第10話「エデンの森で」
『エデンの森で』
それがミュージカルの原作の題名だ。
自分の城で他の者にバレぬように、アリアを育ててきたミカエル。
アリアも大人になると、ようやく少しだけ外出が許されるようになり、森へも遊びに行けるようになった。
そんな平凡な毎日だったアリアの目の前に、突如現れたルシファーは、漆黒の翼を持ち、白い肌に目の中は茶色で、漆黒の長髪を風が掬うように靡かせる。
ミカエルとは違う、妖艶で美しい堕天使にアリアも心奪われていた。
ルシファーもまた、あどけない表情で、美しい容姿と歌声を持つアリアに惹かれていった。
そんな二人は、森で愛を育んでいることが、ゼウスの耳に入り、やがて天上界の戦いが始まる。
敵同士となってしまう二人に、ゼウスが下す制裁とは…
この「エデンの森で」の原作が愛美は大好きだった。それが、夏目の脚本により鮮やかさが増し、物語を彩る音楽と歌詞。
この舞台を観劇しに行った愛美は、何度も一人で主人公になりきって歌ったモノだ。
もちろん、一般向けのミュージカルではレベルが高すぎるため、アレンジが施されたこのイベント用の特別仕様が「アリア」なのだ。
原作は天上界の世界観がメインだが、この夏目の内容はアリア目線から紡がれる物語なのだ。
愛美はこの大好きな原作と舞台を何度も観に行ったりしていたおかげで、台詞などだいたいは暗記していた。
だから、台本を破かれようと、愛美は困らない。ただ、そんな行為を受け、哀しく悔しく思うだけだ。
嫌がらせだってやり返さない。
演技で見返してやるんだと、強い意志を持ち稽古に励んだ。
本読みが終わると、次は曲に入っていく。
マッドもまた、歌唱力があり愛美のほうがマッドに押されてしまう。さすがプロだと愛美は感心しながら、負けじと食らいついていった。
「間宮、さすが初めてにしてはいい感じだな。もう少し歌い方を柔らかく」
「はい、わかりました」
軽く振り付けも合わせて確認を鏡で見ていると、マッドが愛美に手を添えた。
「これくらい腕を高くしたほうが美しいですよ」
マッドは微笑み、アドバイスをすると、愛美は顔を赤くしながらも、平然を装い「ありがとうございます」と、もう一度姿の確認をした。
確かに、この角度のほうが綺麗に見えた。
愛美はマッドと先生のアドバイスもしっかり取り入れ、あっという間に二時間の稽古は終わっていった。
「今日はここまで、皆、忘れないように練習するように」
「はい」
こうして一日の授業は終わっていった。
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