第30話 読ミ違エル
「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」
「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」
「こっくりさん、こっくりさん、おいでください……」
「……今日は来ないみたいだね。やめよっか」
「うん……あ、待って、動きそう!」
「え?うわっ!」
十円玉が、不気味なくらい滑らかに動き始める。
「な、何これ、止まんないよっ。なんて言ってるのっ」
「え、えっと……き、よ、う、で、さ、よ、な、ら、き、よ、う、で、さ、よ、な、ら……」
「……今日で、さよなら?」
「だ、誰がですか?」
途端に、十円玉はピタリと動きを止め、ゆっくりと、
「わ……た……し……と……あ……な……た…………ち……」
「……私とあなたたち、今日でさよなら?」
十円玉は、するすると〝はい〟の上に滑ると、それっきり動かなくなってしまった―――。
その日の帰り道、
「あれ、どういう意味だったのかな?」
と、友達が切り出す。
「さあ……。こっくりさんなりの、お別れの言葉だったんじゃない?」
「じゃあ、もうできないのかなあ、こっくりさん」
「かもね……。でも、ちょっと可愛いとこあるんだね。わざわざ挨拶していくなんてさ」
「確かに。成仏するのかな?」
「ハハ、どうなんだろうね」
そんな風に談笑していた時だった。
耳を塞ぎたくなるような轟音と共に、大型トラックが私たちに向かって突っ込んできた。
会えなくなるのは、私たちの方——―。
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