第80話 見ツカル
「私の勝ち」
「私の勝ち」
「私の勝ち」
塩水にまみれたぬいぐるみに向かって、三回言い放った。
これで、ひとりかくれんぼは終わりだ。
「……つまんないの」
別に、何も起こらなかった。ぬいぐるみは風呂場にあったままだったし、変な声がしたとか、変なものを見たとか、そういうこともなかった。
まったく、拍子抜けだ。
「はあ……」
何かが起きるはずだと期待していたのに――と、その時、
「……え?」
左手首が、赤い糸で縫われていることに気が付いた。まるで、ミサンガでもしているかのように。
これは……ぬいぐるみを縫う時に使った糸?
恐る恐る、それに触れると、
——―しゅるる、ごとん
と、縫い目が解け、左手首が落ちた。
「……っ!?」
まるで、人形の手がポロっと取れるかのように、私の左手が、痛みも無く―――、
——―ザララララ……
その傷口からは、血ではなく、米が零れ落ちていた。
これでは、まるで、私が―――、
「みーつけた」
風呂場の戸口の方から、あどけない声がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます