私はそれを止めた。
メアリー「私が行く」
みんながちょっと驚いた顔をしていたが私は少女の手を取りずかずかと手続きへと向かった。別に他の人に頼んでも良かったが、どうやら他の騎士などに警戒している様子だったので私が行くことにした。
門番1「では、ここにメアリーさんの名前とその子の名前を」
メアリー「わかった」
私は手慣れた自分の名前を書いた。そして少女に渡そうと思ったが、そういえばこの子の名前を知らない。てか、聞けもしない。どうしようか悩んだが怪しまれては困るため、あたかも知ってるようにパッと思い浮かんだ名前を書いた。
門番1「よし。ありがとうございます。保証人『メアリー・サロス・スクリオス』さんと仮滞在者の
『ミヤコ』
さんですね」
門番は書類を持っていき、私達は待合室へと連れられた。その間猫耳少女改めてミヤコは落ち着きのない様子だった。
メアリー「ごめんね。もし、本当の名前があればそっちで呼ぶようにするから」
私はミヤコの頭を撫で落ち着かせる。数分待つと待合室に門番が入ってきた。
門番1「メアリーさん。ミヤコさん。許可降りましたよ」
メアリー コクッ
私は少女の手を引き待合室へ出て騎士団と合流した。
門番1「それでは!お疲れ様でした!」
門番に手を振りその場をあとにする。
門番1「ミヤコちゃんもまたね~!」
ミヤコ『ミャ!』
私はすかさずミヤコの口を塞いだ。だが、門番に気付いた様子はなく笑顔でこちらに手を振り続けていた。
メアリー(危なかったー)
まず、第一の壁は乗り越えた。あとは街の人達にこのことをどう伝えるかだ。
🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾
『にゃーにゃにゃみゃ。にゃーみゃーみみみゃー。』(いつもお読みいただきありがとうございます。モチベーション向上のため『いいね♥』や『フォロー』おねがいします)
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