第29話 頼マレル

「ああ、うっ、僕は違います、ちが、違います、違う……」


「お願いですから、お願いですから」


「いや、違う……僕は、ちが、違いますから、だから、違う……」


「お願いですから、お願いですから」


「違う、だから、そんな、そもそもが違うから、ちが、無理ですから……」


「お願いですから、お願いですから」


「無理です、違います、ううっ……ちが、違うから……そもそも、ちが、違う……」




 レコーダーを止める。

 友人から寝言が酷いと言われて、気まぐれに録音してみたが……。

 俺は一体、寝ている最中に、誰と会話をしているのだ?


「お願いですから」


 そう繰り返す声に、まったく聞き覚えは無かった。

 俺はずっと寝言で断り続けているが……。

 もし、承諾してしまったら、どうなるというのだろうか……。

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