第57話 撒キ散ラス

「みなさんは、〇〇〇〇さんを知っていますか?

 〇〇〇〇さんは、笠をかぶって、黒い着物を着た、人間の姿をしているモノです。

 〇〇〇〇さんの存在を知った人間の元を訪れ、夜中に玄関の扉や窓を、トントンと二回叩きます。

 これを無視していると、扉や窓をこじ開けて、無理矢理入って来てしまいます。〇〇〇〇さんの姿を見ると死んでしまいます。

 回避する為には、〇〇〇〇さん、〇〇〇〇さん、〇〇〇〇さん、と唱えます。そうすると、〇〇〇〇さんは消えてしまいます。

 しかし、〇〇〇〇さんはしつこいです。

 一度追い払っても、度々あなたの前に現れます。

 ずっと、ずっと、ついて回ります。

 だから、無意味なんです。

 みなさんも、大人しく、運命を受け入れましょう」


 これは、廃校となった小学校の放送室に残されていたカセットテープに録音されていた音声である。

 約二十分に渡り、一連のメッセージが繰り返される内容となっているが、その、大人の女性と思しき声には、不気味なほど感情が籠っていない。

 カセットテープのラベルには題名が無く、これが何の為に作られたのか、なぜ小学校の放送室に残されていたのかは、定かではない。

 だが、その小学校が廃校になった理由には、著しい生徒数の減少が、ごく短い期間に起きたからだという一説がある。

 〇〇〇〇の部分を伏せているのは、その点を考慮した結果である。

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