第22話天界の者たち

瑛太は、マッドを一瞬睨んだ後、愛美に笑みをみせ、手のひらを愛美の目にのせた。


「愛美は見なくて良いよ」


すると、瑛太の手から温かな光が灯り、愛美はその心地よさから目を閉じ、眠っていった。


瑛太は愛美を抱えて椅子に寝かせた。


「さてと、お姫様は眠ってくれたから、本当の姿晒してもいいかな」


そう言って、瑛太は付けていたブレスレットを外すと、光が降り注ぐように、瑛太を包み、背中からは純白の翼が生えてきた。そして、髪は金髪に変わり瞳の色も黄金色に変わっていった。


「天使?」


マッドが呟くと、突然後ろから夏目がアザゼルとしての姿で現れた。


「ミカエルか、大天使の一人だ」


「アザゼル」


マッドも声に振り向き、アザゼルをみると、ミカエルの姿となった瑛太が二人に向き直る。


「久しぶりだな、アザゼル…ってことは…」


「大天使様が人間に化けて再会するなんてな、面白いもんだ」


ミカエルがマッドを見て、なにかを言いかけた時、アザゼルは言葉を遮った。


「お前だって、一度は悪魔として下界に降り立って、ゼウスに制裁を受けたくせに、懲りない奴だな」


「はっ、別に今回は勝手にゼウスが落としただけだろ。お前も同じじゃないか」


「じゃあ、マッドは…」


「大天使様が、失楽園の住人について語ることはないだろ?住む世界が違う。憶測も必要ない」


アザゼルは明らかに、マッドの正体の核心に触れようとすると、話を遮ってくる。仕方なく今はそれより大切な話があるため、ミカエルは話しを本題へ戻すことにした。


「それで、どうしたら愛美の感情が戻る?普通の人間の感情奪って、何に使うつもりだ?」


「そんなこと、大天使様には関係ないだろ。失楽園の仲間内のことよ。マッドは失楽園の大切な逸材になる、そのためとだけ教えてあげましょう」


アザゼルは、翼をはためかせながら、マッドの背後へ行き、後ろからマッドを包み込んだ。


「愛美の感情こそが、マッドを活かすために必要な材料。感情を取り戻したかったら、マッドを抹消させてみることだな」


「それなら、愛美が眠っている間に、させてもらうか」


ミカエルは腰に下げた剣を取り、二人に矛先を向けた。


そして、アザゼルは弓を背中から取り戦闘態勢をとる。マッドはただ、怪しく微笑みながらミカエルを見ているだけだった。


イヤカーフをつけていないマッドはただの狂気だ。二人の戦いすらなんとも感じない。味方であるはずのアザゼルの助けもすることなく、たまにミカエルからの攻撃に微笑みながらかわすだけだった。

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