第21話マッドの正体
久しぶりに会ったマッドは、前とは違った冷たく、人間とは違った恐ろしく凍りついてしまいそうな雰囲気を纏っていた。
耳にはイヤカーフはされていない。
「はははは…、人間は勝手だな。都合のいい時だけ、その感情を疎ましく思い、そうでないときは必要とし、返してか…」
愛美は、初めて会ったときの紳士的なイメージが一気に覆され、今目の前にいるマッドは、まるで悪魔のように愛美の瞳に映る。
「あなたは一体何者なの?」
愛美は畏怖しながら尋ねると、マッドは距離を縮め愛美の手をすくい上げた。
そして、マッドは上目遣いで妖艶な瞳で伝える。
「今日はイヤカーフをつけ忘れたので、本当の私と会うのは初めてですね。私の名はマッド、狂気で出来た人間の形をした存在です」
MAD→狂気
愛美は理解しがたい現実に、足の力が抜け床に座り込んだ。マッドも跪き、愛美の頬に触れた。その手は、人の体温より冷たく感じた。
「僕は君の感情全てを奪いたい。普段なら一回で全て奪えるのに、君は難しいね」
マッドの面白がるような目でみる表情に、愛美はだんだん怒りがこみ上げてきた。
「普段はって…、何人もの人の感情をあなたは奪い続けているの?」
「その通り、皆、いらない感情を無くし、楽だけを最後まで残してあげるんだ。楽と狂気は紙一重でね、皆、楽にしてくれた俺を崇め蹂躙する」
マッドは狂気めいた笑みを浮かべた。
「何のために…なんのためにそんな酷いことするの?」
「自分のためだよ、それ以外何があると言うんだ?」
愛美は怒りに身を任せ、マッドの頬を打とうとした。しかし、か細い愛美の手首を最も簡単に掴んだ。
「今度は、怒りの感情でも奪おうか」
愛美はそんなマッドに、少しでも胸が高鳴っていた自分を恥じた。マッドは、ターゲットに近づいて感情を奪い去る悪魔のような存在。
逃げないと、頭で分かっているが、マッドの力に抗えず手首を離してもらえない。
「逃がさないよ」
マッドは懐中時計を愛美の前に垂らすと、愛美の勢いが治り、愛美は意識が朦朧としてきた。
「威勢のいい人は嫌いじゃない。でも、今のあなたは心が隙だらけだ」
マッドは怪しく微笑むと、懐中時計が黒紫色の光を放つ、愛美の表情も段々と光に吸い取られそうになっていた。
「愛美!」
教会の扉が威勢良く開くと瑛太が現れた。
その瞬間、懐中時計の光も止まった。
瑛太が勢いよく現れると、すぐにマッドへ走り寄った。その殺気に気づき、マッドは後ろへ飛びながら下り、力が抜けた愛美を瑛太が支えた。
「愛美、大丈夫か?」
「お、にい、ちゃん…」
愛美は瑛太の腕を掴み、態勢を整えた。
「お前、人間じゃないな?どうしてここへ入ってこれた?結界を張っていたはずなのに」
マッドは警戒の眼差しで瑛太を見た。
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