第83話 異ナル
「こちらの部屋なんですけど……」
依頼主に通されたのは、妙に薄暗い和室だった。設けられている掃き出し窓のカーテンは開いていたが、ほとんど陽の光が差しておらず、空気がどんよりとして黴臭い。
「それで、声がするというのは?」
「あの仏壇の中からです。開くと、声が聴こえてくるんです。よくも殺したな、よくも殺したな、って。だから、今は扉を閉めているんですけど……」
「ふむ……」
仏壇をしげしげと眺めた後、扉を開いてみた。外扉も、内扉も。
「……あっ、ほ、ほらっ、聴こえるでしょうっ?」
「……ええ」
「よくも殺したな、よくも殺したなって……。あの、これってやっぱり、ご先祖様がお怒りになってるんでしょうか……?」
「うーん……」
「お願いします。私には、どうすればいいのかが分かりません。もう、霊能者さんだけが頼りです。どうか、この声を止める方法を……」
……どうすればいいのか分からないのは、こちらもだ。
確かに、声は聴こえるが、
「おぎゃぁああぁあああぁあああおぎゃぁあああぁぁああぁあああああっ」
この、けたたましい赤ん坊の泣き声が、「よくも殺したな」と聴こえるというのは、一体どういうわけだ……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます